見たもの、思うこと。

ポリティカル・フィクションとしてのシン・ゴジラ

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シン・ゴジラ

改めて、Amazonプライムで観ました。
やっぱり忘れてますからね、細部なんかは特に。

「絶対防衛圏」ぽく、東京にゴジラを入れるな的に、多摩川をデッドラインとした作戦が立てられます。

「タマ作戦」じゃなくて「タバ作戦」なんですね。
ゴジラの口に凍結凝固剤を入れる作戦は「ヤシオリ作戦」と名付けられました。

「ヤシオリ」とは、「八塩折」と書くそうです。

これは、ヤマタノオロチという8首の龍を退治する際に飲ませた酒の名前で、それによって泥酔したところをスサノオがぶち殺したという伝説から取られています。

ちなみに尻尾からこの時に出て来た剣が「天叢雲剣(クサナギノツルギとも言う)ですね。天皇家の三種の神器とされ、 熱田神宮の神体として祀られているそうです。

いきなりそこまで作戦名を遡って名付けるということは、ゴジラを「聖か邪かわからんが、もはや神的な存在」として認めていることを示唆していますよね。「シン」とはそういう意味にもとれる。

だけど「タバ作戦」は地名なんだから、そんなに原義にまで遡らなくてもいいような気はします。「多摩川」や「奥多摩」と書きますが、それに対して「玉川」という書き方もある。「二子多摩川」とは書きませんね。

この「タマ」は「マガタマ」から訛った、という説もあるようで、そうなると三種の神器のもう一つ、「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」が思い出されることになります。

タマで勾玉を、ヤシオリで剣を。

そうなると最後の三種の神器である「鏡(八咫鏡)」のイメージは作中のどこかに隠されていないんだろうか…と思って観てみたくなりますよね。

 

これも見ました。

岡田斗司夫ゼミ#137
「シン・ゴジラ学、入門編! シン・ゴジラを絶対に見るべき5つの理由と、実はこっそりダメな5つの部分」

シン・ゴジラを必ず観なければならない理由5
1、「庵野秀明の実写/特撮はダメ、という定説を覆した」
2、「ダメ演技の壁を破った」
3、「ゴジラが強い」******
4、「見せ場を制限した」
5、「興業的に成功しなければいけないから」

シン・ゴジラがダメな部分5
1、「ドラマが*********い」
2、「******の押し付け」
3、「**が安っぽい」
4、「******映像ばっかり」
5、「テーマが******」

このトークの中で、「ポリティカル・フィクション」としての評価について触れられてました。

スピーディかつ細かな描写の中で、現時点の日本政治を軽くディスってる感じ、そういう演出というかセリフ、何箇所か出てきましたよね。

・首相官邸4階大会議室で行われた「アクアトンネル浸水事故及び東京湾における水蒸気爆発に関する複合的事案対策会議(第1回)」において、柳原国土交通大臣が東京湾沿岸への対処と羽田空港全便欠航について、矢継ぎ早に官僚から差し出されるペーパーの内容が刻々と変化しつつ、それを読み上げる最中に「以下中略」というテロップで処理するところ。

・首相官邸5階の総理執務室で、後方に控えた官僚たちには基本的に発言権はなく、大臣にメモを渡し、それを大臣がただ読み上げる、それによってしか進行しないという図式を弱々しく見せているところ。

・さっきから「想定外」と言いたいだけなんじゃないか、という金井内閣府特命担当大臣(防災担当)。

・緊急の課題として今後の対応を検討する中、国平内閣副総理大臣兼外務大臣が「駆除でよろしいかと」、葉山経済産業大臣が「賛成ですね」と発言し、金井内閣府特命担当大臣(防災担当)と河野総務大臣が「私も駆除に同意します」と言い、「そうだろ!防衛省!」と振られた松本防衛省運用政策統括官が「えー、過去、有害鳥獣駆除を目的とした出動は幾度かありますが海自による東京湾内での火器の使用は前例もなく、なんとも…」と顔を曇らせ、柳原国土交通大臣が「まぁまぁ、ことを荒立てず、穏便に追い出せないのか」と楽観論を出し、菊川環境大臣が「総理。各学会と環境保護団体が、貴重な新生物として捕獲・調査を提言しています。定置網を至急湾内に用意して欲しいそうです」と言い出します。金井内閣府特命担当大臣(防災担当)は「いや、ここは駆除だ。魚雷とか使えばすぐ済むだろ」と水を向けるとそれを受けた花森防衛大臣は「お気持ちはわかりますがここは、火器使用も含め本省に検討の時間をいただきたい」と強めに返します。それに便乗するように関口文部科学大臣が「私からも是非とも捕獲を視野に入れた検討を願います」という発言があります。

・これを聞いた矢口内閣官房副長官(政務担当)が、「速やかに巨大不明生物の情報を収集し、駆除・捕獲・排除と、各ケース別の対処方法についての検討を開始してください」と、官僚サイドに提言しました。すると平岡内閣官房副長官補らは困惑し、「それ…どこの役所に言ったんですか?」と聞き返します。

・里見総理(臨時代理)に、実行の承認を得るところ。

・どれに、判を押せばいいんだ

・立川広域防災基地 陸上自衛隊 立川駐屯地応接室で、「巨大不明生物の活動凍結を目的とする血液凝固剤経口投与を主軸とし作戦要綱」を「長い」と指摘するところ。

・米国政府高官のカスリー氏がカヨコ・パタースンに対して、「まさかこの国が狡猾な外交手段を使えるとは驚きだ」と嘆息するところ。

などなど。

つまり日本の行政が極端に縦割りで、横の連携がうまく機能しておらず、国益よりも省益が優先されてしまう傾向があり、長い会議や全会一致のようなコンセンサスがないと何も決定せず、意思決定もかなり曖昧で責任の所在がよくわからなくなるようになっている、ということへの、皮肉なんですよね。

だけど個人の強さと団結で乗り越えることはできるし、そうして来た、的な。

 

過去のゴジラ作品では、ほとんど政府は機能してません。

というかほとんど出てこない。
政府の下部組織である特務機関は出て来ますが、総理、官邸、閣僚が活躍してゴジラに当たる、というようなことは無かった。無かったというか不可能だという前提だったんですねおそらく。

ああいう事態(ゴジラみたいなのが現れたら)に、政府などは無力なのだ、という前提があった。

だけど、やっぱりシン・ゴジラの設定には2011年の地震・津波・原発事故が下敷きにあるのは明白ですから、「政府の対応」がまずどうだったか、は、物語として欠くことができないものになったんだと思います。

ゴジラというフィクションに対して「すごい民間人がいる」とか「ものすごい科学兵器や学者が出てくる」とかは、フィクションとして成立しない。上の動画で岡田氏が「嘘は1個だけ。これを守ってくれたのがよかった」と言ってたのは、そういうことですね。

確か「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。」というコピーも公開当時にはありましたよね。

そして、ゴジラって我々からすると、「あのゴジラ」「怪獣界のスーパースター」という位置づけで、知ってる存在なんですけど、この「シン・ゴジラ」の世界観では「なんだあれわ!!」っていう、「ゴジラ見たことない世界」なんです。

 

言うなれば、ゴジラ1回目。

そんなゴジラ未体験の世界だと、まず動くのは警察ですし、政治ですし、軍隊、でしょう。

だって例えばUFOを、ほんとに目の前で見たら、どこへ電話します?
天文台ですか?
占いの館?
科学研究所?
NASA??

違うでしょう、絶対、「警察」です。

我々の生活を脅かす存在が現れた時、警察にまず通報するでしょう。
そして警察の力ではどうしようもない規模だとわかったら、自衛隊に出動してもらう。それらを決めるのは政治ですから、首相がどんな決断をするか、にかかっている。

自衛隊による火器使用、またはそれを止めるプロセスが丁寧に伝達されて首相が一旦中止するシーンがありましたが、日本で「それ」をすることは「それほどのこと」だという重要な描写だな、と思いました。

最初に挙げた、最後の神器「鏡」のイメージは、今後何度も見ていく中で、「あっっっ!!!」とかって、発見するかもしれません。

 

 

シン・ゴジラの素晴らしさを黙って語るべし。

「ゴジラ」の感想に思う、シン底シンどい人たち、キミの名は。

第一作目の「ゴジラ」がめちゃくちゃ面白い件







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