海賊版vs山賊版
海賊は、船を襲って金品や人命を奪う。横取りをする。そこからのイメージで、横流しや盗撮されたコンテンツがコピーして売られているものを「海賊版」と呼ぶ。海賊は犯行後、どこかへ行方をくらまして捕えようがない。決して「山賊版」とは呼ばないのは、山賊は「あの山にいる」とわかっている場合が多いからだろうか。今やデジタル処理技術で、いろんな時代のいろんなライブを、1枚のアルバムに仕立てて発売するという海賊版があることを知った。おそらくイタチごっこなのだろう。「自分の好きな曲ばかりを集めて時代を超えたライブ感覚で聴ける」というのも個人でなら許されるだろうが、すでに鬼籍に入ったアーティストの功績がそうイジくられているというのは、気分の良いものではない。
出しゃばりvs引っ込みばり
その場でどこまで出て良いかは、相対的なものだ。役割や立場によって、どこまで出るべきか、どのあたりで引くべきかが決まる。絶対的に「自分だからここまで出るべきだ」と思い込んでいるなら出しゃばりと呼ばれても仕方がない。その場その場の役割を演じて、出たり引いたりができること。時には悪役になってでも、その場を取り繕うことができること。つまり空気が読めるかどうかと直結する。何にでも口を挟むことを「いっちょかみ」と呼んだりする。「一丁噛む」から来ているのか。すでに「あの人は出しゃばりだから」という評が立ってしまっている人が「あの人は奥ゆかしいねえ」という評に変えて行こうとしたら、おそらくその人の一生では間に合わない。取り返しがつくことではないので、空気を読むのは大事だ。
年齢確認vs年齢不詳
酒やタバコは、20未満への販売において禁止の法律がある。未成年であることを知りながら販売すると罰金だ。つまり売る側が「20歳未満だと知らなかった」ことこそが大事で「年齢確認」は「だって本人が違うって言ったんだから」という状態を保持できていればそれで良い。運転免許証の提示を求めて、そこに成人である生年月日が書かれていてもそれがもし偽造だったら店側には罪はない。あくまで未成年の飲酒・喫煙を禁止することを旨とすることから派生した年齢確認なので、ボロボロに耄碌したジジイが成人かどうかを確認するためにあるのではない。「俺が未成年に見えるのか!」と怒る輩がいるらしいが、見えるわけはない。「道理が通らない厄介なバカ」にしか見えない。
モテたいvsモテない
「モテたい」は、いくつかの内容を集約した言葉だと思う。「若くありたい」や「新しい情報に敏感でいたい」や「ヤリたい」などを含む。おそらくそのための努力のほとんどは報われず、痛々しさだけがマシていく。「モテてる」かどうかは自分で判断するだけでなく、他人への評価にすぎない。他人を見て「あの人はモテてる」「だからあの人のようにモテたい」と願っても、自分はその人ではないので、同じようにはならない。「モテてる」と思われている人も、実態は迷惑な異性が周りにいるだけで、人生の充実とは何ら関係ない状態だったりする。つまり厳密には「モテたい」は「周りにモテてると思わせたい」ということであり、それは実現すると鬱陶しさの方が勝つ場合が多い。
ブラックジョークvsホワイトハット
成立するには「共犯関係」を構築する必要がある。「口外無用」を始めとして「ブラックな笑い」は共犯をうながす効果がある。面白いと感じても、笑わなければ共犯にはならない。笑ったら共犯である。人は、その内容に共感していなくてもあまりにひどい言い回しには思わず笑ってしまうものだ。「口が悪い」という言葉もあるように、必ずしも心底思っていなくとも、言い回しの悪さに偽悪的なおかしみを感じる。そこにブラックジョーク成立の間隙が出来る。タブーや犯罪に触れる笑いは、タブーや犯罪そのものを奨励しているわけでもないし礼賛しているわけでもない。タブーや犯罪に触れる行為への勇気にこそ賛同するのだ。閉鎖された空間において、共犯関係が結ばれた時には面白みが倍加する。それだけに、逆に信頼が得られていない状態でのブラックユーモアはほぼ成立しないか、予想外の方向から糾弾が飛んでくる。