見たもの、思うこと。

『ローマ人の物語』を読み終えて。

投稿日:2017年11月17日 更新日:

2017年、1月に読み始めて、11月になってしまいました。

全15巻。

途中、文庫本になりました。
「ユリウス・カエサル ルビコン以前」〜「悪名高き皇帝たち[四]」までは文庫本で買いました。

本を、本棚に並べてコレクションをするつもりが最初からないので、どんな形態でもいいんです。まだ電子書籍に馴染んでないので、紙の本で読みたい。
単行本、なかなか重いです。
最初からぜんぶ、文庫で買えばよかったんですが…。

思い返せば今年1月、古本屋へ行って、実はずっと前から知ってたこのシリーズの、なんと1〜3巻(「ローマは一日にしてならず」〜「勝者の混迷」まで)が1冊「108円」で売ってたんです。

定価は
1巻「ローマは一日にしてならず」¥2,300
2巻「ハンニバル戦記」¥2,600
3巻「勝者の混迷」¥2,200

なんですよ。
それが1冊108円なら買うでしょう?ということで、あんのじょう止まらなくなった、という感じです。

2巻「ハンニバル戦記」は漫画「アド・アストラ」で表現されたあたり(第一次ポエニ戦役は紀元前246年〜)ですね。

大地を揺るがす天才の激突。『アド・アストラ』。

王政から共和制、元首政(帝政)から東西に分かれ、やがて滅亡していくローマ帝国。

「法律」「法制」というもの自体を作ったのがローマ人であり、インフラの整備と物流・兵站の大切さを確信して勢力を拡大していった様子が、人間の営みという身近なレベルで感得できた、素晴らしい著述だったと思います。

最終巻のあとがきには2006年と書いてあるので、もう10年以上前に完結したシリーズなんですね。

今さらながら塩野七生先生にはお疲れ様でしたそしてありがとうございましたと言いたいです。

このシリーズは、日本の人事院も「若手行政官への推薦図書」に推薦しているようです。
国というもの、行政というもの、統治や民政というものについて、歴史観=世界観を持っておけよ、ということなんでしょうね。

確かに、「なんでそうなったの?」という流れには、時代の要請や必然、今から見れば「未発達だったから!」で済ませてしまいそうな出来事がたくさん起こるわけですが、でも逆に言えば「どの時代でも賢人はいるし、そうでない人は地位に関係なく、そうだよ」としか言いようがない。

 

なぜ滅んだのだ

特に東西に分かれた帝国で、神授された帝位に就いた人たちの暗愚率(そんな言葉あるか?)は、1帝国滅ぼすなんて容易いこと、と思わざるを得ないレベルですよね。

神(この場合はキリスト教の神)によって指名された皇帝は、決定はするけど責任は取らない。

なぜなら責任、となると「神の責任」になっちゃうから。
反対に、臣下の将軍や官僚は、決定はできないけど責任は取らされる。

これでは、皇帝の側近による讒言(ざんげん)がはびこるのも当然です。
東西の歴史上、現れては消える「宦官」という存在も、キリスト教と同じくらい、あの巨大帝国の衰亡の大きな原因と言えるかもしれません。

とにかく全巻を通じて著者が強調されていたのは、道路・水道・橋・建物など、インフラストラクチャーの建設/整備/補修こそがローマをローマたり得るものにしたのだということ。

確かにこれをやった国はこれ以前にはなく、この後も、近代になるまで、ない。

最終的には蛮族(ゴート族・ゲルマン族)の侵入を防ぐことがままならず、なし崩しに崩壊していく防衛線(リメス)だったわけですが、必然とは言え今見渡せば「ヨーロッパです!EU!」みたいにふんぞり返って戦争ばかりしている欧州も、「なんだ、ふつーに蛮族だったんじゃないか」と言わざるを得ない。

ゲルマン民族はそのままドイツ。フランスはフランク族。スペインは西ゴート族。などなど、元はローマ帝国を犯して略奪・殺戮をしながら広がって行って、定着した人たちだったんですね。

そして彼らがローマ帝国の境界線を越えて侵略しなければならなかった大きな原因は、後ろから「フン族」が迫ってきていたらから、なんだそうです。

このシリーズ後半、「蛮族」たちが必要に迫られて、追い立てられた原因は「フン族」。
あまり詳述されていませんが「とんでもない奴ら」なのは伝わってきました。

ヨルダネスという人が書いた、『ゴート人の起源と行為』という記述に中に、フン族についての箇所があるそうです。

まず沼に囲まれた所に住みついた、取るに足らない、汚らしい、貧弱な種族である。人間の一種族のようでもあるが、その話す言葉については、人間の言葉との類似が認められるということしか知られていない。(24章、122節)

もうボロカスです。

でも言葉の通じない、統制のない、未知の民族との接触はどこも、そういうところから始まったんでしょう。

「フン族」=「匈奴」説があるそうですが、今のところよくわかっていないそうです。

そしてキリスト教。
『ローマ人の物語』の著者・塩野七生先生の、キリスト教に対するシニカルな態度(記述)には苦笑してしまうところがたくさんあります。

それくらい、国教化される前のローマ帝国は豊かで、自然を崇拝し、神々と共生していた「精神的な豊かさ」が感じられました。

『テルマエ・ロマエ』で登場したハドリアヌス帝の時代(〜138年)。

テルマエ・ロマエからベン・ハーへの逆行

あんなにお風呂お風呂行ってたローマも、なんだかキリスト教化してからは、「お風呂は病気の治癒などで入るものであって、娯楽にしてはいけない」となってしまい、どんどんなくなっていったそうです。キリスト教って不潔ね。

 

最後に。

全部読んで改めて、一言で感想を言わせてもらえれば。

 

 

自分の一生に関わるシリーズ、でした。
読んでよかった。

 

 

 

 

 







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