仁侠ものチャレンジ

網走番外地

網走番外地

仁侠ものチャレンジは、今回で終わりにします。

これは「仁侠モノ」なのか…。

いわゆる「義理と人情のやくざ稼業の、一家同士の対立」というような構図を描いたものではないんです。アウトローを描いた、

はるか
はるか彼方にゃオホーツク
赤い真っ赤なハマナスが
海を見てます泣いてます
その名も網走番外地

このシリーズは全11作(「新」が8作)。
なんと前半11作が、2年半(1965年〜1967年)の間に公開されています。

そういう時代だったんですね。
量産体制が出来上がっているというか。

そもそも「網走番外地」ってどういう意味なんでしょう。
意味というか、何を指して言ってるのか。

「網走」にあるのは、網走刑務所、のことですね。

なんとなくすぐに「あばしり」と読めてしまうのは慣れているからで、普通に読んだら「あみはしり」としか読めないと思うんですけども。

アイヌ語に漢字を当てた物、と言われているそうです。
アパシリとは、「漏る」というような意味だそうで、洞窟の入り口から滴る雨漏り、のことだとも。

ほんとはどういう発音なんでしょう。

そう言えば漫画「ゴールデンカムイ」に、アシパさんが出てきますよね。
「ゴールデンカムイ」14巻

「リ」が小さく表記されてて、拗音っぽい扱いになってます。
これってどう発音するんでしょう。
アニメだとはっきり「リ」と発音されてますが、単純に「A-SHI-RI-PA」と読んでいいんでしょうか。いいわけがないと思うんですが。

網走監獄は、その場所がら、昔から「最も脱獄困難」な刑務所として知られていたそうです。そして日本の最北端にある監獄とあって、「最果てへの流刑」というイメージも強かったのでしょう。

そんな最果ての、重犯罪者が送られる監獄のある街。

網走の街に巨大な監獄があるから、そこには番地がついてなかったのかも。
または、網走の、街中じゃなくて、番外地だよ、と言えば「監獄のことか」とわかるということだったんでしょう。

市井の生活が存在しない、地図には載っていない場所、というようなニュアンス。

 

映画「網走番外地」は、モノクロなんですね。

極寒の地へ連れてこられた犯罪者たち。
傷害・前科2犯で収監されてきた橘真一(高倉健)は27歳という設定。

犯した罪の重さと刑期の長さが貫禄につながる世界。
拾ったシケモクすら、先輩から先に吸う、というしきたり。

人里
人里離れた檻の中
この世に地獄があろうとは
娑婆のねすこにゃわかるまい
知らなきゃおいらが教えましょう

ネスコってなんやねん…。
「寝す子」なのかな。

収監から2年が経ち、懲役労働に明け暮れる橘真一。

一人
一人暮らしのお袋に
極道重ねた罰あたり
すまぬ すまぬと手をついて
涙で祈る番外地

昔のつらい思い出を回想しつつ、荒くれ者の中で服役に耐える橘真一。

そこへ、保護司である妻木(丹波哲郎)がやってきます。
橘は母親に会えるように取り計らってくれと、妻木に頼みます。

ドスを
ドスを片手に殴り込み
切った張ったのこの渡世
どうせおいらの行き先は
その名も網走番外地

 

脱獄…?

労働しながら、脱獄の計画が静かに進んでいきます。

仮釈放に向けて労をとってくれている保護司の妻木。
それとは別に、参加するしかなくなる脱走計画。

なんだかこの「網走番外地」を見ていると、なんだか、やることが詰まっているというか、迷いがないというか、不思議な気分になってきます。大いなる意図とかはないというか…大きく貫く哲学っぽいものがないというか…。

実はこれ、当初はこんなに当たるとは思われていなかった作品なのだそうです。

それどころか、「予算もカットして白黒にする」と映画会社に決断された、添え物としての作品だったそうです。ラブロマンスもないし、泥臭く男臭いから人気でるわけないだろ…という判断だったのですね。

なんというか、その思い切りの良さが、逆にウケてしまった…というところなんでしょう。

恐怖の八人殺しの鬼寅(阿久田寅吉・嵐寛寿郎)というキャスティングと、軽快とも言える音楽とのマッチングもなんだか思い切りの良さの結果に見えてきます。

まったくどうなるのか、ストーリー的に先が見えない。読めない。

脱獄計画は頓挫したように見えていましたが、あきらめていなかった男たち。

刑務所から離れた作業場へ移送される途中で、雪山へ逃げていくのを追う刑務官。
バンバン拳銃を撃ってきます。

手錠をしているせいで、権田権三(南原宏治)の凶行の共犯になってしまう橘(高倉健)。

釧路まで逃げて、そこから船で…と権田はいいますが、徒歩ですからね。
雪の降る中、徒歩で網走から釧路?

例えば釧路市の東端、三津浦という場所まで、網走監獄まで徒歩だと31時間、と出ます。
休みなしで31時間で着く。
だけどこれは現在の、舗装された大通りを進んで、ですからね。
追っ手を逃れて、雪深い山間部を踏み越えていくとなると、いったいどれくらいかかるんでしょうか。食料もないし。

仮釈放の手続きを進めてくれていた妻木の家に潜り込んで、夫人を傷つけてしまい、取り返しのつかないことになってしまいます。

それでも逃亡の先に、自由を感じて雪の中を進む橘。
もはや良い結末にはならないことが見えているとしか思えないんですが、この「どうにも読めない乱暴な進み方」が、観ているものを豪快に引きずり込んで、どうしようもない力強い魅力を感じさせたのかも知れませんね。

手錠で繋がれたまま、二人で逃げる権田と橘。
なんとなく外国映画の趣もある感じがします。
どこかにそういう雛形があったのか…。

ルパン三世のようにトロッコで逃げ、同じトロッコで追う妻木(丹波哲郎)。

トロッコの場面がかなり長かったように思いますが、飛び降りてみると汽車が見える場所にたどり着いていました。

俺の勘じゃな、この辺はぺんけせっぷっつーところだぜ。
釧路まで汽車なら1時間足らずだぜ

と権田が言います。

ペンケセップ?

ペンケロップ川、ならここなんですけども。

ここは「釧路まで汽車で1時間」じゃないですし、網走からここまで2日くらいで徒歩で来れるなら超人です。

どうやら「ペンケセップ」というのは架空の地名のようですね…。

セップは「広くある」という意味で、ペ(パ)ンケには「川上の」という意味があるそうです。
実在はしないけど、組み合わせるとそれらしい言葉はある、という感じなんですね。違うのかな…。

それにしたって網走から「釧路まで汽車で1時間足らず」の場所まで、徒歩で、食料と言えば妻木の家に侵入してかじったイモくらいで…やっぱり超人ではないでしょうかこの二人。

妻木(丹波哲郎)に追いつかれ、捕縛される段になって、鎖の切れた権田がうわごとで母親を求めていたのを聞いて、理解を示す橘。

妻木は橘の心を救うべく、傷ついた権田をも救います。
母親の無事を知った橘は馬に鞭を振るい、妻木と権田を乗せたソリを進ませます。

「完」。

ええ!?完!??おわっちゃったぞおい。
いやいや、「脱獄したこと」に関するその後もわからずじまいだし、同じ監獄で過ごした連中のその後も全くわからずじまいだし、そういうところで終わられてしまうと、確かに続編は気になります。

同じ年の3ヶ月後にはもう「続 網走番外地」が封切られるんですが、その気持ち、わかる気がする。

なるほど健さんの「男路線」、「網走番外地シリーズ」は仁侠モノ、というよりはもっと粗暴な、「アウトロー路線」と言っていいのかも知れませんね。

 

 

ーシリーズ18作ー

第1作『網走番外地』1965年4月18日公開
第2作『続 網走番外地』1965年7月10日公開
第3作『網走番外地 望郷篇』 1965年10月31日公開
第4作『網走番外地 北海篇』1965年12月31日公開
第5作『網走番外地 荒野の対決』1966年4月23日公開
第6作『網走番外地 南国の対決』1966年8月13日公開
第7作『網走番外地 大雪原の対決』1966年12月30日公開
第8作『網走番外地 決斗零下30度』1967年4月20日公開
第9作『網走番外地 悪への挑戦』1967年8月12日公開
第10作『網走番外地 吹雪の斗争』 1967年12月23日公開
第11作『新 網走番外地』1968年12月28日公開
第12作『新網走番外地 流人岬の血斗』 1969年8月13日公開
第13作『新網走番外地 さいはての流れ者』1969年12月27日公開
第14作『新網走番外地 大森林の決斗』1970年8月14日公開
第15作『新網走番外地 吹雪のはぐれ狼』1970年12月30日公開
第16作『新網走番外地 嵐呼ぶ知床岬』1971年8月13日公開
第17作『新網走番外地 吹雪の大脱走』1971年12月29日公開
第18作『新網走番外地 嵐呼ぶダンプ仁義』1972年8月12日公開

 

 

…「仁侠ものチャレンジ」は、今回で終了でござんす。
Amazonプライムから東映仁侠路線、ごっそり消えるでござんす。







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