鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人 第40回『罠と罠』

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義時は

事実上の指導者として、

将軍実朝さえ圧倒する。

その決意の固さは、

怯えの裏返しなのか、義時。

誰??

前回、第39回で『穏やかな一日』で唐突にナレーションの長澤まさみさんが登場し話題になりましたが、この冒頭のナレーションで「怯えの裏返しなのか、義時。」と語りかける文が出てきて驚きました。

これは、誰が語りかけているんでしょう。
長澤まさみさん本人だったらそれはそれで面白いですけれど、「実朝」「義時」と呼び捨てにするのは、歴史を知っている我々後世の人間だけです。
でもこれは便宜上、呼び捨てにしているに過ぎません。
そして権力の頂点に立った北条ヨシトキ(小栗旬)の威勢が「怯えの裏返し」だと思っている人も、当時にはいません。

今までの裏と表(暗殺や追放や感情の動き)の全てを知っているのは、ドラマを見ている視聴者か、もうすでに死んでいる人だけです。死んで天界から眺めている人だけ。

視聴者が呼びかけても意味がないので、やはり死者が語りかけているのか。
心情を知っている八重さん(やえ・新垣結衣)や離縁した比奈(ひな・堀田真由)あたりかなとも考えられないことはないですが、「義時」と彼を呼び捨てにできる人と言えば(そして死んでいると言えば)、源頼朝(みなもとのよりとも・大泉洋)か、はたまた兄・北条宗時(ほうじょうむねとき・片岡愛之助)か…、

灸をすえてやろう

鎌倉と、京の関係は順調。
後鳥羽上皇(尾上松也)と源実朝(柿澤勇人)の関係は良好。

そういう時期です。
後鳥羽上皇は言うことを聞きそうな従順な将軍を通して、都から遠隔で幕府を操ろうとしていたフシがある。

それを邪魔する(ように見える)のが北条ヨシトキ。
畠山重忠(はたけやましげただ・中川大志)を殺し、父・北条時政(ほうじょうときまさ・坂東彌十郎)を追放してしまったら、もう彼の邪魔をする人間はいなくなった…という時に発覚した、「泉親衡(いずみちかひら)の乱」。

権力が執権職に集中している状態で、武士の棟梁である将軍を倒す理由のない多くの武士たちは、「あいつがいるから将軍が間違うのだ!」と、北条ヨシトキ憎し、の方向づけをされると容易に乗ってしまう性質を持っているようです。

ここ、古来からなんとなく日本の不思議なところ。
いくら政治が間違おうがヘタ打とうが飢饉で大量に人が死のうが「天皇が悪い」とはならず、「奸佞邪智(かんねいじゃち)な側近が悪いのだ!」と矛先が定まる。「将軍に徳がないからだ!」とはならず、「佞臣(ねいしん)を討つのだ!」となる。

「調べても何も出てこない」
「まるで霞のように消えた」
「いささかにおい、西からの雅なニオイ」

と大江広元(おおえのひろもと・栗原英雄)が喝破したあの泉親衡のシルエット…そして突然消えた男…源仲章(みなもとのなかあきら・生田斗真)だったぞ…。
後鳥羽上皇の陰謀だとしたら、鎌倉で「御家人を焚きつけて揺さぶる」作戦は「しっかり確認さえすれば防げた」んだと思います。

源仲章はすでに鎌倉で源実朝の教育係に就任してますから、面は割れてる。謎多き泉親衡を演じるには不適格です。それでもドラマとしては「京の陰謀」を体現できるのは彼しかいない、というチョイスだったのですね。
さすが、二重スパイと言われているだけはある。

泉親衡は「自分も源氏だ」と名乗っていたそうで、詳細はまったく不明。
鎌倉で騒動になった後、どこかへ行方をくらまして逃げ切ってしまいました。
けっきょく正体がわからないので陰謀説につなげることも簡単ですし、「しっかり確認さえすれば防げた」のに北条ヨシトキは、わざとそうしなかった。

不穏がすでにベースにあった

問題は「そんな怪しげな話に乗じてでも謀反を起こす機運があった」ということでしょうね。
和田一族が関わっているとされた謀反計画、これは突然起こったことではないはずです。

8年の間、北条ヨシトキの政治に対する不満や鬱憤がどんな状態で蓄積しているかは、史実には現れてきませんが、ズルい言い方をすれば「和田一族が立ちあがろうかと思うくらいに悪い状態」だったということです。賛同者が多すぎる。

未曾有の市街戦「和田合戦」につながってしまう、北条ヨシトキによる果断な決定。
和田氏への嫌がらせの連続で暴発を誘った、と言われていますが、その辺りは本当はどうだったんだろうと思いますね。

甥にあたる和田胤長(わだたねなが・細川岳)だけが厳罰に処され遠流の罪になった後、その屋敷はいったん、和田義盛(わだよしもり・ヨコタエイジ)に与えられました。処罰された者の所領や屋敷はその一族に与えられるというのが慣例だったそうで、とうぜんそうなったんですが10日ほどしてその屋敷が、改めて北条ヨシトキに与えられることになった。

「与える」の主体は将軍・源実朝です。
源実朝が、急に「和田義盛に与えたけどやっぱりやめてここは北条ヨシトキに…。」とか言い出したとは考えられない。
北条ヨシトキが仕切って断行し、すでにいた和田義盛の代官を、屋敷から叩き出したと。

和田義盛は源実朝に直談判して、息子である和田義直(わだよしなお・内藤正記)・和田義重(わだよししげ・林雄大)両名の赦免をゲットしています。

鎌倉を治める理屈から言えば、謀反計画に加わりながら、自分の昔からの戦功と親しさを縦に「将軍の決定を覆した」ことは許されざる行為、なわけです。鎌倉の規律を見出す行為だ、と。決まってることを勝手に覆すのはやってはいけないことだ、と。

それなのに、源頼朝公以来の慣習である「一族に屋敷は与えられる」を北条ヨシトキが率先して、勝手に破っている。
恣意的な判断で「俺ならどうとでもできる」と言わんばかりの態度を取っている。

ここが、「挑発した」と言われる所以なのですね。

 

将軍の後継者

そういえば「養子」の話が北条政子(ほうじょうまさこ・小池栄子)たちの間で出てきましたね。
この時すでに源実朝に子がいないことは周知の事実で、もうこれ、この先もできないんじゃないかということで動き出しています。この時点では健保元(1213)年ですが、5年後、北条政子は上洛し、皇族を将軍に迎えられないかの相談を藤原兼子(ふじわらのかねこ・シルビア・グラブ)にするくらいですから「幕府としてマジ」だったことがわかります。

なので「北条が将軍になるべきです」と言い出すのえ(菊地凛子)。

これ、茶飲み話の冗談としては良いんでしょうが大きな声で叫んだらその時点で「謀反」です。他の御家人からしたら、北条氏を誅殺・滅亡させる良い理由になる。

女房がこれを言っている責は北条ヨシトキにのしかかったでしょう。
危うい。とてもとても危うい。
逆に、これを言う相手が尼将軍・北条政子で良かったよ。

三浦と和田が組みさえしてれば…

酒を酌み交わしながら、食えぬ男・三浦義村が「小四郎を獲る」と、謀反の軍に加わる約束(のようなもの)をします。
この言葉を信じれば、その通りになれば、戦自体は絶対に勝てます。
鎌倉近辺で、最大の軍勢を持っているのは三浦氏と和田氏。

三浦義村は三浦本家の棟梁ですが、年齢は40代後半。
和田義盛(わだよしもり・横田栄司)はこの時、67歳。
和田と三浦が合体すれば、北条一族などひとひねりです。

あとは、大義名分がしっかりあることが必要。

その大義名分とは「玉」。
つまり将軍を担ぐこと。

ところが最初から、三浦義村は自分の一族よりも、北条につくことを選んでいた。
「そうやって俺は生きてきた」と彼は嘯きましたがこの時代、こういう生き方が「そういうことだ」っていうことなんですね。
わかったようなわからんような。

逆に言えば、北条氏を滅ぼして自分が将軍を補佐する立場にまでのぼり詰めたとしても、自分の器ではないと知っていたのか…。
そして彼には起請文など、なんの意味もない。

三浦軍さえ自分側に合流すればいくら武に優れた宿老・和田義盛に従う一族が立ち上がってもなんとか滅ぼせる。北条ヨシトキはそう読んだ。この辺り、もう北条ヨシトキの心情は「謎」に包まれています。なぜ和田一族をけしかけ続けたのか。そしていくらでも嘘をつき、裏切り、裏切らせ、滅亡させるようになってしまったのか。ドラマだとどうしても、牧歌的な「田舎の次男坊」イメージの残響があり、残酷で冷徹すぎる51歳の北条ヨシトキの行動原理が「鎌倉を守る」だけでは納得できないんですよね。

だけど結果だけ見れば、彼が北条150年の礎を作った。
けっきょく30年くらいあとに、その三浦も皆殺しにするけど。

和田合戦の問題のキモは「将軍にさえ止められなかった」という部分だと思います。
22歳になっていたのに源実朝は、従三位にまでなっていたのに、北条ヨシトキには逆らえなくなっていたのか。

北条政子の肝煎りで「北条家伝来のあの秘策」による将軍謁見に成功した和田義盛。
親しかった2人(年齢差45歳)の最後の面会は、古老の臣と若き将軍という身分の差を超えた、心の通ったものになりました。

並んで御所に呼び出され、矛を収めかけた北条ヨシトキでしたが、彼にしてみればこれはこれで、顔を潰されたことにもなります。いくら尼御台が策を弄しようと、美辞麗句と正論で説得をしようと、もう「和田滅亡ミッション」は完全にセットされてしまっていました。その上、掛け違ったボタンはついに直らず、和田義盛は血気盛んな若い世代を止めることができなくなっていました。

ドラマなどのフィクションでは登場人物たちが直に会って話し合うシーンがあたり前にたくさん出てきます。

実際は「そうじゃないから解決しない」んですよね…。

謎のブチギレ。和田合戦

 

今回の『鎌倉殿の13人紀行』は、ここでした。

光念寺

正行院







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