鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人 第20回『帰ってきた義経』

投稿日:2022年5月22日 更新日:

義経を迎え入れ、

鎌倉の最大の脅威となった

奥州平泉。

藤原秀衡によって

保たれていた均衡が

崩れようとしている。

平穏な日々

奥州に「帰ってきた」と鎌倉に「帰ってきた」がかかっているタイトル、でしたね。

源義経(みなもとのよしつね・菅田将暉)は源頼朝(みなもとのよりとも・大泉洋)に追われる立場になり、「かつての奥州」に戻るしかなくなりました。
西国で再起を図ろうとしていましたが失敗、奈良の山中を抜け、北陸路を経て奥州へ。

正確な逃走路が分かろうはずもありませんが吉野の山奥で静(しずか・石橋静河)とも別れ、自分の源氏の血を最大限に生かして盛り返すには、奥州藤原氏の経済力・軍事力を頼るしかありませんでした。
その割にここで迎え入れられ、親子3人のどかに過ごしていたそうです。

奥州は都からあまりに遠い上、膨大な貢物が贈られている関係上、朝廷からは「政治的には事実上放置」というような感じだったんですね。

当地の統治力は相当なもので、だけど関東やそれ以西に武力で攻めようとしない、豊かでありかつ穏やかな支配だったようです。
ちなみに東北は最大の「馬の産地」です。

賢王として君臨していた藤原秀衡(ふじわらのひでひら・田中泯)が死んでしまい、一枚岩であろうはずがない奥州藤原氏は抑えが効かなくなり、瓦解する危機に陥ります。

藤原秀衡は「自分にもっと時間があったら鎌倉に攻め込んで…」というような言葉を残していましたがとうてい、そんな気はなかったのではないでしょうか。やるなら、鎌倉政権が固まる前にもう攻めてるはずです。せめて源平合戦の時にアクションを起こしていたはず。

藤原国衡(ふじわらのくにひら・平山祐介)と藤原泰衡(ふじわらのやすひら・山本浩司)の仲違いを誘発せよ、と源頼朝は北条ヨシトキ(小栗旬)に命じました。

「この日の本から鎌倉の敵を一掃する」
「新しい世を作るのじゃ」

と源頼朝は大義名分を並べてましたが、そのために、弟の源義経を奥州藤原氏に殺させて、それを奥州攻めの理由とするという策謀を平気で立てるなんて、あまりにもひどいではありませんか。

東北の統治権を奪い、奥州藤原氏を滅ぼしてこそ、新しい世は成る。その理屈はわかりますが、そこに「源義経絶対殺害計画」って要りますかね…。

藤原氏、兄は藤原国衡なのですが彼の母親の方は身分が低いため、次期当主は弟の藤原泰衡です。
奥州藤原氏では「鎌倉に従うか」「鎌倉と戦うか」で兄弟・一族で、当然のように大モメします。

前当主・藤原秀衡は「源義経を大将軍とせよ」と言っていましたが藤原泰衡にその気概があるはずもなく、源義経殺害計画を実行することに。

まんまと源頼朝の策略どおり「奥州を攻める根拠」と「源義経の首」が両方手に入る流れになりました。

使者として北条ヨシトキが平泉を訪れた時、すでに源義経は「説得すれば鎌倉幕府の参謀となれる可能性のある源氏の御曹司」ではなくなっている様子でしたね。

身重でありながら源義経の所在について追及すべく鎌倉に連れて来られ、興味本位で留め置かれている静。
生まれた子が女子なら生かすが男子なら殺せと迷いなく断じる源頼朝。
容赦無く苛烈な処断でその恐怖政治のあり方を示す、血塗られた鎌倉殿。

源頼朝は単に「京の踊り子の芸能を見たい」ということで、身重の静に、舞を奉納せよと命じます。
「下手すぎる演出」に耐えられなくなり、女の意地を立て、遠くの地にいる源義経に想いを伝えるために、本気で舞うことを決める静。

鎌倉の武士たちは単に「あれが都の白拍子か…と」下衆な興味本位で集まっていたはずですが、源義経への想いの丈を舞に込めたことで、源頼朝の不興を買ってしまいます。

北条ヨシトキや源義経が諭したように、鎌倉殿をあざむき、母子ともに生きる道を選んでいればもしかすると生まれた子は、鎌倉政権を20年後に倒すとんでもない戦士に育ったかも知れません。

 

それを「すでにすべて過ぎたこと」として聞かされる源義経。

大姫の入内計画を立案しながら、同時にこの残酷な処理ができる源頼朝、二位殿、ろくな死に方しませんぞ…という感じがしてきますね。

「源義経は挙兵するつもりだ」と藤原泰衡に焚き付け、「手は一つ」と提案する北条ヨシトキ。
もう彼は、かつての「事態に右往左往する彼」ではなく、鎌倉殿のため、武士政権のため、新しい世のために、嘘でも脅しでもなんでも口にする人格になってしまいました。

もし源義経が、全・奥州をまとめあげ(例えば藤原泰衡を失脚させ)、鎌倉政権と激突する戦争への道を選んでいたら、どうなっていたでしょうね。おそらくは、動員できる兵力と、誰でも朝敵に出来る政治力の圧倒的格差で、勝てたとは思えません。でも可能性としては源義経が大将軍になり血も涙もない源頼朝を見限った大半の坂東武士団が寝返り、「西源氏・東源氏」という区分ができてついに東国(奥州・坂東)と西国との日本二分割統治が成立したりして、南北朝ならぬ「東西朝」が生まれたかも知れない。

静の行く末を「いい気味だわ」と言い放った里(さと・三浦透子)は、京の六条館を襲った土佐坊昌俊(とさのぼうしょうしゅん・村上和成)の一味を手引きしたことを告白し、静への嫉妬を蒸し返し、一瞬の激情に駆られた源義経の手にかかってしまいます。それにしても源義経、キルスキル高過ぎない?

ザ・ラストヨシツネ。

前当主・藤原秀衡の庇護があったことは全ての奥州人が知っているはずなので、源義経の味方をする武士は多かったはずなので、藤原泰衡は源義経をなんとか、騙し討ちするしかなかったのだと思います。

絶体絶命の段階になっても笑う源義経。
武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい・佳久創)との「世話になった」「やめてください」のやりとり。幼少のころから自分に付き従い、全ての戦を共闘い、策略も智謀も全て彼がいたからこそ成功してきた愛すべき側近。源義経がここまで無事にやって来られたのは完全に彼(弁慶)のおかげなので、万感の思いがあったはずなのに、あのあっさりしたやりとり。

源義経にはまだ「逃げて再起を図る」道もあったはずですがそれなら藤原秀衡の存命中に、その計画を練っていたはずです。しかし源氏の一族として、「もう、それは違う」と判断したのだと思われます。味方もいたはずですから、ギリギリまで、親子3人で逃げることができたかも知れない。でも、もうこれ以上の苦労を重ねて、罪人として追われ続けて生きて、なんになる…と腹を括った。源氏の御曹司として、自ら妻と娘を殺し、自害しました。

 

夏草や 兵どもが 夢の跡

源義経がその直前に、北条ヨシトキに説いた「鎌倉攻略計画」。
なんとこの半分は、のちに鎌倉幕府滅亡の際に、新田義貞が採った作戦そのものだったのです。

おそるべき戦争の天才・源義経。
150年後の鎌倉幕府滅亡は、彼の怨念の成せるわざだったのか…。

鎌倉に運ばれた首を前に「よう頑張ったな」と声をかけ、涙を流した源頼朝。
これはすごい。どういう感情かわからない。
というか源頼朝が「新しい世のため」に弟・源義経の命を執拗に狙い続けた理由がけっきょく、よくわからないんですよね。

芝居としてはものすごく難しいのでしょうし、それだけに意味不明なわけですが、まず間違いなく「普通の兄弟愛」なんていうものではない。

奥州藤原氏を攻めるのは既定路線だったにしても、それを攻める筆頭として平家戦のように、源義経を立てるわけにはいかないようなので逆に「獅子身中の虫」として逃げ込むのを待ってた…のか源頼朝は。わからん。ぜんぜんわからん。

 

今回の『鎌倉殿の13人紀行』は、ここでした。

高館義経堂

接待館遺跡

 

今、義経がいる場所を突き止めた!







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