見たもの、思うこと。

人の世むなし?何が起こった『応仁の乱』。

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応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

ドラマやゲームなどでは「戦国時代に生まれた」人が注目されますが、これは戦国時代「を」生んだ出来事。戦国、ということは「乱世」なわけで、乱れた世、戦乱の時代になって行くきっかけになった、ということです。

京都では生粋の京都人(洛中に代々住む人ら)は「前の戦争?ああ、応仁の乱どすか」とのたまう、という嘘のような本当の話がありますよね。
教科書ではさらりと流されていたような気がするので、改めて「なんで起こったか」「起こった後どうなったのか」を知ることは、実は日本の歴史の大転換期だったこの時代の、重要なポイントを押さえることに繋がります。

ひょっとするとこの時期を過ぎて、日本人は「ちゃんと現代につながる、歴史を踏まえる感覚を身につけた」と言えるのかもしれない。

「まえがき」にも紹介されていますが、東洋史家の内藤湖南

大体今日の日本を知る為に日本の歴史を研究するには、古代の歴史を研究する必要はほ殆どありませぬ、応仁の乱以後の歴史を知って居ったらそれで沢山です。それ以前のことは外国の歴史と同じ位にしか感ぜられませぬが、応仁の乱以後は我々の真の身体骨肉に直接触れた歴史であって、これを本当に知って居れば、それで日本歴史は十分だと言っていいのであります。

と言っています。

 

これはひょっとして…この回で触れた、

かなりややこしい「あとさき」問題

未来のことを「先」として、前方にあると意識するようになったのは室町期、というのと合致するのではないかと思うのです。

日本人の歴史感覚が、歴史の積み重ねが、じゅうぶんに為されたとやっと認識された時代、と言ってもいいのかもしれない。過去や文化が文字で積み重ねられた結果、このまま行くと未来の方が長いぞ、見えないけれど「前にある」としていいぞ、という感覚を得た、ということなのではないでしょうか。

 

奈良の坊さん、経覚と尋尊。

この二人の日記を中心に、南都の勢力や京都との関係も知ることができて、ひょっとして「平和を祈る存在」である近世以前の日本寺社のイメージが変わってしまうかも知れません。これほど強力な軍事力を興福寺が持っていたなんて、今からでは想像すら難しい…。

この「応仁の乱」で、京都一極集中だった政治力は分散し、地方に移譲される。地方では公家の力より大名(最初はたいめい、と呼んでいたらしい)の武力による支配が強まる。

畠山・六角・一色・土岐など、戦国大名としてはあまり聞かない武将がどんどん出てきます。戦国時代に有名にな武将は、彼らの下の身分(家柄)、だったんですね。実力主義が高じて、下の身分(例えば守護代)が、上の身分に勝つ。

これをして「下克上」と呼ぶわけです。
ただ、これって本当に正しいのか、という疑問も、本書では所々に呈されていました。

戦後の階級闘争史観では「下階級が上の階級を倒す」という理想(?)によって歴史を見ているきらいがある、といいます。それで割と安易に「下克上だな」と理解してしまうけれど、本当は階級の問題ではなくて、単に住民や領土のしがらみによる順当な戦い、と見る方が正しいのかも知れない。

戦国だけ、それまでとは違って「下克上の時代!!!」ととつぜん血気盛んになる感じ、おかしいとは思ってたんですけども。

将軍家の権力争い、それに乗じた周囲の豪族たちの領土争い、または寺社勢力の年貢確保活動。これらが、それぞれの思惑と腹芸とともに複雑に絡み合い、裏切っては和平を結び寝返っては手を握る、ドロドロとしてズルズルと続く戦乱を、長引かせてしまった。

当時の習俗や慣例とともに、いかに土地の豪族たちが自分ら一党の利益で蠢いていたか、よくわかります。それぞれが勝手な思惑と利益誘導に動く、ということはある程度、みんな裕福になってきている、ということでもあるのかも知れませんし、でも全体を観れる視点の人が少な過ぎて、登場人物がほぼ全員失策をし続けて泥沼にハマるという状態。

ただし30万部の大ヒット!とはいえ、これちゃんと、最後まで読んだ人って何万人いるんだろうか…とも思います。
煩に堪えない、なんて言っては著者に失礼かもですが、出てくる登場人物には前述の通り、馴染みがないので、誰が誰か分からなくなる。そのうえ同姓・同じ一族で反目になってたりするから敵味方が異常にややこしい。

だからこそ、当事者ではなく少し離れた、でも当事者意識のあった高僧ら(京都の貴族の子息でもある)による冷静な記述を元に進める、という工夫がされているんですね。

 

得られたものは「時代が動いた」という結果だけだった気がする、応仁の乱。

その時代の都を描いた、と紹介される「洛中洛外図屏風」が理想を描いたまさに「絵空事」であり、実はその時代の京都は荒れ放題で人心も荒(すさ)みきっていたんですね…武力によろうが何だろうが、安定的な政治を、庶民はとにかく望んでいた。でもそこからはまっだまだ、元和偃武(徳川による平和宣言)まで戦乱は続く。

とにかくこの乱で、「何この人、もっとマンガとか、物語の主人公クラスなのにあまりに無名じゃないか??」と思う人が一人、います。

 

畠山義就!!!

 

 

 







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