鎌倉殿の13人

祈りと威厳と段葛(だんかずら)

段葛

 

鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝は、正妻である北条政子が身篭ったことを知り、段葛(だんかづら)の造成を指示したそうです。

 

安産の祈祷のために、と言われています。

つまりそれは、真っ直ぐな参道=産道→安産の願いの具現化、っていう事だったんでしょうか。

現代においてすら、妊娠が判明してから道路工事の命令をしても出産には間に合わない気がするんですが、参道を含めた鶴岡八幡宮(寺)の整備は「鎌倉殿」としての責務であり、威信を示す重要なポイントだったのでしょう。

若宮大路は今も残っており、そこに重なるように、段葛はあります。
考えてみるとこんな形の道路って、なかなか無いんじゃないでしょうか。

海側から一の鳥居・二の鳥居・三の鳥居と進んで行って、境内に達する。
だけど実際は、一の鳥居からがもう、境内だったんですね。

例えば要塞としての鎌倉を考えた時、本丸たる鶴岡八幡宮(とその隣の御所)まで真っ直ぐに伸びる道なんて、海側から攻められたらひとたまりもない。防御のためには曲がりくねらせるのが常套でしょう。だけど鎌倉の海は遠浅で、敵が海上から攻めてくる心配はまず無い。なので安心して「直線道路」を普請できたということでしょうか。

 

ある春の日

やってまいりました。

段葛
段葛(だんかづら)一ニ置石ト稱ス寿永元年三月頼朝
其ノ夫人政子ノ平産祈禱ノ為鶴岡社頭ヨリ
由比海濱大鳥居邊ニ亙リテ之ヲ築ク其ノ土
石ハ北條時政ヲ始メ源家ノ諸将ノ是ガ運搬
ニ従ヘル所ノモノナリ明治ノ初年ニ至リ二
ノ鳥居以南其の形ヲ失へり

大正七年三月建之 鎌倉町青年會

明治初年に二の鳥居より南側は無くなった、と書いてあります。

その頃には、もう今の距離感だったんですね。
確かに今は、電車(湘南新宿ライン)の高架もあるし、段葛が続いてたらしゃがみながら通らなくてはいけなくなるし。

若宮大路って、実はよーくみると、最後、海に近くあたりで少しだけ西に曲がってるんですよね。
これは滑川(なめりがわ)の流れに合わせて変えられたんだろうと思われます。
鎌倉時代には、若宮大路がここまであったのかどうか。

若宮大路最南端。
砂浜は由比ヶ浜。Google Map。

若宮大路は最も広い場所では幅が33mもあったという発掘結果があるそうで、軍事パレードや祭礼の際にこそその威厳を発揮する「聖なる道」という感じだった。

 

そもそも、なんで「段葛」っていうんですかね。

初期には作道(さくどう)とか置道(おきみち)と呼ばれてたそうなんですが、「段」はわかるけど、「葛」は何を指すんでしょう。

現在は桜並木になってますが、これらは1913(大正2)年から始まった植樹によるもの。
さらに平成の大改修で木々も新たに。
満開は華やかさを得ましたが、まだ完全に成木にまでは生育しきってない感じ。

鎌倉時代には、どういう様子だったんでしょう。

今ほど石積みは高くなかったでしょうね。

「葛(かずら)」は、「くず」と読んだりもできます(「葛」とも書く)。

くず餅のくず、です。秋の七草。
根を乾燥させて飲む「葛根湯」は、今でもよく使われています。

妻・北条政子の懐妊に際し、鎌倉時代の将軍(生まれは平安貴族と言ってもいい)源頼朝が、安産を祈って造成・整備させた参道に、なんの意味も持たせないはずがない、と思うんですよね。

そこになんらかの医学的・呪術的な要素があったとしても、おかしくない。
葛は繁殖力が強く、現在では「侵略的外来種」にすら指定されてるんだそうです。
生えてきたら刈れ!駆除せよ!っていうくらい。

しかもその葉や茎は、馬の飼料としても有能だったそうです。
一石二鳥も、三鳥もある。

なので「生命力のイメージ」で、「葛」が植えられていても、まったくおかしくないんです。
真っ直ぐな参道=「産道のイメージ」と「繁茂するイメージ」の両方がある。

これが「段葛」だったのではないでしょうか。

ただ、鎌倉時代なんかはわざわざ移植する必要なんかないくらい、「侵略的外来種かよ」っていうくらいに、葛はそこいらに繁殖してたでしょうけれど。

生命力の強い植物のイメージを借りて、神域を貫くストレートロードのイメージまで借りて、源頼朝は第一男子(実際は二人目か)の誕生を待ちわびたということですね。

この息子・万寿(まんじゅ)は後に源頼家(みなもとのよりいえ)となり、二代目鎌倉幕府将軍となります。

将軍職・鎌倉殿の政治的地位を、しっかり固定するためには「源頼朝の嫡男」が世襲するという事実を作ることが最重要だったわけで、でないと「源氏であれば良い」となってしまい(現にそういう反乱がどんどん起こる)ます。

将軍の嫡男が生まれる、ということに対する将軍家の気概を内外に示す、重要な道、だったのですね、段葛は。

 

ここが二の鳥居。狛犬がいますね。

マスクをしています。
いつもこのパターンに思うんですが、狛犬は「守ってくれる」存在じゃないんですかね。
「終息の祈りを込めた」のはわかるんですけど、狛犬がマスクしてるとなると「罹患する恐怖」が狛犬にすらあるということになり、たぶん狛犬よりは霊力や体力的に劣る我々としては、不安の材料にもなったりするのではないか…という(考えすぎ)。というか獅子じゃないの?犬なの?これって。

 

中程まで進みました。

鶴岡八幡宮に近づくほどに、道幅が微妙に狭く作られているのだそうです。
長く見えるように、という工夫でしょうか。

確かに
二の鳥居付近(入り口)

三の鳥居付近(終点)
同じ縮尺ですけど、確かに違いますね…狭くなってる。

源氏の繁栄と安産の祈祷と、そこに都市整備を担う政治的主体としての威厳、それらが「メインストリートの造成」という土木事業として結実したのが、段葛。

 

 

 

 







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