鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人 第34回『理想の結婚』

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謀反の疑惑とともに

頼家は世を去った。

実朝が鎌倉殿として

政治の表舞台に立つ。

しかし

実験を握っていたのは、

執権 北条時政。

昔の日本人の感情

人を殺したから観音像を持っていられない…なんて言ってたら、北条ヨシトキ(小栗旬)に寺院を建立するなんて土台無理だと思うんですけれど、呵責の念というのは史料上には見えないのでしょうから、そういう人間としての感情を、ドラマで表現してもらうのはなんだか嬉しいですね。

感情は時代と共に、その時代を生きる個々人が自分のど真ん中だけを理解できるものなので、たとえ10年後であっても「あの時代はこうだった」って言われたら「そうかな?」という違和感が残るものです。

「90年代を代表する名曲たち!」という特集を組まれても、「いや、知ってるけど、流行ってた、世間を席巻してた…とまでは言えないんじゃあ…」という異論が心中に渦巻く経験、ありますよね。わかるけど、それは一部のファンが過剰に騒いで、一部のメディアが「社会現象にまで」と持ち上げてただけで、そんな物凄い雰囲気はなかったけどねえ…っていう。バブルを語る時、必ずジュリアナ東京のお立ち台が映像として使われるけど、ほぼすべての良民は「あんなのは元々バカだけが集まる、狂った場所なのだ」って知ってますから。

それが鎌倉時代にまでさかのぼると、ほぼ同時代人の感情や感情を根拠にした行動、をしっかり理解するのなんて不可能だと思えてきます。時代の趨勢というか「こうなったらこうするべき」みたいな常識や空気感なんて全く見えない。当たり前すぎることは、史料には残らないから。絵巻物や役者絵に描かれる当時の人は、もう架空のキャラ化してるから。

だから現代の感情論を挟みながら「人間はそう変わりゃしねえよね」っていう強引な論理で想像していただくしかない。家族を思い、愛する人を慕い、悲しみに泣く。そこは多分、ずっと一緒でしょ?っていう。

 

三代目鎌倉殿

政治の舞台に現れた源実朝(みなもとのさねとも・柿澤勇人)。

彼は北条氏の後ろ盾によって鎌倉殿になったことが、はっきりわかっている人。
源頼朝(みなもとのよりとも・大泉洋)の遺志はもう届かない時代になっているので、周りの御家人は鎌倉殿本人より、その後ろにいる北条氏を見ています。

その意味では、初代・源二位(源頼朝)の正妻であり、同時に北条氏でもある尼御台・北条政子(ほうじょうまさこ・小池栄子・あまみだい)の権力が絶大になってくるのも当然と言えますね。
北条政子にはなんとなく、息子の儚く哀れな将来が、見えているような気がする。

そして北条時政(ほうじょうときまさ・坂東彌十郎)に、富と権力が集中し始めた。
しょうがないとは言え、そうなると足元が危うくなってきます。
気づく人はそれに気づいており、その1人が息子・北条ヨシトキだった。

北条政範(ほうじょうまさのり・中川翼)がいるから、北条の家督は彼が継ぐことになります。
北条ヨシトキはいわば「江間の初代」なので、この時点で北条を継ぐ資格はなかったのではないでしょうか。
そしてそれは別に、なんらおかしなことはない。

総検校職(そうけんぎょうしき)?

畠山重忠(はたけやましげただ・中川大志)は「武蔵国留守所総検校職」という役職を引き継いでおり、在長官人として実際の実務を執り行う権限を持っていました。

この「総検校職」は武蔵国と大隈国(現在の福岡県)にしか設置されなかったそうで、それは保元の乱あたりから続く、属人的な色合いが濃いものだったのかも知れません。いや、そういう呼び方が2箇所にしか残ってないだけかも。

「検校(けんぎょう)」とは何かというと、「盲官」と呼ばれた、盲人の役人のことを指します。
平安時代の仁明天皇(にんみょうてんのう)の皇子・人康親王(さねやすしんのう)は若くして目を患い失明し、彼は琵琶の名手であったため、盲人を集めて琵琶・詩歌などを教えたそうです。
やがて、盲人を束ねる盲官の最高位の名称として「検校」は定着します。

盲官は琵琶などの音曲のほか、按摩や鍼が特殊技術として身につけています。
検校は最高位ですが、その下には勾当(こうとう)・座頭(ざとう)などがあり、有名な「座頭市」はつまり「座頭の市さん」っていうことなんですね。

畠山重忠がこだわる「総検校職」は盲人を管理する仕事ではなく、土地の監督者、みたいなニュアンスだったのでしょう。名前としては「税所検校」「諸司検校」というのもあったそうですから、必ずしも「盲官の最高位」を指さない。

秩父平氏である畠山氏は、本流を河越氏に奪われたという経緯を持っており、武蔵国の中の秩父で潜在的な勢力争いを抱えています。北条氏に近い存在となった畠山重忠は、秩父の権限が盤石のものになると信じていた。「総検校職」だからできる当地の武士団どうしの争いも、収めた経験がある。

その、歴代の確執を経て堅持してきた役職を、先祖代々の土地支配の根拠とも言える役職を、軽〜く「そっちは返上してもらう」と北条時政に言われたんです。

内心、ブチ切れてもしょうがないと思います。
北条時政に対する畠山重忠の思いは、もう一波乱なくてはおさまらない状態にまで緊迫してしまいます。
そしてその仲裁が、華奢で幼い三代目鎌倉殿に、できるわけがない。
この時、彼は12歳です。
「前の鎌倉殿とは真逆だな…」とヨシトキはこぼしました。
熱く激しかった二代目・源頼家と違い、源実朝は虚弱で優しい。和歌に通じ、貴族に近い。

でも逆に、貴種としてトップに座っているだけの存在としては申し分ないんですね。
あとは御家人がやるから、っていう。

この時点で時政は66歳。
当時としては長老の域ですよね。
権力の増大に伴って、独断や専横をもう、誰も止められない。
しかも裏で操るりく(牧の方・宮沢りえ)の言いなり。

 

大きなモメごとの匂い

なぜか京で暗躍し始める源仲章(みなもと の なかあきら・生田斗真)。
悪人の面持ちですね。

そそのかされて、鎌倉殿への興味を異常にそそられる平賀朝雅(ひらがともまさ・山中崇)。
朝廷は権力闘争そのものの場所です。
田舎侍の権力争いなど、政略結婚と権謀術数でどうとでもなる、とか思ってたんじゃないでしょうか。

最終的に、帝の権力が安定すれば、周りで何千人が死のうがどの一族が滅ぼうがどうでもいい。
そういう揺るぎない思考が、何百年も定着しているんですね。

平賀朝雅は、源頼朝が生きていたらもしかしたら「殺しておいた方がいいかな?」って起き抜けに思うであろう血筋の人。それだけに、いずれ大きなモメごとの中心になることは避けられなかったでしょう。

時間稼ぎの恋模様

今後、大きな殺し合いが連続して起こる鎌倉では、ほっこりするとなると「恋愛エピソード」を足していくしかない。恋愛にドラマこそ、現代人がすんなり理解できる、わかりやすさがある。
北条ヨシトキの新しい婚儀に関する、「なんか長くないか?」とすら思えるシーンは、ただでさえわかりにくい史実上の北条ヨシトキの、人間性の厚みを増すためには必要なものなんですよね。
こんな、悩みと人間味を持った人がこの歴史の大海原(大河)を乗り切ったのか…「親子の怒鳴り合い」と共に、「北条の良心」北条泰時(ほうじょうやすとき・坂口健太郎)にその懊悩は、受け継がれていきます。

親に逆らう泰時に、初(福地桃子)が思わず横面をぱちん!と平手打ち。女性が家長たる男性の話に入って手を上げる…ものすごく、現代のホームドラマを見ているようで、冷めてしまいかねないところだったりしますが…。

三浦を焚きつける北条時政

北条時政は、武蔵国奪取に燃えている。
武蔵国に根を張る畠山氏が、だんだん邪魔に思えてきています。
同じく武蔵国を領土にしていた比企氏もやっつけたんだから、そのまま武蔵を手にすることはかんたんなものだ…と、北条時政は思い上がってしまったのでしょうか。

「昔の話です…」と軽やかにいなしましたが、三浦義村(みうらよしむら・山本耕史)の祖父・三浦義明(みうらよしあき・菅田俊)は、石橋山の戦いの流れで衣笠城(現在の横須賀)で討ち死に。その相手が、畠山重忠だったのです。地理的に仕方なかったとも言えますが、畠山重忠はその頃、平氏に味方するしかなかった。対立する河越氏が源頼朝の父・源義朝の味方になって勢力を拡大していた歴史的経緯からも、当時最大権力者だった平家サイドに着くしかなかった。

武の中の武、勇の中の勇である畠山重忠は強すぎるので、役目をしっかりと果たすと勝っちゃう。
本意ではなかったかも知れませんが、三浦義明を討ち取ってしまってたんですね。

鎌倉政権が出来上がってしまって、恨みを晴らす機会をなくした三浦氏。
潜在的な怨恨があるに決まってる、と焚きつける北条時政。
その意図すら見透かして、のらりくらり躱(かわ)す三浦義村。食えぬ男よ。

 

北条氏はどうなる

先ほど北条ヨシトキを「江間氏・初代」と書きましたが、北条政範(享年16)が死んでしまったので、また北条氏の家督を継ぐ位置に、再浮上してるんですね。
同時に、将軍・源実朝の叔父にあたります(北条政子の弟だから)。

・北条時政の横暴が激しくなってきてる
・三代目将軍・源実朝の次を狙いそうな平賀朝雅がいる
・北条政範の時代になったら、ヨシトキは庶流として単なる御家人の1人になってしまう

どうして北条政範が若くして急逝してしまったのは謎ですが、ヨシトキはほんとにほんとにまったく何も、していないんでしょうか…もう、善児(ぜんじ・梶原善)はいないですけどねえ…。

みんながみんな、「理想の結婚」を模索する回でした。

次回は「苦い盃」???

 

今回の『鎌倉殿の13人紀行』は、ここでした。

六角堂(頂法寺)

小野城跡







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