鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人 第35回『苦い盃』

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実朝の婚礼が近づく。

その陰で、

時政とりくは

息子を失っていた。

不可解な死の真相を巡り、

駆け引きが始まる。

政範の死

北条ヨシトキ(小栗旬)は、「りく殿が、政範を北条の後継ぎにと必死だった」と言ってましたが、順調にいけば(死ななければ)、北条政範(ほうじょうまさのり・中川翼)が北条の後継者になるのは当然の流れでした。必死にならずとも決まりきった後継者です。

北条ヨシトキは、現時点では「江間ヨシトキ」であって、家長の嫡男である北条政範がいる以上、家督を継ぐ権利がありません。

その北条政範が京都で急死してしまい(享年16)、その死因は謎です。
すでに暗殺をよしとする北条ヨシトキが、家督を継承するために殺した…という骨肉相食む陰謀論も展開は可能ですが、ドラマでは宴会の途中で…平賀朝雅(ひらがともまさ・山中崇)による毒殺…という描写でしたね。

でも考えてみれば「実際は急性アルコール中毒だったんじゃないの?」っていう感じもする。

ドラマ的にはまさに劇的な思惑が渦巻くわけですが、なぜ平賀朝雅が北条政範を殺さねばならないのか、という疑問が出てきますよね。彼にとって、メリットは明確なんでしょうか。
北条政範は、平賀朝雅の立場を脅かす存在ではないですからね。
北条政範がいなくなったとて、北条家の家督が平賀朝雅に…という流れはありませんから、京を仕切る平賀朝雅にとっては、「誰かの依頼でやった」という感じにならざるを得ないです。

「次の、執権に…」と北条ヨシトキが北条時政(ほうじょうときまさ・坂東彌十郎)に釘を刺すシーンが出てきましたが、平賀朝雅は源氏の血筋です。のちに「鎌倉殿に推挙したい」と北条時政(とりく)が言い出すくらい、それができる血族です。
逆に言えば「執権には誰でもなれる」ので、平賀朝雅にとっては旨味も魅力もない。
鎌倉にはまだ勲功ある老将たちがいますし、現時点で16歳の北条政範を殺しても、自分の執権就任には繋がっていかないと思うんですけどね。

ではその黒幕は誰だったのか…。

強引に畠山重保(はたけやましげやす・杉田雷麟)が犯人だ、と平賀朝雅がこじつけるというストーリー展開でしたが、畠山氏が、そんなことをするわけがない。そんなの信じるのはりく(牧の方・宮沢りえ)だけです。そしてそれで充分だったりもする。

どちらにしても暗躍する悪人・平賀朝雅というキャラ設定で、北条vs畠山のコンフリクト避けがたし、という様相になって参りました。伏魔殿たる朝廷で活躍すると、みんなああいう感じになってしまうのでしょうか。

とにかく「畠山憎し」に凝り固まってしまうりく。

北条時政がおかしくなっていくのは、りくのせいです。
政治に口を出し、年齢差ある主人を籠絡し、鎌倉を引っ掻きまわす彼女のせいで、死ななくてもいい人が死んでいく。
「わしだってそんなことはしたくねえ」と時政は廊下の立ち話で言ってましたが、どう考えても証拠不十分ですからね。

北条時政はこの時、執権となって、政治的なトップに立っていました。
とは言え、「北条軍」としての兵力は大きくなく、どこかと戦う時には「鎌倉軍」として他の御家人が持っている兵力を動員しなければならない。独自に動かせる兵力はあまり持ってないんですね。
当然「執権軍」もないわけですから。

謀反者を討つ、となると将軍の名のもとに出兵するという建前が必要になる。
それを止められるのは「13人の合議」および息子・北条ヨシトキだけだったはずですが、比企氏を倒し、権力が集中した上に若い後妻に狂わされてしまった北条時政には、冷静な判断ができなくなっていた。
諌めても無駄な耄碌っぷり。

武蔵国を巡って秩父党たる畠山氏とモメていたのも原因だったと言われたりしますが、無実の罪を着せるにはやはり、根拠が薄弱すぎる気がします。「畠山黒幕説」には平賀朝雅→りくのラインの情報しかなく、それを信じて武の中の武・漢の中の漢である畠山重忠(はたけやましげただ・中川大志)を殺そうなどとは、全く理屈が通りらないメチャクチャな話です。

初代執権として、さらに「遠江守」なので「遠州のドンファン」と化した北条時政は、やりたい放題やっていいんだという、晩節を汚す判断に突進してしまいます。

そして、りく・北条時政サイドと、北条政子(ほうじょうまさこ・小池栄子)・北条ヨシトキサイドはすでに分裂しており、宮沢りえの貫禄で混乱してしまいそうですが、歳上である北条政子は若いりくのことを、かなり苦々しく思っていた可能性があります。

御台所、来る

坊門信清の娘・千世(ちよ・加藤小夏)が鎌倉に現れました。

この2人の、初々しくも儚い関係性は、小説『言の葉は、残りて』(佐藤雫)を読むとイメージが広がります。

ドラマでは俳優はお互い大人ですけれど、実際は「子供どうし」としか言えない11歳〜12歳で、鎌倉殿の正室として京を離れた彼女は、「信子」と呼ばれたりします。

これは「(坊門)信清の子供」という意味で、本名ではないようですね。女性に本名がないわけがなく、単に記録に必ず残す習慣がなかった、ということだと思われます。ちなみに北条政子も、「時政の子」という意味であって、本名ではないようです。

畠山滅亡フラグ

常に潔白であり先祖累代に恥じない生き方を貫く剛の中の剛・畠山重忠に、りくのような浅慮な女のあさましい策謀など通用しないんです。しかし「一手誤れば戦になる」と北条ヨシトキが言ったように、鎌倉幕府成立後、御家人闘争の火種はもう「いつ鎌倉が灰になってもおかしくない」レベルで燻り続けています。

全国の権力がまさか「伊豆小豪族だった北条」に集中するなんて誰も思ってなかったし、北条時政本人も晩年まで想像だにしていなかったでしょう。上総介広常(かずさのすけひろつね・佐藤浩一)だって殺された。梶原景時(かじわらのかげとき・中村獅童)だって殺された。ここへ来るまでにみんな、恨みつらみを抑えてきた部分もある。そして相変わらず「所領を増やしたい、悲願の出世をしたい」という、プリミティブな欲望もある。

基本的に「最大のスッキリする問題解決方法は相手を殺すことだ」という武士の常識があり、それに則り「殺してしまえば後でなんとでもなる」でやってきた実績も積まれてきている。

権力欲に取り憑かれた悪女・りくに押し切られ、畠山討伐が動き出しました。
逆に、この時点で北条ヨシトキが暗殺技術者を動員してりくを暗殺していれば、おそらく畠山滅亡は防げた。
なにやってんだヨシトキ。

牧歌的な田舎のおっさんだった北条時政は、いつしか都の大貴族のような、巨大権力闘争の片翼を担うキングメーカーになってしまった。その手は、比企の乱で守ったはずの孫、源実朝にも及ぶことになっていきます。

占いの立ち位置

「歩き巫女(大竹しのぶ)」というキャラクターが出てきましたね。
なんでも占ってくれる、漂泊の卜占師。

なぜこういうキャラが必要かというと、「ここから起こること(主に不吉なこと)、の理由がよくわからないから」なんですね。怪しげであろうがなんであろうが、「不可思議な神託によって未来を予言された、という事実」で補完しないと、現代に我々からは「なんでこんなことが起こるの?」という納得ができないんです。
謎の老婆は未来がわかったようなことをどんどん言い、源実朝は落涙していました。
「雪の日は出歩くな」と言われてしまいますが、それが現実になってしまうのはここから15年後、です。

源実朝が占いババのところへ行ってた空白の時間、これも源実朝の「浮世離れした感覚」を象徴するような出来事、だったのかもしれません。まだ子供とは言え、「あの人に、生き馬の目を抜くような鎌倉の政治は向いてないのかも…」と、周囲に思わせるにじゅうぶんな小事件。

当時、ちょっとでも変なことがあると高貴な身分の人たちはすぐに占いに頼りました。
家の前で亀が死んでるとか庭で狐が死んでるとか、そういうので「凶でございます」っていう答えが出たりしたらもう、家人の外出禁止とか肉類を食べないとかそういう、現代から見れば荒唐無稽な行動制限に達するような影響が出る。

奈良時代、孝謙天皇(こうけんてんのう。第46代。女帝)が「道鏡を次の皇位に就ける」と言い出し、和気清麻呂(わけのきよまろ)が宇佐八幡宮に聞きに行ったら「あり得ん」という神託を受け、それを聞いた称徳天皇(しょうとくてんのう。第48代。女帝。孝謙と同じ人)はブチ切れ、お前なんかキタナマロじゃ」と、「別部穢麻呂(わけべのきたなまろ)」と改名させて流罪にした、という事件ありました。

占いは行動の根拠にもなり、皆が納得できる重要な記憶となって受け継がれる。
神や仏は人間の願いを叶えてはくれないけれど、叶えてもらえるかもしれない、という希望はずっと持たせてくれ続ける。それが信仰、ですね。

武蔵国で語らう2人

盃を交わす畠山重忠と北条ヨシトキ。
2人は同年代であり、ともに源平合戦を戦った戦友でもあります。

「戦うとなれば容赦はしない」と畠山重忠は言いましたが、上にも書いた通り「北条軍vs畠山軍」という構図にはなりません。

北条氏(執権)はどこかへ攻めようとすると、「鎌倉軍」または「将軍軍」を組織する必要があります。
編成に組み込まれるのは鎌倉殿に仕える、御家人が抱える兵隊です。
他の御家人は、北条氏のためには戦いません。
あくまで鎌倉殿のために戦う。

その中心はやはり、三浦氏ですよね。
鎌倉近郊ですぐに動員できる兵力をじゅうぶんに維持しているのは三浦氏です。

そうなると三浦氏にとっては石橋山合戦の時の、三浦義明(みうらよしあき)を衣笠城で攻め殺したという「黙ってたけど積年の」恨みが頭をもたげ、畠山氏にぶつける格好の機会になってしまいます。
それをずっと抑えてるのは「かっことした武士政権である。勝手は許さない」という源頼朝の権威だったわけですが、すでにそれは崩壊していると言ってもいい。北条時政はそれを利用しようとするでしょう。

北条ヨシトキは、なんとしても畠山討伐を止めるべきだったんじゃないか、と思えてきます。
もし北条ヨシトキが、りくおよび父親を暗殺していれば、畠山を騙し討ちなどする必要はなかった。

滅ぼされることを承知で、畠山重忠が鎌倉殿に謀反を起こすということはなかったんじゃないかと思います。
だけどそれで畠山重忠が生き続けて、北条氏が武蔵国を抑えることがなかったとしたら、執権を一族で独占することは不可能だったかもしれない。争いはいずれどこかの違う時点で火を吹いたでしょう。
そうなると150年続く鎌倉幕府を維持できたかどうか…。

禍福はあざなえる縄のごとし、ですがなんとも、他の鎌倉で起こった殺戮とは少し違って、やりきれないところです。

 

今回の『鎌倉殿の13人紀行』は、ここでした。

畠山重忠公史跡公園

菅谷館跡







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