鎌倉殿の13人

第3回『挙兵は慎重に』

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治承4(1180)年は、いよいよ源頼朝(みなもとのよりとも・大泉洋)が挙兵した年。

ここからの10年は怒涛の10年。

源頼朝にとっては20年間伊豆で流人生活をしてからの怒涛の10年(計30年)、ということになりますね。

挙兵するのかどうなのか、北条の館で北条宗時(片岡愛之助)らが車座になって酒を飲んでいる中に畠山重忠(中川大志)がいました。現時点でここに彼がいるのもドラマティックです。

そしてとうとう源行家(みなもとのゆきいえ・杉本哲太)が現れました。
源頼政(みなもとのよりまさ・品川徹)が以仁王(もちひとおう・木村昴)を奉じて挙兵する、と。

源行家に携えられて「令旨(りょうじ)」がやってきましたね。
令旨とは、「皇太子の出す命令文書」のこと。

 

以仁王は「皇太子」なのか

「治承4年の政変」で平清盛は、兵力で京都を圧倒。ほぼ軍事クーデターと呼ぶしかないようなやり方で後白河法皇を幽閉してしまいます。
前代未聞のやり方で平家の権力は極限まで最大化し、皇位継承権も思うがままに。

高倉天皇を辞めさせ、子に譲位させます。
これが安徳天皇ですね。

母親は平清盛の娘の徳子。
つまり平清盛は天皇の外祖父となり、いわば国権を自由に操れる地位についたのです。

頂点を極めたこの瞬間、逆に言えば、いよいよ平家滅亡のカウントダウンが始まったんですね。

そしてこの「高倉→安徳」の皇位継承が行われた時点で、完璧に以仁王の皇位継承の可能性は消えました。後白河法皇の皇子でありながらすでに彼には政治的な後ろ盾をなくしており、親王宣下も受けていないので(だから以仁王と呼ばれてる)、皇太子ではないのです。

なので皇太子でもないならば、「令旨」は出せないはず。

だけど「以仁王の令旨」と呼ばれます。

それはつまり「平家の専横によって進められている政治・皇位継承など認められない」という意味が込められているということですよね。

平家側(と中立な立場)から見ると「あれは令旨でなない」と一蹴できるんだけれど、反感を持つ者らからすると「本来はこれこそが令旨となるべきものだ。いや、そうなるべきだ」という思いが詰まっている。

以仁王は平家による中枢政治にマックスの不平不満を持っている皇族としてもっとも適任で、だからこそ全国の源氏の「権威づけとしての正当性」をフルに担保できる存在だったのですね。

北条政子(ほうじょうまさこ・小池栄子)がまったく読めないと言い出しそれを全員でスパーンと無視するシーン、おもしろかったですね。しかし本来は精進潔斎して推し頂かなければならないような令旨をパラッと拡げる段階で北条政子がその場にいる、というのは鎌倉幕府としてまさに象徴的ですね。

源行家は、源頼朝の叔父。
平治の乱で殺された当主・父である源義朝の弟です。

「今こそ全国の源氏が立ち上がる時。京へのぼって平相国(へいしょうこく。平清盛のこと)の首をとり、亡き我が兄・義朝(よしとも)の墓前に供えようではないか」

だけどこれが、本物の文書かなんかわからないんですよね。
なんだか怪しげな人らがやたら決起を勧めてくる、そんなことはこの20年、わりとあったんじゃないでしょうか。

源頼朝はひょいっと担がれてウキキキといい気分になってしまうような単純で直情径行な人ではないようなので、かなり・相当・疑ってかかってたはずです。

でも、信じて立ち上がった。
それを裏付ける、挙兵にいたる動機とは、いったいなんだったのか。

 

ポイントは源頼政

源三位(げんさんみ)とも呼ばれるこの長老は、その名の通り従三位に叙せられた人で、それも平清盛の推挙によって地位を得たと言われるくらい、信頼もされてたんですね。ゲンサンミ、だからと言って略して「げんさん」と呼ばれたりはしません。

源氏・平氏がそれぞれ、一族入り乱れて敵味方に分かれた平治の乱で、源三位頼政は源義朝側でなく、平清盛側についたのです。それで中央政界に居場所を得ました。

この源三位頼政が、伊豆の知行国主だったんですね。
管理というか支配というか、父の敵になった人とは言え源氏の長老が、伊豆を抑えていた。

「頼りない」「ありゃいただけません」「人は着いてこん」などとは言うものの、源頼朝の流人時代の環境に、彼が影響していなかったわけはないですよね。

それが、源氏の長老の支配力が以仁王の挙兵でひっくり返ってしまい、知行国主が入れ替わることになります。

平家の締め付けが強くなる…というリアルを、伊豆人らはみんなひしひしと感じたということですね。坂東の武士たちも「いやいや、田舎でうまくやっていくのレベル超えてるぜ平家よ」という不満と危機感を抱いたのでしょう。単なる「大きい意味での平氏という一族」という肩書きだけでは、支配権を維持できなくなってくる。「平家(平清盛の一門)」でなければいけないというような風潮。「平家にあらずんば人にあらず」と言ったのは平時忠(たいらのときただ)。平清盛の義弟です。

 

そんな平家は倒したい。

とはいえ、挙兵すると言ったって規模が小さい。
この時、「源氏軍」などというものは存在しないのです。

そもそも「以仁王様が兵を挙げられました」なんて言ったところで「以仁王軍」なんていうものは無いわけですから、どれくら未来を描いて、言葉巧みに説得して、実際の殺人兵力である武士団に将来を約束できるかというのが勝負どころ。

よほど『挙兵は慎重に』進めないと、世の中は「源頼朝の首を京都に差し出した方が楽」が常識ですから、蛮勇だけではどうにもならない。「あれ?これってもしかしていけそう?」と周りが思うくらいまでは、実績を作らないといけない。

おそらく源頼朝が慎重に描いていたのはその「いけそう」のラインだったんでしょうね。
「挙兵はしない」「頼政には着かない」という態度をとっておくことは当然だったと言えるのかも知れません。

源頼朝の挙兵によっていっとう最初にぶち殺されるヤなやつ、山木兼隆(やまきかねたか・木原勝利)・堤信遠(つつみのぶとお・吉見一豊)両者とも、やたら小悪党的な悪役に描かれがちですけれど、世間の常識・社会の通念からすると平家の味方して一族の将来を保護するのは当然の動き、ですからね。

結果的に源氏の勝利を知ってる我々は「やな奴だから討伐されて当然」だと思いますけれど、この時点で天下を転覆させようとしてるテロリストは源頼朝・北条の方なのです。

逆に言えば、京にいて、平家を打倒すべく手勢を集めて蜂起するなどは、まず成功するわけがない暴挙だったと言えるんでしょう。平家を倒すには相当の軍事力が必要で、それを支える莫大な経済力も居る。全国に協力者もいる。

ここに「飢饉」の意味がとてつもなく大きくのしかかってくるんですね。
超・暴力的な政治が横行すれば、取れ高が極端に少なくなるレベルの飢饉に襲われた時、京の貴族化した平家のために坂東が、どんな目に遭わされるか判ったものではないから。

 

養和の飢饉(1181年)は目の前。

北条政子がビシッと「下手すると来年食べる分がなくなるんですって」と言ってましたよね。

のちに、国家を崩壊させかねないこの飢饉への考え方が、源義仲(みなもとのよしなか・青木崇高)と源頼朝との政治的差異を著しく生じさせるきっかけにもなります。

周りからは考えてることをまったく窺い知ることができないほどに情報を遮断できる技を身につけていたはずの源頼朝。

「源氏の再興」は周囲の武士たち(氏は平だったりする)にはそんなに響かない場合もあったでしょうけれど、「この飢饉が迫る中での京からの締め付けに、仕方なく暴発」っていうシナリオが成立するのを、じっと待ってたようにも見えます。

後白河院(ごしらかわいん・西田敏行)が夢枕に立って直々に平家打倒を懇願したことも、文覚(もんがく・市川猿之助)が怪しげな骸骨を突きつけたことも利用して、周りがしっかり盛り上がる、燃える火種を確認する必要があったのでしょう。

北条ヨシトキ(小栗旬)が「勝てます、この戦」と兵力を計算したシーンが出てきましたが、源頼朝が描いている「戦」と、ピッタリその範囲は一致していたのでしょうか。ヨシトキが例え「3,000」と兵力を見積もって、たかが地方の代官である山木・伊東を倒せたとて社会そのものである「京の平家」を打倒するには、何を後ろ盾にするかが重要になります。大義名分が要る!と源頼朝が言ったのはそれです。「後白河院が夢枕に立った」は根拠としてはじゅうぶんだったとしても、貴族である源頼朝は、皇位継承問題で勃発した平治の乱の生き残り。天皇や法皇を敬いながらも、骨肉の争いを飼い犬である武士にさせて裏切りと調略の限りを尽くす存在であることを知っています。現にのちに、後白河法皇は「源頼朝追討命令」も出したりしますからね。

だけどそこまで見越していたとしても、決起する機は熟した、と彼は判断した。

もっと先を見ているはずの源頼朝。

初戦で殺されていたら大河ドラマは5話くらいで終わってしまいますが、そうはいかなかったので武士の世は600年、続くことに。

 

 

 

第3回の『鎌倉殿の13人紀行』は、ここでした。

総本山 園城寺(三井寺)。

 

 

 







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