メルカリShopsはおかしい
30年の昔、個人売買サイト(フリマサイト)はそれなりに玉石混交だと言われていた。
実際、30年ほど前にはかなり怪しげな情報商材ですら平気で売買されており、「騙されたか…」と思っても駅前の水たまりに足を突っ込んでしまった程度の後悔と、誰にも言えない反省をして終わっていたようなところがある。
大企業である運営側は、自社マーケット内での詐欺や違法なもののやり取りを撲滅すべく、様々な策を講じてきた。ネットを取り巻く環境も技術も変わった。
「Yahoo!オークション」もサービス開始当初は、本人確認などなかったが今では割と厳格な、本人としての証明と追跡できる書類の提示を求められる。さまざまな紐付けで、その確証を高めている工夫がある。
メルカリもしかり、だ。
だがそれにしたって、出品・落札・購入する人間ひとりひとりの了見まで管理できるわけではない。
コメント欄になんの挨拶も礼儀もなく「1.5即決どうすか」とだけ書いてくる人間と、商取引などしても碌なことはない。永遠と大久保公園で立ちんぼと交渉でもしてろ。
このご時世だし、刹那的な関係でありネットを介した匿名性のあるやり取りであるが故に、相手を親兄弟・親類友人のような「血の通った人間」だと思わない感覚が芽生えてしまって距離感を取り間違う、というような輩がたくさんいても、不思議ではない。
ただ、「メルカリShops」は違う。
メルカリShopsは個人事業主・法人、ならびに個人でも「ショップ」を持てるとのことで、「所定の審査をおこないます」と書いてある。
ショップアカウントを作成する手順を教えてください
https://support.mercari-shops.com/hc/ja/articles/8374188178713–ショップアカウントを作成する手順を教えてください
ということはメルカリShopsとして出品している人は、メルカリの審査を通過したということだ。「所定の審査」をするのはメルカリ本体そのもの、だ。
もし違法なことがメルカリShopsで堂々と行われているとしたら、そもそも審査がおかしい、ということになりかねない。
例えばこのショップの、この商品。
出品ジャンルを「ファッション→アクセサリー」にせず、「ダイエット・健康」にしているあたりに、「検索で見つける人だけをピンポイントでターゲットにしている」感が現れている。彼らの間では「テクニック」と呼ぶのかも知れないが。
このリング、新品ならば(いや中古であっても)、10倍ですら買えない商品だ。ご覧の通り、信じられない凄まじさで、安価で売られている。
このショップの他の出品物を見ると、同様な価格帯で売られている高級ブランドのアイテムが並んでいる。
「しかも他のサイズがご希望でしたらメッセージよろしくお願いします」
と書いてあるように、アクセサリーだろうが人気の完売スニーカーだろうが、ほぼ全サイズが揃っているのだ。
あり得ない。
すべて偽物である。
だが「ショップ情報」には堂々と
「模造反乱しています!当方全ての商品は正規品を保証致します。」と言い切っている。
言い切っている割には日本語の文章として若干おかしい気もするが、ここまで言い切ってしまえるのは「メルカリの審査を通過している」からだと言えるだろう。
メルカリが、信用を担保しているのだ。
メルカリでは、
赤色文字の「運営者情報を請求する」から進めば、この個人事業主・法人、または個人が登録している情報を閲覧することが出来る。請求を送信すると、情報がメールで送られてくるのだ。
上に挙げたショップの場合、青森県の、ある住所と名前が送られてきた。
実際にこの住所に住んでいる人が、このショップを運営しているかどうかはわからない。
もう一軒、別のショップを見てみる。
「運営者情報を請求する」から情報が送られてきた。
ある大阪の住所が記されており、
ストリートビューに映り込んだ表札は、表示された名字と一致した。
これら、嘘つき偽物販売ショップの共通した特徴は
「商品は並行輸入品であり」、
「サイズ・カラーともにほぼ全てを取り揃え」、
「返品は受け付けない」である。
しかも「商品の背景がバラバラ、または正規店の写真を流用している」。
メルカリがお墨付きを与えている「メルカリShops」なのだから、これらの特徴に気づかず、「何かがおかしい…怪しい…」と感じることができないユーザーが「探してたあのブランドが安い!サイズもある!欲しかったカラーも!」と喜んでしまうのも仕方がないと言える。
住所に示された一軒家や会社に住む人が、本当に運営しているのか?
(紙の)保険証などが勝手使われ、勝手に住所を登録されて詐欺に加担させられているという可能性はないのか?
いくつか「メルカリShops」に登録されている詐欺偽物業者の住所をGoogleストリートビューで見てみたのだが、住居が「どうもそういうことをやっているような人が住んでいる風情ではない…」のだ。いや、これは勝手な偏見かも知れないが。
極め付きはこのショップである。
上記した「うさんくさい特徴」をすべて備えている。
どんなスニーカーでも「ご希望のサイズあればコメントください。」と書いてあり、世界のどこにそんな在庫を抱えているヒュージな業者がいるんだろう…と思わせてくれる。
おそらくスニーカーに詳しい人やプロが見たら卒倒するようなクオリティ、つまり偽物である。
このショップ、先ほどと同じように「運営者情報を請求する」から送られてきた情報を見てみると、
▼ショップ運営者情報
代表者名:佐藤 典文
住所:〒106-6118 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 株式会社メルカリ
電話番号:050-3188-3336
と書いてあった。
この住所はまさに株式会社メルカリの本社所在地であり、この住所で審査を通過しているということなのだろうか?
それとも、株式会社メルカリの現役社員が本社フロアから、偽物スニーカーの発送作業をしているとでも言うのだろうか?
はっきり言ってめちゃくちゃである。
こんなことが、黎明期から30年を経て、個人売買サイトでまかり通っていることの衝撃。
詐欺やりたい放題、逃げ放題である。
そうなると代表者氏名も、本当かどうかなどわかったものではない。
メルカリShops利用規約を見ると当然のように、
第 5 条 ユーザー登録の取消等
1.ユーザー登録の取消・利用停止等
にはメルカリが「全部又は一部へのアクセスの拒否、利用停止等の措置をとることができ」る条件として
(3) 登録した情報が虚偽の情報であると弊社が判断した場合
と書いてある。
が、現状はまったくそうなっていない。
詐欺、やり放題。
メルカリは悪質で不穏な偽ブランド業者が跋扈しているのを、一定のお墨付きを与えた上で放置、または黙認している。
売り上げが上がるからだろう。
偽物だろうが盗品だろうが取引額からの10%が売り上げになる株式会社メルカリからしたら、なんとなく「順次、ちゃんとしていってます」と言いながら出来るだけ長く放置した方が儲かる。
まさか上場企業が社の方針としてそんなことを是とするはずはないが、管理者たる社員たちが「わざと」放置していることはじゅうぶんあり得ることだと思う。
貧乏なユーザーが偽物をつかまされても、一流企業たる株式会社を提訴するなどということは、考えにくいからだ。
「お前らみたいなモンは偽物を安く手に入れて喜んでおけばいい」という高笑いが、六本木ヒルズ森タワー18階から聞こえてきそうだ、と言ったら意地悪すぎるだろうか。
偽ブランドものがこの世に出回るのは「ブランド商品が量産品である」限りイタチごっこだ。なくなるわけがない。高価で高級なブランド品は、差額がすごいので偽物を作るモチベーションがある。
だが今、「高級ブランドの価格設定の方がめちゃくちゃなのだ」などと言っても始まらない。
それはそうなのだが、「偽物撲滅」とは別に、「本社の住所を使って営業できる」という実態は異常だと思う。
改善を願う。
メルカリShopsは異常だ。