鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人 第15回『足固めの儀式』

投稿日:2022年4月18日 更新日:

義仲討伐のため、

すぐにでも出兵したい頼朝。

しかし、御家人たちが

これに反発する。

着々と進む、頼朝追放計画。

 

なんとかならなかったのか

どちらかと言えばどうでもいい八重さん(やえ・新垣結衣)と小四郎(北条ヨシトキ・小栗旬)とのくだり(失礼)、りく(牧の方・宮沢りえ)の表情が微妙でした。
「立派な北条の後継を産んでもらわんとな〜ワハハ」と北条時政(ほうじょうときまさ・坂東彌十郎)は豪快に笑ってましたね。

兄の北条宗時(ほうじょうむねとき・片岡愛之助)が死んでいなくなっているこの時点で、北条家の家督はヨシトキが継ぐことになる…っていう感じなんですが、若いりくと、現役の家長である北条時政の間に男子が生まれたら、これはこれで話は別になってきます。

自分が産んだ子が北条の家督を継ぐべき…とりくは考えており、それが、のちに大問題に発展するんですね。その意味では、八重さんと北条ヨシトキの関係は、どうでもいいなんてことはないのです。

「法住寺合戦(ほうじゅうじかっせん)」と呼ばれる、木曽義仲(きそよしなか・青木崇高)による後白河法皇(ごしらかわほうおう・西田敏行)・後鳥羽天皇(ごとばてんのう・尾上凛)奪還作戦。政権を実質的に奪い、迫り来る鎌倉勢に対抗するためにはそうするしかなかったとは言え、平家と同じことをしてしまった木曽義仲…。

源氏の正統である木曽義仲は、何を間違ってしまったのか。
何度考えても「もう少し上手くやる方法はあったはず」と思えてなりません。

のちのち鎌倉の源頼朝(みなもとのよりとも・大泉洋)と衝突することになることは避けられないにしても、平家を追い落とし、なんとか京の治安と天皇家の信頼を勝ち得ていれば、無茶をする必要はなかったはずなのに…。

とは言え、木曽義仲を初め、結果的に最終勝利者となる源頼朝(および北条氏)の邪魔になった人たちが、「まったく落ち度なく頑張ってらっしゃいましたけど、邪魔なんで殺しました!」と描かれるわけはなく、ここはもう露骨に「歴史とは勝者の歴史である」感が出てきますね。そんな中、ドラマでは木曽義仲、「そんなに悪い奴ではないよね」っていう描かれ方をしてます。それだけに、鎌倉で人質になっている源義高(みなもとのよしたか・市川染五郎)が不憫です。これぞドラマチック。

とにかく京は荒れ放題で、平家は再度・帰京する巻き返しを狙ってます。「木曽義仲ならなんとかなるんじゃないか」的な。そして源義経(みなもとのよしつね・菅田将暉)が、それをすべてなぎ倒してゆく…。

一方、物騒な雰囲気になってきた鎌倉。

坂東武者が源氏の棟梁を殺害してどうしようというのでしょう。

貴人の眷属となることで領国の支配権の正当性を担保するしかないこの時代、もし源頼朝を坂東で殺したとて、彼らの誰かが「佐殿」になれるわけではありません。いくら武力が強くても、財力が高くても、血筋は買えない。そんな理屈は、みんなわかっているはず。
だけど源頼朝に反旗を翻そうとしたのは、「この時点ではまだ、未来に“鎌倉幕府”などという武士政権の確立などは微塵も、誰の目にも見えていない」ことを表していますよね。

彼ら在国領主にあるのは「領国が安堵されること」のみで、担ぐ御輿なんかは誰でもよい。
坂東さえ無事なら他のことはどうでも良いし、政局のトップが誰であろうがどっちでもいい。
源氏も平氏もそんなに関係はない。それが本音でしょう。

その、昔ながらの本音があった上で「新しい価値観」が乗っかってくるのが鎌倉時代。
だから大きなパラダイムシフトを迎える前段階として、この回は必要だったんですね。

和田義盛(わだよしもり・横田栄司)の心変わりを誘発した頭脳派イケメン・畠山重忠(はたけやましげただ・中川大志)。
彼は北条ヨシトキの同世代の、絆を結んだ盟友。
この回のあの場面も、のちのとんでもない事件の前振りになってしまいます。そしてそのきっかけが先述の「りくの微妙な顔」だったりする。

不発に終わった鎌倉殿転覆未遂騒動

上総介広常(かずさのすけひろつね・佐藤浩一)と源頼朝が酒を酌み交わす場面で、遠くで狼が哭いてましたね。山犬かもしれませんが。

謀反の責任を上総介広常ひとりに背負わせる作戦は、大江広元(おおえのひろもと・栗原英雄)の発案だった…あの2万の軍勢を率いたことで源頼朝の命を救ったとも言える彼を、排除する機会を探ってたんですね。兵と領土を奪う作戦。

領国支配が後白河法皇の承認のもと、源頼朝に許されたことで、大領地・大勢力だった上総介広常を殺すことも、源頼朝/大江広元ラインでは正当化されたっていうことなんでしょうか。

だんだん源頼朝が「少し間抜けで善い人」なんかではないことがわかってきました。
これでも「#鎌倉殿どうでしょう」なんてことが言ってられますかね…まだまだ、源頼朝の冷徹で残酷な性格が露呈してきます。こんなもんじゃねえぞ。ひょうきんでコミカルな演技もこなす大泉洋さんだけに、目が据わったそのギャップが怖い。

というか「源頼朝、善い人」の表面的な「善い」をキープするために、裏の仕事を司る善児(ぜんじ・梶原善)がいる…。

結果的に北条ヨシトキはこの謀殺計画に加担していたことになってしまい、鎌倉殿周りの謀略からは残らず関わらなければならない立場になっていきます。腹心ってそういうことよね。

「殺した相手の所領はぶん取り、それを改めて鎌倉殿からいただく」という形式が「御恩と奉公」と呼ばれる封建制度の始まりとなり、鎌倉政権の権力そのものとなる。

そして「優先順位を間違わない源頼朝」は殺す相手の選定と順序を違(たが)わず、権威と武力と財力をしっかり蓄えていく。上総介広常が胸中に携えていたという書状。謀反の心などなく、鎌倉殿の大願成就を願う内容でした。しかし純粋で、逆に言えば短慮な相手だったとも言えるので、やっぱり殺しておくには最適だったとも言えてしまう。「子供の字か?」がそれを表してますね。握りつぶせてしまうほどの計画性しか持ってない、御家人の中ではチョロい相手だった…と。

当たり前の本地垂迹(ほんじすいじゃく)

万寿(のちの源頼家)の「お立ち初め」の説明をするとき、文覚(もんがく・市川猿之助)は法衣を着て、幣(ぬさ)と鏡を並べた祭壇の前にいました。それらは神道の用意ですよね。神社でよく見ます。

文覚は僧侶。
この時代、現代のように、神道と仏教はキッパリ分かれてはいなかったんですね。
神社で僧侶が読経することは当たり前。江ノ島の弁財天で阿野全成(あのぜんじょう・新納慎也)がお経をあげているシーンも出てきました。

神仏習合は「仏教の世界に、日本古来の神々がいる」という考え方。
日本の神々は仏教における仏たちが仮の姿で現れたもので、「権現(ごんげん)」というのがそれです。「権」は「仮」という意味も持っている言葉です。

神々・仏の世界はクラウドでつながっている…みたいな感覚だったのでしょう。
源氏が崇拝する八幡伸は応神天皇に比定されますが、同時に阿弥陀如来でもある…みたいな感じで、混じっているというか同じだっていう感覚だった。鎌倉時代の中期ごろになると、この感覚が逆転した思想も盛んになったそうです。

明治時代になって廃仏毀釈が起こり、そういうことは無くなったとは言え、感覚的に我々も、完璧な分離をして信仰してるわけではないですよね。この辺、キリスト教やイスラム教の人には理解が得られない部分だったりするのか。

とにかく「足固めの儀式」が「お立ち初め」と「鎌倉殿の権力基盤」との、ダブルミーニングになっていた今回。

そしてあっさり八重さんとの間に北条泰時が生まれる世界線…。

 

今回の『鎌倉殿の13人紀行』は、ここでした。

十二所果樹園

上総介塔







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