共和制から帝政へ。その過渡期に登場した英雄ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)とその後継者アウグストゥスの姿を活写した大河ドラマ『ROME(ローマ)』を昨年、観ました。
そして古代ローマについては2017年、「ローマ人の物語」シリーズを読破させていただきました。
ローマは進軍し、戦いに勝ち、その土地の人を奴隷化するだけではなく、従う地域は属国化するんです。
同じように道路を作り産業を育て、じゅうぶんに豊かにする。
それを蛮族の地域でやって自分の味方にしようとしたからこそ、守旧派にカエサルは暗殺された。
でもそれは結局は「勝った者の理屈」。
やはり、侵略された側からしたらローマ軍なんて「恐ろしい虐殺の団体」なわけです。
もちろん、ローマに支配された方が栄えて、豊かになったことは確かのようです。
みんな原始人同様の、毛皮着て弓矢で鳥獣を追う暮らしとともに独自の文化だけを、部族単位で守ってただけだったから。
世界が広がったのはローマのおかげだし、現代の文明が今あるのも、大きく考えればローマ帝国のおかげだったりするでしょう。
でもやはり、侵略された側からしたらローマ軍なんて、「単なるあからさまな殺戮軍団」なわけです。
攻められた側からの視点のドラマ。
なんでしょう、NHKの大河ドラマで言えば「八重の桜(主演・綾瀬はるか)」みたいな感じでしょうか。
負けた側から見た歴史。
いや、でもやっぱり日本国内のお話ではありえない、いわゆる「多民族なんか絶滅させてもどーってことない」っていうその恐ろしさは、理解できない部分がやっぱりありますよね。
その恐怖感と征服感、両方がよくわからない、っていう。
『バーバリアンズ・ライジング ~ローマ帝国に反逆した戦士たち~』
学者や元軍人など、歴史に詳しい専門家のインタビューを交え、史実をなぞるように進む半ドキュメンタリーみたいな構成になっています。
第1話:カルタゴの将軍 ハンニバル
第2話:ゲリラ集団の指揮官 ウィリアトゥス
第3話:自由の剣闘士 スパルタカス
第4話:ゲルマン民族の英雄 アルミニウス
第5話:復讐の女王 ブーディカ
第6話:ゴート族の指導者 フリティゲルン&アラリック
第7話:ヴァンダル族の王 ガイセリック
第8話:フン族の大王 アッティラ
そう言えばハンニバルvsスキピオ、漫画でも読みました。
ハンニバルは北アフリカのカルタゴの将軍。
エジプトを始め北アフリカは当時、ギリシャ系のがたくさんいたので、「アド・アストラ」のハンニバルも人種的には不自然ではなかったですが、このドラマではハンニバルを黒人俳優が演じています。
「ローマ人の物語」では帝国滅亡の遠因(つまりゲルマン民族が攻めてくる→それは後ろから別の民族に追い立てられてたから)だと読んだ、あの「フン族」が最終話で映像化されていることに驚きました。
なんなんだこいつらのこの野蛮さ。
この不可解さ。視点はもちろん、記録に残している側からのものなので、上では「敗者の視点」と書きましたがやはりどこか、「こいつら…」という、いわば「ローマ側(現在の欧米人)」の主観が混じっているような気もします。
だってタイトルでは少し煽る目的があるのは理解できるんですが、「バーバリアン」て「野蛮人」てことでしょう?
つまり「古代ローマ人視点」ってことですからね。
キリストは生まれていたか?
このシリーズではさらっと、「キリスト教徒として…」みたいな感じで当然のように語られていますが、「第7話:ヴァンダル族の王 ガイセリック」のガイセリックはキリスト教徒の一派(アリウス派)として、ローマ帝国だけでなく、キリスト教の異派を駆逐しながら北アフリカへ回り込んだ。
これがすでに西暦400年代なんですから、このシリーズで言えば「第3話:自由の剣闘士 スパルタカス」と「第4話:ゲルマン民族の英雄 アルミニウス」の間くらいにはイエス・キリストは誕生してて、「第5話:復讐の女王 ブーディカ」くらいにキリスト教として成立してる感じ、ですよね。
ローマ帝国もしだいに東西に分かれて、国教として結局キリスト教になっていくんですし、かなりの一大事だったと思うんですがそこはあまり触れられないまま「反抗の歴史」としてドラマは進みます。
初期は「領土争い」だったものが「民族浄化問題」みたいになり、後半は「ローマ教vsキリスト教」、そして「キリスト教vsキリスト教」みたいになっていって、けっきょく今はローマに「キリスト教の総本山」がある。
「まぁまぁまぁ」という「なぁなぁ」が通用しない世界。
日本みたいに「動かない強大な権威が出て行けば丸く収まる」みたいな感じがいっさいしない、とめどない流血と略奪の歴史。
どうせなら「ラストバーバリアン・スルタン・メフメト2世」として本当の意味でローマにとどめを刺したメフメト2世も取り上げて欲しかったと思うのは私だけでしょうか。