見たもの、思うこと。

わかっていながらさらに書く「男と男の料理対決」

投稿日:2020年9月17日 更新日:

遊戯王 奈落の落とし穴

 

岸部四郎を追悼 『ガキ使』“落とし穴回”を説明する東スポにモニョッたので訂正してみる
http://iincho.hatenablog.com/entry/2020/09/15/231843

岸部四郎(岸部シロー)さんが亡くなって、いろんな映像や過去のニュースが掘り出されている。
インパクトとしてはもちろん「沙悟浄」だけど、私としては最初に見たのは「色付きの女でいてくれよ」を披露した、復活ザ・タイガースとしてのテレビ出演だった気がする。

全員で歌ってた。
ボーカルのジュリーはわかるけど「1人だけ特に何もしてないやんこの人」と思ったのを覚えている(お兄さんの岸部一徳さんはベースだった)。

沙悟浄にしても、ドラマや映画でいろんな人がその後、同役を演じているが、なぜか関西弁でひょろっと背が高い、というあの飄々とした姿は、他の人には決してなし得ない、「河童の到達点」を未だに輝かせているように感じる。

「神回」と断言されることの多い「ガキの使いやあらへんで」の「第一回 チキチキ 芸能界 男と男の料理対決」。

上の、「いいんちょさんのありゃあブログ」では、東スポに載っていたという「ウソ企画で呼び出された」という部分にモニョる、と記されていた。

ダウンタウンも抱腹絶倒!岸部四郎さん 〝ガキ使〟神回で飛び出した名言
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/2182947/

確かに、正規のルートでは確認すらできない、2002年の企画を映像なしで説明しようとすれば「本気で騙して落とし穴に落としたわけではない」ということを端的に、字数制限の中で伝えるためには「ウソ企画」という言葉を使わざるを得なかったのかな…と推察する。
どうせ、そんなに誰も確認なんかしないだろうし、という。

バトミントン大会が板尾さんの乱入や、浜田さんの五月病発症でなかなか叶わないように(野口五郎さんの活躍で復活。こちらも神回)、料理対決はけっきょく、全く実現不可能な、進行不能状態に陥る。

毎週ダウンタウンのトークがあった時代だ。
こんな「神回」扱いをされたオープニング企画なのに、10分もないのである。
これがすごいところだ。
「早く終わってしまったので未公開トークをお送りします」という説明で終わる。

さらに細かい点に目を向けるなら「『俺を誰や思うてんねん! 元金持ちやぞ!』『もう、カネしかないなあ!』などと名言を連発」、こうした書き方も、ネットニュースに特有なのだが、ちょっとサブい。

と、いいんちょさんは指摘しています。

まさにそう。

まず、1個目の落とし穴に落ちた時。

落とし穴って、ホントに知らなかったら普通の歩幅で「不自然に落ちていく」のが「自然」なんだが、1個目。
岸部氏は「縁に当たるのは避けたい」という気持ちが強すぎて、少し中央をめがけてジャンプしている。
わかるよその気持ち。
あんなものに慣れてる人はいないしね。

「なんやねん!なんで落とし穴があんのよ!?」
「大丈夫て…何をしてんのよいったい」
「無事で良かったけどこれ」
「もう今日ちょっと無理やて」
「何してた人や知ってる?」
「元金持ちやぞ」
「とりあえず今日は無理や俺」

と、ほぼすべての説明をご自身で済ませてしまう。

「料理対決のゲストとしての違和感」を、「なぜか何かの残りとして開いていた、落とし穴に落ちてしまう」という行為で、見ている者を謎に引きずり込む。

我々はこの後、さらに落とし穴に落ちることを知っているが、「もう無理」とこの時点で判断するのは至極、当然のことだ。

ロケバスへ戻る岸部。

ここで、2個目も慎重に落ちていく。

「エグゼクティブプロデューサー誰や」
「実効権のあるプロデューサーや
「そいつとバスで話したい」
「こんなもん無茶苦茶や」
「ひどいわ、ダウンタウン愛してたのに」

そしてバスでとりあえず説得が行われ、ギャラによる交渉も成立。やり直すことに。

バスの降車口に、3個目が。

3個目に落下した時にははっきりと

これは一体誰が掘った落とし穴なのだろう

とテロップが入る。すごいぞ。

そして

「引っ張れ引っ張れ」
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
「とりあえず帰ります」
「ありがとう」
「お疲れ様でした」
「料理対決をこれからするんですか」
「で私が出演するんですか」
「ゲスト?今日のゲストだったの僕」
「今から出していただけるの?あーありがとう」
「でどこでするのそれ」
「あほんとに。いいよ」

と「じょじょに壊れゆく姿」が映し出される。

4回目。

対決の場に向かう途中、

先輩の岸部が二度と穴に落ちぬよう先導する松本。こんなところにも、彼の成長した姿が垣間見える

という、もはや視点がどこにあるか、誰目線なのかわからないメタ・ナレーションが入る。

そしてもう一度、コーナーが仕切り直され、始まる。
「手料理対決ゲスト」として岸部四郎さんの紹介があり(この時に小さく「ありがとう」と言っている)、それぞれがキッチンへ駆け寄る。

岸部側には落とし穴が!!!

これにはさすがの岸部も、びっくり仰天

というナレーションが入り

「すいませんて何回…金しかないなぁ!」
「金持ってこい!」
「機嫌よう帰ったるよ!」

…ここで、終わる。

この後どうなったか、とか、そういうのも完全にスルー。

それらは「名言」なのか?

これらの岸部さんの言葉を「名言」とするのはもう「そういう、ちょっと引っかかる言葉はぜんぶ、名言と呼んでおく」という安易なメソッド、と言えてしまうかもしれない。テレビで、だけでなく「出た〜!名言!!」とさえ言っておけば言われた方も悪い気がしない…みたいな光景を、何度も見たことがある。

なので「名言かどうか」「語り継がれるべき言葉かどうか」は、この企画をちゃんと映像で吟味した後、岸部四郎さんが今後も歴史的に評価される上で「金しかないなぁ!」や「元金持ちやぞ!」がその評価基準に毎度、加えられるかどうかにかかっている、としか言いようがない。

大きなニュースとして岸部さんが取り扱われることがなければ、あの企画コーナーに言及されることもなかっただろう。

それと同時に、訃報に接し、まず最初に「落とし穴」「料理対決」「せめて8倍出してよ」が光のスピードで想起された人も多かったのも事実ではないだろうか。

 

執筆者のゆうちぃさんは、東スポの記事に反応すること自体は「無粋」であることを理解しておられる。

これを書く時点でぼくも「サブい」のである。

と、断っておられるのだ。

確かに。
確かに、反応して正そうとすると、どうもやっぱり説明的になってしまい、「だから面白いんだ!」と言ってしまうとそれ自体がもう面白くない…という悪いスパイラルになってしまう。そういうのを超越してる企画が多かったのが、2000年代初頭のオープニングだし。

「訃報ついで」でなければ言及されることのない「いち番組」の「いち企画」。
「ダウンタウン」「〝ガキ使〟」という名前をタイトルに使えるからこそ書かれた「PV稼ぎの無理やり関連記事」と言っても良いと思う。

無理やり、以下にちょっとだけ、さらに書く。

とにかく改めて思い出してみるに、まず企画段階で「岸部四郎が落とし穴に連続して落ちる様は面白い」と、映像を脳内で描いたのがすごい。
そんなの、ふつー、誰が思いつきますか。
そしてそれを具現化するのがすごい。
しかも10分未満で切ってる。

「落とし穴に落ちる」がいかにハプニングなのかを強調するために、しっかりした企画然とした構えがあり、そこにゲストとして登場するという段取りが作られる。料理対決コーナーのスタート、というゴールが見えているので、そこへ向かう力加減が見ている者にまず、前提として伝わる。
普通のテレビ番組の「当たり前に進行されるべき、向かうべき方向」が前提となっている。

コーナーを成立させようとする全員の気持ちが、「4度も」という回数をこなす(仕切り直す)ことを、許してくれる。
犯人探しや岸部さんの被害などはどうでもよくて、「誰が掘ったのか」という、絶対に答えの出ない問いに一度だけ、本当に思考が持っていかれるのもなんだか悔しい。

神回に違いはないんですけど、「他の人だったら…」と考えると、どうだろう。

候補はいく人か、おられます。
あの時点ではこの人は違うでしょ、という人も含めると…

・藤岡弘、
・楳図かずお
・具志堅用高
・西岡徳馬
・梅宮辰夫

というところだろうか。

気を遣うことが前提の大ベテランであり、その上で落ちたさまが派手でおもしろく、言ってみれば「落ちてもいい」人であり(そうなると藤岡さんはちょっと違うか)、何らかの悲哀があってコメントも深そう…。

やはり「フトコロも深そう」っていうところだったりするのかも知れない。

そう考えるとあの時点で「岸部四郎」という選択は、やはり神がかっているな…と感じる。

そこには「裏スター」としていじられ続けて再ブレイクした、にしきのあきらさんの存在もオーバーラップしてくる気するのだ。

 

確か「笑ってはいけない」のどこかでも、岸部さんの若い頃の写真パネルって出てこなかったっけ??
「ホテルマン(2009年)」か??

あの「なんで笑ってるかわからんけど面白い」タイプの企画ものに対して、「何が面白いのかホントにまったくわからない」っていう人も、いる。
いるんだけど、それはそれで正しい。
良いと思います。

大問題は、たまにアップロードされる動画投稿サイトのコメントにある「これってマジですか?」という人が存在するという事実だ。
子供なのかな。

最近はそれをも取り込んだ「ネタ化したコメント合戦」になってて安心する時も、あるけれど。

 







-見たもの、思うこと。
-, , , , , , , , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

プレデター進捗 その4〜そして約束の地へ〜

だいたい、それもはるか未来設定(2379年)の「エイリアン4」では、目に見えて失敗してるわけだし…。

お笑い短歌道場

お笑い短歌道場がやって来た!!

ちょっと、司会が邪魔で、まさに視界が悪かった、なんて部分もあったかもしれません、お詫びいたします。

『ローマ人の物語』を読み終えて。

今さらながら塩野七生先生にはお疲れ様でしたそしてありがとうございましたと言いたいです。

どうやれば氷室京介は卒業できるのか

なんでそんなに太ってるわけ???

シン・ゴジラ

ポリティカル・フィクションとしてのシン・ゴジラ

緊急の課題として今後の対応を検討する中、国平内閣副総理大臣兼外務大臣が「駆除でよろしいかと」、葉山経済産業大臣が「賛成ですね」と発言し、金井内閣府特命担当大臣(防災担当)と河野総務大臣が「私も駆除に同意します」と言い、「そうだろ!防衛省!」と振られた松本防衛省運用政策統括官が「えー、過去、有害鳥獣駆除を目的とした出動は幾度かありますが海自による東京湾内での火器の使用は前例もなく、なんとも…」と顔を曇らせ、柳原国土交通大臣が「まぁまぁ、ことを荒立てず、穏便に追い出せないのか」と楽観論を出し、菊川環境大臣が「総理。各学会と環境保護団体が、貴重な新生物として捕獲・調査を提言しています。定置網を至急湾内に用意して欲しいそうです」と言い出します。金井内閣府特命担当大臣(防災担当)は「いや、ここは駆除だ。魚雷とか使えばすぐ済むだろ」と水を向けるとそれを受けた花森防衛大臣は「お気持ちはわかりますがここは、火器使用も含め本省に検討の時間をいただきたい」と強めに返します。それに便乗するように関口文部科学大臣が「私からも是非とも捕獲を視野に入れた検討を願います」という発言があります。

徳ちゃんねる

徳ちゃんねる

■TRANSLATE


■書いてる人↓

書いてる人

■書いてる人↑

HALLUCINATION

HALLUCINATION

ATLAS

ATLAS

master of none

master of none

DUPING DELIGHT」

DUPING DELIGHT」

BE LIKE HIM

BE LIKE HIM

■ANNIHILATION(YouTube)↓

★GOLDEN RULES★(24時間稼働中)↓

★GOLDEN RULES★(24時間稼働中)↓


afbロゴ