仁侠ものチャレンジ

昭和残侠伝 唐獅子仁義

昭和残侠伝 唐獅子仁義

昭和のはじめ。

やはり、浅草のキップのいい、歯切れのいいセリフ回しで前回の続編を…という感じだったのでしょうか。

しかもいきなり、花田秀次郎(高倉健)と風間重吉(池部良)の対決から始まるんですから素晴らしい。
このシリーズは、因縁も思いもあるこの二人が、最終的には決死の覚悟で怒りの殴り込みをする…というところが絶対的クライマックスです。

シリーズ名「昭和残侠伝」というのは、昭和に時代は移っても、まだ「侠客としての、仁侠精神というのは残っているもので、そういう侠(おとこ)の姿を見よう」っていう趣旨なんですね。
高倉健はその意味で、いわゆる「甘いマスクの二枚目」ではなかったところからのスター、なのです。
そう思うと、なかなか今のイケメン俳優さんが何人かかっても「令和残侠伝」は成立しにくいとも言えますね。こればっかりはしょうがない。

出所後、名古屋へ。
途中の大北谷というところで、仇である組織からの刺客に絡まれ、それを請け合おうという男(イタチの藤吉。待田京介)と、交渉する場面が出てきます。2人を退治するのに、一人アタマ20円、だと言うんです。

昭和9年ごろ、東京・山手線の「御徒町駅」から「神田駅」までの電車賃が「5銭」なのだそうです。
10銭で1円です。現在、その区間の運賃は136円ですから、実に272倍。

刑務所から出てきた人に、喧嘩をまかせてもらおう、っていうことで、
20 x 272 x 2(人)=10,880円

思ったより微妙な数字だな…でもそれ自体を「乞食なら銭くれてやってもいいけど…みっともねえぞ馬鹿」と叱る花田秀次郎。

ふとした出会いから、おるい(藤純子)の家に転がりこむ花田秀次郎。

因縁が回り回って、あの対決で腕を無くした風間重吉に花田秀次郎退治の依頼がきます。
たまたまその場にいたイタチの藤吉(待田京介)は、おるいの家に花田秀次郎がいるのを知ってるので、樺島一家の代貸しに、情報料をせびるんです。その時に相手は「10円でどうだ」と値踏みします。
さっきの計算だと、2,720円ということに「ケタが違いますよ、200円だ!」と藤吉はつっぱねますが、最初の提示額、いくらなんでも低すぎだろ…。

それにしても風間重吉(池部良)、現代っぽいな。
ツーブロックっぽい髪型してますね…普通の角刈りとはちょっと違うスタイル。

けっきょく、石切場に関する利権をめぐる、林田組と樺島組の抗争に巻き込まれ、というか流血のきっかけになってしまう花田秀次郎(高倉健)。

この回で、花田秀次郎による、仁義を聞くことができます。

さっそくお控えくだすって、ありがとうさんにござんす。
では、手前より発します。
ご当家、貸元さん。ならびに姉御さん。
または、お身内、ご一統さん。
陰ながらの仁義、失礼さんでござんす。

手前、生国は関東と発します。関東は、浅草。
観音のほとりに元、居を構えておりました、
蔵前一家二代目、平手譲吉に従います、若い者です。
姓は花田、名は秀次郎。
渡世、いまだ修行中の、しがない者でござんす。

ゆくすえ万端、お見知り置きの上、
よろしく、おたの、申します。

ヤクザがヤクザ同士としての直接抗争ではなく、地域の市場を担うカタギの企業のバックとして争う、という構図で縄張り争いになる中、穏健で昔カタギな親分と、それを老いぼれと罵る乱暴な新興勢力との暴力沙汰。

やはり「日本の経済成長」が、物語の一番底にあるんですね。
日本が発展していく中で、薄れゆく仁義。
まだ「経済ヤクザ」という言葉もなかった時代、利に敏く金で動くのがスマートさより、泥臭くも義に命を黙って捨てるのが男というもの。

ものすごく自然なセリフ回しで、重厚かつ好好爺な演技を見せる志村喬(林田組組長)は言います。

なぁ、秀次郎さん。
儂ぁこう思うんだが。
渡世の意地ってやつぁ、切った切られたじゃあいつまでたってもキリがない。
意地の張り方は、他にもっとあるんじゃないかなぁ、
そうは思わんかね。

それを聞いて、仇うちとか喧嘩はやめておくか…と、花田秀次郎はドスを、親分に預けます。

 

そしていよいよ、あの助けてくれたおるい(藤純子)と、5年前の対決で腕を切り落とした風間重吉(池部良)が夫婦であることを知ってしまいます。

えらいところで因縁が繋がってしまいました。しかもお互い惚れかかってた女がそういう…。

邂逅して再び語り合う花田秀次郎(高倉健)と風間重吉(池辺良)の二人のシーンがあるんですが、冒頭の対決と言い、兄妹ではなく直接的に女(おるい。藤純子)をめぐる気持ちのやりとりと言い、主役2人の時間が大増量されてます。

林田組の親分(志村喬)の訓戒を受け、カタギの仕事を手伝っていたにもかかわらず、樺島組との喧嘩を先導してしまい、親分に出て行けと言われてしまうんですが、志村と高倉のここのやりとりも絶妙です。セリフは少ないけれど、親分は秀次郎の気持ちを汲んで、彼の再起を手伝おうとする。心の往復が感じられる、素晴らしいシーンです。

このままなにごともなく平和に…とはいくわけないですよね。
けっきょく、林田の親分(志村喬)が暗殺されてしまい、抗争は後戻りができない状態になってしまいます。

花田秀次郎は人格者・林田の、今際の際の言葉を胸に、仇を討ちに。

一方、樺島一家に義理立てして、秀次郎に果し合いを挑む風間重吉。
狭い路地で、二人は鍔迫り合いを始めます。
お互い白鞘なので、厳密には鍔迫り合いではないけれど。

その決闘を止めにきたおるい(藤純子)。
なんとそのおるいが、樺島組の刺客が放った流れ弾に当たって死んでしまいます。

言ってみればこれで、二人の男の恨みの矛先が、一つに定まった。

ここで、テーマソングが流れます。
イントロのギターがフェード・インしてきて、ついに殴り込みに。

流れ流れの旅寝の空で
義理にからんだ白刃の出入り
馬鹿なやつだと笑ってみても
胸に刻んだ面影が
忘れられようか唐獅子牡丹

後ろをついてきた風間重吉。

ここのやりとり、やっぱり今回、二人のボリュームがかなり増えてますね。

風間「ひでじろうさん」
花田「…」
風間「ご一緒させていただきますよ」
花田「どちらへ」
風間「重ねてお願いいたします。」
花田「風間さん。おめえさんもいっぱしのヤクザだ。仮にも一宿一飯の恩義を受けなすったら、その樺島…」
風間「ごもっともです。いつかあんさんに申し上げたように、おるいあってこその風間でした。笑っておくんなさい、おるいのためにも、どうかこのあっしに死花咲かせてやっていただきやす。」
花田「…風間さん。いきましょうか」

親にもらった大事な肌を
墨で汚して白刃の下で
つもり重ねた不孝の数を
なんと詫びようかお袋に
背で泣いてる唐獅子牡丹

白を黒だと言わせることも
しょせん畳じゃ死ねないことも
百も承知のヤクザな稼業
なんで今さら悔いはない
ろくでなしよと夜風が笑う

 

よーし、ついに、ついに!
双肌脱いで表玄関を蹴り破る…!

いやぁ、この時点で、映画の残り時間、5分切ってるんです。
大丈夫!?間に合う!?

べらべらしゃべってるからだぞ!?
とか思いますけど、ここからは怒涛の大・虐・殺。

日本刀一本で、まず飛びかかってきた組員を胴切り1
左を見つつ、かかってきた一人を右肩から袈裟斬りに2
斬撃を受けつつ、右手にいた一人を斬る3
ひるむ組員たちの中へ躍り込み、衝立を倒して一人斬る4
さらに右手から飛び込んできた一人を斬る5
後ろからの声を聞きつけ、障子ごしに縁側の一人を刺す6
切り込んでくる一人を斬る7

樺島組長を見つけ、駆け寄りながら一人を斬る8
後ろから斬りかかろうとする組員を斬る9
障子にもたれたところ、紙ごしにブスリと背中を刺されるも、その相手を障子ごと斬る10

隻腕の手練れ、風間重吉も奮戦する中、影からピストルで打たれてしまいます。

その銃声を聞きつつ、一人を斬る11
庭に降りて風間に駆け寄りつつ、一人を斬る12

風間は助からないと悟り、さらにブチギレて組長を追いかけ回し、庭で一人を斬る13
最後の警護である代貸しを斬る14

ここで背中を見せたスキに、唐獅子牡丹を斬られてしまいます。
最後、瀕死の重傷を負い、追い詰められながらも腹を刺し、樺島組長を豪快に斬る15

風間重吉とイタチの藤吉(待田京介)の助っ人もありましたが、
たった4分半くらいの間に実に15人を地獄送り。
強すぎるだろ秀次郎。

フラフラと出てきたところで「終」の赤文字。
ちゃんと大ボスを屠り、風間は屠られ、終劇です。

毎回だいたい出所して数年でこのクラスの大事件を起こすので、仕方ないけど死刑になっちゃいますよね秀次郎。

ストーリーというか設定として、救われなさすぎてこれでいいのか…っていう気もしないではないんですけど、だからこそ、主人公2人の名前とキャストは固定で、設定だけが毎回違うシリーズ化、という策が効いてくるのかもしれません。

今回は、頼りになる人らが全員死んでしまうので、秀次郎の絶望はかなり大きい。

 

ーシリーズ9作ー

第1作『昭和残侠伝』1965年10月1日公開
第2作『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』1966年1月13日公開
第3作『昭和残侠伝 一匹狼』1966年7月9日公開
第4作『昭和残侠伝 血染めの唐獅子』1967年7月8日公開
第5作『昭和残侠伝 唐獅子仁義』1969年3月6日公開
第6作『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』1969年11月28日公開
第7作『昭和残侠伝 死んで貰います』1970年9月22日公開
第8作『昭和残侠伝 吼えろ唐獅子』1971年10月27日公開
第9作『昭和残侠伝 破れ傘』1972年12月30日公開

 

 

…2020年は、「仁侠ものチャレンジ」に取り組むのでござんす。
Amazonにてゆくすえ万端、お見知り置きの上、よろしく、おたの、申します。







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