時間が戻る?
可能性としては「あり得る」んだそうです。
だけど我々が、「あ、戻った」と感じるようになるかどうかは、わからない。
タイムマシンはもう実現するのだ、と言われたりもしていますけど、それは一部の人らが「そうであって欲しい」という願いサングラスをかけて(色濃い目)、想像と現実をごっちゃにして「それらしい顔」で言ってるだけなんじゃないのか…とも思えます。
「親殺しのパラドックス」て、元は「grandfather paradox」なんですよね。
なんで「親」と訳したのか。
「祖父」という、もう一個、世代が上の方が不確定要素が多いんだから、認識としても正しさに近い気がするんですけどね。
「親が死んでたら自分は生まれない」っていうのは、直截すぎるんですよ。表現として。
祖父だからこそ「父が生まれたとしても…」みたいな、自分へつながる生のロープの、複雑さが感じられる。
「過去に戻る」時に、だいたい(映画『TENET』でもそうだった)、なんか、機械に入るんですよね。
例えば透明の大きい試験管みたいなのに入って、上から「素粒子に分解して過去に送って、そこで組み立て直す」みたいな形でタイムリープ(時間跳躍)を実現する。
回転したりとかする場合もある。
あれ見てていつも不思議に思うんですが、「送るべき対象か、その機械の一部か」っていう部分は、どうやって判別するんだろう。「送れる素材が決まってる」とかなら、反応しない素材で機械自体を作ればいいんでしょうけど、人間を送る場合、人体と、服も来てますよね。靴も履いてる。金属も身につけてる。それがどうして、細かい状態まで分解して同じ形に組み上げられるんだろう。「原子の集まり」くらいまでは可能かもしれないけど「デザイン」まで復元してるのってすごすぎないか…と、思ってしまうんです。
で、「空気はどうなるの」っていつも思います。
あまりにもヒョイヒョイっと過去・未来へ移動されてるんですけど、その人が吸った空気は、そのまま過去に行くんですね?
そこで吐いたら、地球上(宇宙内)の質量、変わってしまうことになりません?
それどころか「1億人がいっぺんに過去に行ける」ことになったら、これってどうなるんでしょう。
それを思うと、なんとなく「空気は考慮しない。酸素窒素とか知らん」と「だいたい時間旅行は少人数だろう」っていう、昔の、牧歌的な思い込み、が、「タイムトラベル」というSFを支えてたんじゃないかな…なんて、思います。
ところが。
『TENET』で、最初に象徴的に示された「逆行弾」。
「ボールが跳ねる」だと、上から下、下から上への運動は、実は同じ運動が向きを変えて行われているだけで、区別できない現象だったりする。
もうすでにこの時点で「何のことなのかよくわからない」んですが、ランダムで、予測不可能で、元には戻らない「エントロピー増大の法則」、これは、現時点ではそうだろう、という予測にすぎなくて「いや、必ずしもそうではないパターン、あるかもよ??」というところまで、研究は進んでいるそうです。
だけど映画内で不思議だったのは、「なぜそれを、恣意的に、部分的に利用できるのか」っていうところなんですよね。銃ごと兵士は移動できるかもしれないけど、銃弾がついてこないかもしれないじゃないですか。
そこに「意思」が働くとなると、その主体は一体誰なんだ、と。
「いやいや、あれはとにかく未来の科学技術でしてですね…」となるともう「そうですか」としか言えないんですが、アラを探してるわけじゃなくて、どう考えればいいかわからなくなってしまうっていう悩みは、残ります。
「未来の技術だから」はいわば「設定」ですから、設定さえしっかり守ってくれるならその土台にしっかり乗ることで、作品は楽しめるんですよね。「言ってたことと違う」ってなってくるから、駄作は駄作と呼ばれるわけで。「辻褄なんか合ってようがなかろうが知るか」という作品もあっていいし、それが面白いというものもあると思いますし。
だいたい我々は、「時間」を「時計」と同一視してるところ、あるんです。
今何時?と聞かれたら時計を見るし。
だから「時間が戻った!」と「時計の針が後ろ向きに動いた!」を、一瞬、同じことのように感じてしまう。時間逆行の表現として、針が反時計回りにグルグルグル…と回る、っていうの、ありますよね。いやいや、時計が動いてるってことは時間は進んでるんじゃないの…とか思いますけど、それは「表現」ですから。
そういう時も、やっぱり「空気の動き」は無視されるんですよね。人間の体内で起こる現象、も、すべて逆行するわけですから、食べた物も出てくるだろうし血も逆流する。重力に従って任せてる部分はじゃあどうなるの…??とか考えてしまうと、けっこう恐ろしい。
やはり「部分的に利用できるかどうか」みたいな、全宇宙の法則を恣意的に限定できるっていう凄さ、ですよね(未来の技術です)。時間の速さは人によって、位置によって違う…というのは解明されてるみたいですけど。
映画全体としては、とにかく音楽がかっこいい。しかも音量がでかい。
お前、『TENET』観た感想がこれなのかよ…って言われてしまいそうですけど、一番驚いたのは「世界を救え」って言われて、使い放題のカードを渡されるところだったりしています。
これは、もう一回観ろ、ということなのか…。