見たもの、思うこと。

義肢装具士の沖野さん(OSPO)にお話をうかがいました

投稿日:2019年6月1日 更新日:

2019年5月25日(土)、東京の台東区。

「オキノスポーツ」を訪ねました。
ここは、義肢装具を専門に扱う、沖野敦郎さんの会社/製作所。

通称・オスポ。

OSPO オキノスポーツ義肢装具
http://ospo.jp/

すでにたくさんのメディアでも取り上げられ、スポーツに特化した義肢製作の技やその信頼性で、世界的にも注目されています。

アスリートの100%に100%で応えたい。義肢装具士・沖野敦郎 【the innovator】前編
http://hero-x.jp/article/3161/

なぜ私が訪れることになったかというと、クラウドファウンディングのリターンだった、からです。

OTOTAKE PROJECT
乙武洋匡の義足プロジェクトを応援したい!
https://silkhat.yoshimoto.co.jp/users/donate-histories

という企画、なのです。

乙武さんのインスタグラム
ototake_official
https://www.instagram.com/ototake_official/

その進捗なども更新されていますね。

義肢装具士の沖野さんは、大学で機械システム工学を学んでから義肢装具士を目指したという、割と異色のルートでプロ技師になった人。
だから「欲しい部品の設計図を描ける」という強みを持ってらっしゃいます。

そして「スポーツ義肢」に特化したという、日本にはいないジャンルの開拓者でもある。

基本的には町工場的に、一人で作業されているそうです。

沖野さんは義足エンジニアの遠藤謙さんと知り合い、このOTOTAKE PROJECTに参加することになったのだそうです。

Xiborg
http://xiborg.jp/

義肢装具士というのは国家資格なのだそうで、養成学校を出て試験をパスしないとなれない資格です。

公益社団法人 日本義肢装具士協会
https://www.japo.jp/link.html

沖野さんの目標としてはまず、義肢装具士をメジャーに。

全国で5,500人くらいしかいないこの資格を、もっと「なりたい」と思う人が増えるくらいの知名度にしたい、と。

「まずは知ってもらわないと」
「まずは知ること」の大切さ、ですね。

そういう意味もあって、日常用の義肢を扱う会社・技術者が多い中「スポーツに特化した」という方向を選ばれたのですね。

オリンピックのメダリストも、OSPO(オスポ)の製品を利用されているそうです。

 

義肢がなぜ、注目すべきことなのか

これはすでに多く、語られていることだと思うんですけど、例えば昔は、視力が極端に悪い、って、障害者だったはずなんです。

目が見えない、って、日常生活に致命的な影響があったと推察できます。
盲(めしい)と呼ばれたり、フィクションですけど「座頭市」とか、その視力のレベルって当時は検査もろくに無いわけですよね。

その上、治療も向上も見込みがない。
だから「目がすごく悪い」は、「不具」の部類に入れられてしまっていたはずです。

それが、眼鏡の完璧な普及で、それは障害ではなくなった。
誰もが安価で視力を矯正し、日常生活を苦もなく過ごせるようになった。

時代・そして技術の進歩が、「障害を障害で無くした」んです。
この事実って、感動的でありかつ、未来への指針になると思いません?

つまり「今、障害だとして苦労されている人たちも、技術の進歩で、それが障害で無くなる時代が来る!!!」っていうこと、ですよね。

義足をつけることを余儀なくされ苦労している人たちも、メガネをかける感覚で使えて、なんら変わらない生活をする。または目で言う、「コンタクトレンズ装着の自然さ」に迫ることになるかもしれない。

なんだか、ワクワクしてきます。

技師の可能性や技術の進歩、装具士の方々の活躍は「障害が障害でなくなる」という「視力とメガネ」が歩んできた道をさらにハッキリ見せてくれる、人類の未来につながる光の道、なのです。

 

沖野さんは何を作ってるか

沖野さんが製作されていた部分で、今回見せていただいたのは「ソケット」と呼ばれる接合部分。

ここは、切断された残りの足を入れるところで、肉体と密着する部分。

完全にオーダーメイド。

そりゃそうですよね、S・M・Lとかで既製品は作れない。
いったんその人に合わせて作っても、リハビリして筋力が付くとキツくなるし、痩せれば空間ができる。
その微調整をするのも重要なお仕事なんですね。

「体重を目安で言うと、プラスマイナス3kgの範囲内におさめていただきたい」

とおっしゃってました。
アスリートになると、その幅はさらに厳しいものに。

面白いのはスポーツ選手に提供している道具、良い感じなら周りにも勧めてよ、と言ってもなかなか広めてくれない、んだそうです。

難しいところですよね。
確かに、周りに教えたらみんな記録上がっちゃうじゃん、っていう。

それだけ、沖野さんの信頼性高いってことですよね…。

実際にはどうか

これは秘密ですが…っていうオフレコ話もいろいろうかがいましたが、ちょっと着けてみてください、ということで、装着させていただきました。


左ひざを曲げ、「ソケット」部分に差し込んで、ひざから下の義足を体験。

前から見るとこういう感じ。
右にいらっしゃるのが沖野さんです。

後ろからはこう。
足の裏をバンドで固定しています。

 

手すりがないと、前へ進めません。

左でどうしても踏ん張れないので、右足が出ない。
右で支えてるときは、右足で支えて左を浮かし、残りは腕の力で進めないことはないけれど逆は無理。

左の、力がたまるポイントがわからない。
手すりなしでは、数メートル進むのも不可能、だとすぐにわかります。

この義足は、かかと部分をポイントにして突っ張れば、支えにできるような気はする…んです。左足を上げて、前へ振ると、つま先がぷらん、と動いてくれて、かかとで着地するポイントを探す。

いや、まず、自分の膝がどうなってるかが見えないんです。
こりゃ、そーとー訓練がいるぞ…ときっと、誰でも2秒で気づきます。

左足を振り出して、引き戻しながら体重をかける。

元の場所に戻ってしまったら前へ進むことにならないですから、ちょっと前にかかとがつくようにする。いや、難しい…。

そして、体重がかかとより前にかかると、膝の部分は折れ曲がってしまう。

これが、「点字ブロック」程度の段差でも起こるのだそうです。
視覚障害の方々に有効なものが、義足の人には転倒の危険になる。

義足自体は、自分の神経とつながっているわけではないので、その「引っかかってる」という状態が視認できないと気づけないんですね。

そしてこの「重心の位置によって折れ曲がる膝部分」は、階段の昇降にもかなりの訓練を要するとのこと。体重移動やタイミング、そして「足元が見えず、感覚もない」という恐怖との戦いでもある。

人間の膝って、うまくできてるなぁと痛感。そしてありがたみ。

いや、こりゃあ、大変だ…

OTOTAKE PROJECTには常に、理学療法士・エンジニア・デザイナーなど、様々な角度から研究や実験を見つめるプロが関わっています。

パラリンピックを2020年に控え、OTOTAKE PROJECTならびに沖野さんの活躍はこれからますます、注目されることになるでしょう。

テレビ朝日「サンデーLIVE!!」の取材で、東山紀之さんも同様に、私が着けた義足、装着されたそうです(私は東山さんの次ということに)。

 


スポーツ用の義足、これがかっこいい。

広島から6週間、学生さんが修行に来られてました。
彼もいつか、義肢装具士として活躍されることでしょう。

沖野さん、お忙しい中、ありがとうございました。

改めて、OTOTAKE PROJECTの成功、ならびに義肢装具士の発展を、祈念いたします。

※沖野さんはご自身で「義足の話なら24時間でもできる」とおっしゃってました。

 

パラリンピックTOKYO、注目ですよ!

OSPO オキノスポーツ義肢装具
http://ospo.jp/

 

2020年TOKYOへの道 インタビュー Atsuo OKINO
義肢装具士・沖野敦郎「パラスポーツ=ツールスポーツ。ギア視点でも楽しんでもらえたら」
https://paraspoplus.com/sports/4119/

2020年TOKYOへの道 インタビュー Atsuo OKINO Part.2
義肢装具士・沖野敦郎のシゴト。
https://paraspoplus.com/sports/4204/







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