プリン体とは一体何か
アデニン (adenine) やグアニン (guanine) がそう呼ばれる。
細胞の核を構成する核酸塩基。
細胞があるなら、必ずそれはある。
「プリン環」とは炭素(C)と窒素(N)でできた、六員環(六角形)と五員環(五角形)の二つの環で構成される環構造のことを言う。
↑六角形と五角形で構成されている(アデニン)。
この形を示すものを「プリン塩基」と呼ぶ。
同じ核酸塩基でも、シトシン (cytosine) はこういう形
なので「プリン」の名は冠さない。
この「プリン」は「purine」であって、プッチンプリンや焼きプリンなどのプリン(pudding)とはまったく別物だ。
だから「健康のためには我慢よ!」と言ってお菓子のプリンだけを避けて他のものを食べても、意味はない。
ドイツの化学者エミール・フィッシャーは、尿酸の還元により得られるであろうと想定した酸素を含まない化合物を「Purin」と命名し、1898年にはその合成に成功した。ラテン語のpurum(純粋な)とuricum(尿酸)を組み合わせた、彼による造語である。
同じような構造のものを総称して「プリン体」と呼んでいる。
飲料メーカーの説明などを読んでも「プリン体とは?」の説明で「プリン環」が出てくることはまずない。なんとなく「大事だが過剰摂取は避けるべきデス!」というイメージしか提示されない(後述)。
細胞の核に必ず存在するものなので、生き物を食べる以上、避けることは不可能だ。
あとは「多い・少ない」の問題になる。
プリン体を摂り過ぎると…
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では、プリン体の目安摂取量は400㎎/日とされている。
知らず知らずのうちに「食べ続ける時期」が続いてしまう場合もあるだろう。
あとは酒だ。海鮮居酒屋で連夜の宴会、などはけっこうヤバい。
「プリン体ゼロ」を売り文句にしたアルコール飲料がやたら売られているが、酒を日常的に飲んでいると必ず「プリン体過多」になる。
先述した「食品メーカーの説明」というのは、飲料メーカーのものだ(さらに後述)。
プリン体は生命維持活動に必要なものだ。
ないと人間は死ぬ。
だが過剰に取り入れたら、余る。
食品は、基本的には「生物が生きていた組成のまま」食べるわけだが(調理はするが)、その形のままだと人間に作用はしない。当然のことだが、分解され、「人間として使える形になってから吸収される。コラーゲンをそのまま食べてもコラーゲンとして活用されることはない、というのと同じだ。
食べたものは動物だろうが植物だろうが細胞を持っているし、食べた細胞の一部が体内でヌクレオチド(nucleotide)およびヌクレオシド (nucleoside) 、つまりプリン塩基に分解され、吸収される。必要な分だけ、人体は回収していく。
プリン体となった物質は、肝臓で分解されて「尿酸」になる。
尿酸は、新陳代謝をしてればできてしまう「老廃物」的な位置付けだ。
勝手に食べられて勝手に老廃物扱いするのも勝手な話が、なぜそう言われてしまうのかというと「最後に、尿として排出される」からだ。
排出されるべきものが体内に多過ぎると、健康を害すというのよくはわかる。
ゴミ屋敷みたいな部屋に住んでる人がまともなわけがない、というのに似ている。
尿酸は、多過ぎると血液中で結晶を作り始める。
濃過ぎる尿酸が塊を作ってしまい、それが体の関節に引っかかって、そこに留まってしまう。
これが「痛風」の正体だ。
私は、2023年3月の健康診断で血液検査をした。
その結果を病院に聞きに行くことなく、3ヶ月がすぎていた。
封書などでは教えてくれないのでつい面倒になって、時間が経過してしまっていた。
健康診断の結果で特筆すべき注意点があったことは過去に1度もなく、「健康診断を受けた」という事実を得るためだけに健康診断を受けていたのだ。
どうせ、なんら改善するようなところはない。俺は健康だ。
そう思っていた。
「運動不足」という四文字が脳裏を何度もよぎるのを、わざと無視しながら。
思えば2023年5月の初頭、そしてその月末に、私は少し長めの散歩をした時、「どうも痛い部分があるな…」と気にしている。それは日記に書いてある。
散歩をするといつもつい、歩きすぎてしまうので、足を痛めることはよくあった。まぁそれだわな…と思っていた。
なんとなく、近くに立ち寄るついでもあったので2023年6月中頃、病院へ、3ヶ月前の健康診断の結果を聞きに行くことにした。ただ、なんとなくである。
この時には足の違和感など、関連づけて考えもしていない。
足は足。
健康診断の結果などはただの儀式。くらいの感覚。
「尿酸値が高いですね」
と医師に言われ、ああ、そうですか…
「お薬出しときますね、尿酸値を下げる薬」
お薬ですか…
「とりあえず1ヶ月分。」
い、1ヶ月…
とりあえず3ヶ月も前の検査の結果だけど、先生がそう言うんだから飲むか…と半ばしぶしぶ(しかも処方箋の期限4日間のギリギリで)薬を買い、飲むことにした。
「フェブキソスタット」。
非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤、高尿酸血症治療剤。
朝食後に1回。
不規則かつ自由な時間制で生きている私にとって、「朝食後っていつなんだ」という問題は重くのしかかった。
午前1時に起床したらそれは朝だが、朝食を食べるとは限らない。
午後6時に起床した1食目は朝食と呼べるのか。
「絶対朝食」と「相対朝食」の問題は解決しないまま、いっそのこと「一般的に午前に起きて何かを食べる」生活にサイクルを変えればいちいち「これは朝食なのか?」などと考えずに済む、という結論に至った。
だがどちらにしても「絶対朝食」と「相対朝食」が、何を指すのかという問題は色濃く残ったままである。
フェブキソスタットを1日1回、飲み始めた3日め。
散歩しすぎで痛い、軽い捻挫か骨にヒビが(それはそれで良くないけど)…と思っていた部分が、猛烈に痛み出した。
もし骨ならば骨折してるだろうレベルの痛さである。
「風が吹いても痛い」どころではない。
「鼓動の数だけ痛い」のだ。
痛風、確定。
なぜ…?尿酸値を下げる薬を服用してるはずなのに…??
少し検索してみると「痛風の出やすい場所」と書かれたページがたくさんあり、そのすべてで「出やすさ筆頭」として「足の親指の付け根」と書いてあるではないか。
恐る恐る、目を開いて自分の痛い場所を確認すると、やはり「足の親指の付け根」だった(そこが痛いんだから)。
だが厳密には、自分の感覚では親指そのものが痛い気もするし、足の甲が痛い気がするし、「足の親指の付け根」と限定される感じではない。痛風は「関節」を攻めてくるので、痛みの源泉はそこなのだろうが、まだ足を少し引きずってなら歩ける。その証拠にズボンの裾直しに行ったし、次の日にその仕上がりを取りに行ったりもした。なにせフェブキソスタットを飲むために早起きしてるので、開店一番に行けたのだ。
しかし気になる記述を、クリニックのページに見つけた。
「発作が出た(痛くはなり始めた)ら、尿酸値を下げる薬の服用は逆効果です。止めるべき」
と書いてある。
なんでだよ。
尿酸値が高いから痛風になるんじゃないのか。
なんで飲んじゃだめなんだよ…。
と言いながら迎えた、服用12日め。
これはもう、我慢できる状態ではない。
左胸にある心臓が打ち出すハートビートが、なぜか足の親指の付け根だけで感じる。
脈動に合わせて「ズキ!ズキ!ズキ!」と痛むのだ。
これを我慢して何かをやり遂げられる人はいない。
仕事にもならず、気軽なデートもままならない。
テレビジョンすら、見ていられない。
レイディオすら、耳に入ってこない。
日常生活が送れない。
脂汗が出てくるとはこういうことを言うのだろう。
なんとか夜まで過ごし、これは明日、鎮痛剤その他、一度診療に行くべきだろうな…とやっと思い立った。
ちなみに、家にあったタイレノールを飲んでみたが、梨の礫であった。
朝一番に電話をして診察してもらおう、と思って寝床に入るが、とにかく呼吸や睡眠に関係なく心臓は動いてる、ということがありありと、まざまざとズキズキという強烈な痛みで確認できてしまう。
要するにまったく寝られない。
足のやり場などない。
手で少し、足を撫でてやったりすると99%の痛みが94%くらいに和らぐ気がするのだが、そんな姿勢で眠れるわけもなく、結局のところ、痛みと疲れで気絶するように「落ちる」以外に術はなかった。
そして、寝返りか何かの拍子に、足の動きによって得られた激烈な痛みで目が覚める。
これを繰り返して、朝になった。
病院へ行く。
幸いにも、足の中央でペダルを踏めば、車の運転は難なく可能だった。
難なくは嘘だ。
痛さは変わらない。
出来るだけ乗らない方が良いに決まっている。
診察は10秒。
こんなものは“あるある”なのである。
出す薬も決まっている3定番。
「ロキソプロフェン」は炎症を和らげ、痛みを抑える。
「ムコスタ」はロキソプロフェンが荒らすであろう胃粘膜を保護・修復する。
この2つはコンビみたいなもの。
そして、「コルヒチン」。
これは痛風の症状を抑え、発作を予防する。
家族性地中海熱も改善するという。
家族性地中海熱ってなんじゃ。
家族性地中海熱(famirial mediterenean fever。略称FMF)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4448
薬を飲んで数時間。
すっ…と痛みが引き出した。
七転八倒の苦しみから解放された。
ああ、昨日受診しておけば、最悪の夜を超える必要はなかったのに。
後悔と反省。
病院大事。
医療万歳。
もらった薬は1週間ぶん。
個人差はあれど、数ヶ月は様子を見る必要があるだろう。
食事に気をつける。
魚・鳥肉にはプリン体が多い。
牛肉・内臓系も多い。
魚は特に、干物になってるとその量が爆上がりする。
カツオがやたら強いのが気になる。
毎食でも食べたいと願う魚介類と肉類がそれに含まれるのは辛い。
魚卵もアウトだ。
それに引き換え、鶏卵は素晴らしい。
タマゴだけ食って生きて行こうかしら、と決意しかけるくらいに素晴らしい。
私は酒を飲まないので関係ないが、昨今「低プリン体」や「プリン体ゼロ」などと書かれたアルコール飲料が多く販売されているが、アルコールそのものに尿酸値を上げる働きがあるらしい。
飲料メーカーがプリン体についての説明ページで、なんだかゴニョゴニョと奥歯にものが挟まったような表記しかしないのはそういうことなのだ。
じゃあプリンは?
鶏卵が使われている。
しかし糖分も、ア・ラ・モードなどに乗っているフルーツも、分解される過程で尿酸値を上げる。
だからあまり良くない。
あとは、水を飲むのがよろしい。
1日に2リットル。
そう言えば「尿酸は尿で出る」んだから、尿が出やすくしてやるのが一番手っ取り早い。
トイレに行く回数が増えるのは正直、かなり面倒で嫌なのだが仕方がない。
アルカリイオン水を手にいれ、飲みまくることにする。
もう、こんな目に遭うのは嫌だ
とにかく、面倒くさい。
痛くなくてもいいはずの足が痛いなど、しかも自分の食生活と運動不足のみに起因するというところがまったく情けない。
その割に、反省しますというレベルを超えた痛さになってしまうところが悲しい。
そこまで痛くなくてもしっかり反省するから!!と叫びたくなる。
水を飲もう。
私の場合、おそらく偏った食生活というよりは「水飲まなさすぎ・運動しなさすぎ」が主原因だと思われる。そこを変えていくことで、こんな、病気とは言わない(と勝手に思ってる)痛風などという面倒くさく情けない症状と、もう巡り会わないようにしたいと思う。
年齢によって尿酸排出の機能は落ちる(70歳くらいになると逆に蓄積しなくなるらしい)。
20代・30代は「健康だから痛風にならない」わけではないのだ。
ただ「20代・30代だからならない」というだけなのだ。
ちなみに、痛風は基本、男性しかならない。
女性ホルモンの働きで、尿酸は排出されて結晶化しない。
しかも多くは「右足」で発作が出る。
右足の関節に違和感を覚えたら、それは痛風の始まりかも知れない。
「軽い捻挫」とか「知らないうちの打撲」だと思っていると、SLEEPLESS NIGHTがやってくるので今回のこの記事を、どこかで記憶に留めておいていただきたい。