将門怨霊伝説、現代においてそのベースになっているのはどうやら荒俣宏著、「帝都物語」なんだなということがわかってきました。
普通は「ああそうなのか。タタリって怖い」で終わりな人も多いので、その平将門伝説に尾鰭ハヒレつけて流布したまま何十年もイメージを固定されてしまってるなんて、考えたりもしないんですよね。
「帝都物語」を入手いたしました。
電子書籍ならすぐに手に入りますが、文庫本は新装版も絶版になってるんですかね…中古しか売ってない。
昭和62(1987)年発行の初版。
帯にあるように、翌年1988年に、映画が公開されて大ヒットするんですね。
わりと冒頭の部分に「おそろしく長い顔をした軍人は」という描写があって、それは魔人・加藤保憲(かとうやすのり)を指したところなんですが、まだ原作が書き始めくらいの(文庫本では20ページしか進んでない)段階で、まさか嶋田久作さんのことは想定してなかっただろうに…と思うと、この映画の成功の90%はキャスティングで決まっていたのではないか、と思えてきます。
まだ読み始めたばかりなんですけれども、平将門は逆臣・関東に独立国を・神の放った矢で討ち取られた、というような、伝説どおり設定で帝都・東京を破滅に導こうとする魔王あつかいをされております。
ちょっと読んだだけで、陰陽師とか魔術とか、今、多くのスピリチュアルな人らが普通に使ってる言葉の、「初出」を見るような気持ちになって来る。
言ってみればオカルトものが、さらにエンタメとして消化(昇華)されるきっかけを作ったというような、ものすごい情報量が詰まっていることがうかがえるのです。
とてもおもしろそうです。
それが11巻も続くなんて。
あれ?12巻(大東亜編)まであるのか…。いつかどこかで手に入れないとな。
よく考えたら東京を帝都だと呼んでますけどずーっと帝のおわす都は京都だったわけで、明治後半が舞台の帝都物語は、まだ40年ほどしか遷都してから経ってないんですよね。
だけど(これは先に映画で観たけど)、新興国際国家として盛り上がっていく日本の首都の、新たな都市改造計画に、大正12年の関東大震災をからめていくなんて発想がすごいですよね。着想のスケールが大きい。膨大な知識量からしか生まれない、上すべりしていない設定力、というか。
なんだか平将門が、関東に害なす悪の魔王あつかいされてるっぽいことにはちょっと腹立ちますけど、タタリだー!呪いだー!、なんて軽々しく言ってる人らって、たいてい歴史や過去や死者に対する畏敬の念なんて持ってないでしょうから、「その風潮を醸成した元となったかもしれない作品」として、良い資料としても読めるんだなぁ、と感じています。
ちなみにこの角川文庫(1987年)、帯の反対側には「花のあすか組!」のオリジナルアニメの告知が書かれていました。