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新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」が異常にしっくりくる理由

投稿日:

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』 [Blu-ray]

DVD届きました。

前編・後編各2枚ずつ。

そう言えばBSプレミアムでも放送されてましたね(まだ録画は見ていない)。
待望の円盤化。

制作発表記者会見などの映像特典を含む、待望の円盤化。

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』DVD&BD発売記念として、ユパ(尾上松也)と王蟲(声・市川中車)の名シーンが公開
https://spice.eplus.jp/articles/280245

 

昼の部
脚本 丹羽圭子/戸部和久
演出 G2

序 幕 青き衣の者、金色の野に立つ
二幕目 悪魔の法の復活
三幕目 白き魔女、血の道を征く

ナウシカ 尾上菊之助
クシャナ 中村七之助
ユパ 尾上松也
ミラルパ 東巳之助
アスベル/口上 尾上右近
ケチャ 中村 米吉
ミト/トルメキアの将軍 市村橘太郎
クロトワ 片岡亀蔵
ジル 河原崎権十郎
城ババ 市村萬次郎
チャルカ 中村錦之助
マニ族僧正 中村又五郎

[声の出演]王蟲 市川中車

夜の部
脚本 丹羽圭子/戸部和久
演出 G2

四幕目 大海嘯
五幕目 浄化の森
六幕目 巨神兵の覚醒
大 詰 シュワの墓所の秘密

ナウシカ 尾上菊之助
クシャナ 中村七之助
ユパ 尾上松也
セルム/墓の主の精 中村歌昇
ミラルパ/ナムリス 坂東巳之助
アスベル/オーマの精 尾上右近
道化 中村種之助
ケチャ 中村米吉
第三皇子/神官 中村吉之丞
上人 嵐橘三郎
クロトワ 片岡亀蔵
チャルカ 中村錦之助
ヴ王 中村歌六

[声の出演]墓の主 中村吉右衛門

 

※昼の部・夜の部 通し上演

 

 

アニメ映画は、原作コミックの2巻をクライマックスにしてありましたよね(王蟲が集まる)。
ナウシカの実写化はおろか、舞台化なんて無理。
実写化なんて、誰がそんなことに挑戦するんだ、いや、逆にそんなことしようとしないでくれ!と長年、ジブリファンは思ってたんじゃないでしょうか。宮崎駿氏も、すべて断っていたそうです。

まさかそれを、歌舞伎でやるなんて。

「歌舞伎」という完成されて伝統もあるフォーマットに、「ナウシカ」を流し込む。

妙な言い方ですけれど、「しょぼい真似事」にはならないんですよね、歌舞伎だと。
「歌舞伎」にしかならない。
だから、芯がしっかり残るというか、もちろん衣装とか台詞回しとかは原作とは違うんだけど、「違うからこそ芯が残る」という現象が起こるんですね。だからこそ、初めて宮崎氏は許可を出したのかも。

それにしても「映画の舞台化」じゃなくて、「原作の舞台化」というのがすごい。
ちゃんと伏線として、「クロトワの思惑」みたいなところも、照明と芝居で表現されてたり。

「ナウシカの原作を読んだことない」と平然とおっしゃる方とは根本的に話が合わないんじゃないかと普段から思ってる私ですが、2巻までを描いた映画ですら、「エコって大事!環境問題って意識高い!」がテーマだと勘違いされたことがずいぶんあったそうです。

ナウシカは、一度世界を、捨てるのです。

16、7歳の女の子が、世界の秘密の断片を拾って、一人で世界を救おうとした。
だけど、捨てようとした。
ただ単に「命って大事よ」へ一直線に向かっていくわけではないところが、ナウシカのすごいところなんですよね。

 

ちゃんと歌舞伎って見たことないんですけど、だんだん「男の人しか出てない」ことが気にならなくなってくるんです、ほんと不思議。だんだん、役者が男か女かはどうでもよくなってくるというか…様式であるとか「歌舞伎を見てる」ということそのものを認めることで、原作とか、現実との違和感は、すべて溶けてしまう感じ。漫画読んでるのと変わらない感覚没入してくる。

そもそも「ナウシカ 」は、滅んだ西洋文明を模した設定の果て…が原作のベースとなっていて、それを「着物と三味線」で再構築するとなると、全部真似しても無理が出ますからね。衣装や習俗は、地形や歴史に沿うものなので、海から吹き上げる風で動く巨大風車によって動力を得ている「風の谷」のような辺境の集落は、日本では現実味が少ない。

歌舞伎で演じられるナウシカには、だんだん「どこでもない現実味」が出てきます。

蟲たちの表現とか、王蟲との対話(香川照之だったのか!)とか…ナウシカのこと知らない人が初見で見て、わかると思えないんですけど、あとで原作を読んだら、その正確さに驚くでしょうね。

セリフは、まさに「日本語」で進行します。
固有名詞(ナウシカとかクシャナとかトルメキアとか)以外は、カタカナ語(英語)がまったく出てこない。

例えば「ピンチ」とか「スタート」とか「グループ」とか、そういう言葉がまったく出てこない。
これが、「歌舞伎化」の醍醐味なのかもしれません。
だからこそ両立しているのかも。

 

ナウシカの世界は、大陸のいろんなところで同時進行する場面がたくさん出てくるんですが舞台だと、違う場所のシーンは、幕をいったん下ろす(暗くする)しかない。DVDだとその「閉まってる時間(や暗転)」は編集されてるでしょうからどれくらいの長さなのかわからないですけど、たぶん、そんなに長くないはずですよね。そしてそういう舞台転換が、唄や音楽で見事に繋がってたりする。

映画に出ててきた、王蟲の子供を救う場面、当然ですけど前半(DVD前編-1)に出てきます。

酸の海。

あの、「青き衣」になるシーンはいわば、第一の大メインクライマックスと言えますよね。
どうやって表現するんだろう…。

おおお、目の色が…!!
王蟲の精…!!

いつくしみ
いつくしむるは

精霊と心通わすナウシカ 。
舞を共に舞うことで、その心象がシンクロする。

おおお、鳥の人…!!!
そして金色の野が…!!

全編にわたり、驚きと、外連(けれん)の妙味。
懐かしさに、新鮮さが混じる驚き。

原作の「地球上の、どこでもないクロニクル」という設定が、歌舞伎の持つ「日本の、どこでもない場所を現出させる構築法」と、意外にも恐ろしく相性が良く、最高の状態での換骨奪胎が起こっている…それが、未見状態からの違和感を速やかに凌駕し、しっくりくる理由なのだと思いました。

ジブリカレンダー(卓上)がついてました。

 

 

私は楽天ブックス(特典付き)で買っていたのでした。

 

 

 

原作も、また買おうかな…と思ってます(何回買うんだこのセット…)。







-買うてもた
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