第9回「決戦前夜」をご覧いただきありがとうございました。
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※配信期限 : 3/13(日) 午後8:44 まで
※要ログイン#鎌倉殿の13人#大泉洋 #八嶋智人 pic.twitter.com/nIclTC36oW— 2022年 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」 (@nhk_kamakura13) March 6, 2022
大軍となって
鎌倉に入った頼朝。
反乱鎮圧に失敗した伊東、
大庭はなす術もなかった。
都からは
追討軍が迫って来ている。
大庭、伊東にはなすすべも
追討軍が迫って来ている。
決戦前夜の「決戦」とはどの戦いのことなのか
まだシングルの回に「いざ、鎌倉(8)」とか「決戦前夜(9)」とか、でかいタイトルを使ってしまってる気がするのは私だけでしょうか。これはもしかすると放送40回を数える頃、もっと複雑でもっと奥深くもっと耳馴染みのないすごいタイトルが待っている、ということなのかも知れません。
京から平維盛(たいらのこれもり・濱正悟)を総大将とする追討軍が整然と向かってるシーンが出て来ましたが、京都で編成され出発した数万の軍勢…という感じではないそうです。
当時は、京都から「先陣が徴兵しながら目的地に向かう」という形の軍編成が行われていたそうで、そうなると軍の練度というのは当然「そこそこ」に留まるでしょうし、そのモチベーションというのも統一が難しい。
恩賞と権威を振りかざしながらお触れを出しつつ、道中で兵を募ったのでしょう。
富士川に着く頃には7万騎に達していたとのことですが、たぶん嘘です。「騎」って馬に乗った武者のことでしょう。それなら戦闘訓練をしっかり積んだ武者である可能性が高く、7万もいるのなら周りの歩兵・雑兵はその倍以上いるはずで、総員14万〜21万人ということになりませんかね。たとえ「騎」ではなく全体で「7万人」だったとしても、その士気が上がるほどに「平家に味方し、ゲリラたる悪の軍団を討つ!」という気持ちの人らは少なかったでしょう。坂東に近づけば近づくほど、平家の支配にうんざりしてる人もたくさん混じるわけですから。そして行軍するわけですから、そのぶん食料も補給し続けなければならない。農村から無理な略奪をしながら進むと、世間の評判が加速度的にどんどん落ちていきます。
江間次郎(えまのじろう・芹澤興人)は八重(やえ・新垣結衣)を殺せませんでした。
「俺にはできません」。
愛されなかった彼ですが、彼には八重への愛があったのですね。
北条ヨシトキは「爺さま」である伊東祐親(いとうのすけちか・浅野和之)の説得に失敗。
伊東の支配者として平家への恩顧や義理を固く守ったという意味では、正義を貫いたとも言えるんですね。
三浦義村(みうらのよしむら・山本耕史)も身内として彼を守ろうとしましたが、源頼朝(みなもとのよりとも・大泉洋)がそんなことを永続的に、許すわけがない。
ここへ来て、敵認定した相手には極限の冷酷さと残忍さを見せる佐殿(すけどの)の姿を見ることができました。
実衣の軽口(真理)
ドラマ内で、実は毎回、北条の次女である実衣(みい・宮澤エマ)が何やら横から口を挟んだり、ズケズケと物を言うシーンが出て来てます。彼女はのちに阿野全成(あのぜんじょう・新納慎也)の妻となり、三代将軍・実朝の乳母となるわけですが、けっこう「この人のせいで」と感じるような展開が待ってるかも知れない、んですよね。
その片鱗が既にどんどん出てきてる。
「歴史を動かすほどに余計なことをズケズケと言うオバハン」に成長していく彼女に、注目です。
垣間見える小競り合い
軍勢の多寡で言えば平家軍とは、源頼朝軍単独なら勝てる見込みは小さいが(それでも2万5000くらいになってる)、信州の武田軍との合流すれば拮抗できる可能性がある。年齢差こそあれ、武田信義(たけだのぶよし・八嶋智人)との静かな主導権争いのシーンは見ものでしたね。直接的にはぶつからないながらも、源頼朝は謙遜と迎合で上になり下になり、戦に勝つための怜悧な計算をしていたのでしょうね。烏帽子はわずかながら、武田信義の方が高さがあった。
その宴会の中、それぞれの武将たちが気になる雰囲気になってましたね。
北条時政(ほうじょうときまさ・坂東彌十郎)が宴会に参加したことを聞きつけ、和田義盛(わだのよしもり・)が「四郎殿が佐殿と酒を飲んでいるぞ!」と激昂し、土肥実平(どいさねひら・阿南健治)が「なんだとぉお〜!?」と慨嘆し、三浦義澄(みうらのよしずみ・佐藤B作)が「北条だけがいい思いをしても意味がないと言うのに!」と本音を吐露しました(「この世で一番見すぼらしいのはしょげたジジイだ」という名言も)。
これは北条が鎌倉幕府で勝ち残っていく過程で、他の豪族・武士団もそれぞれに利害を抱えているということを表してますよね。北条は政子(まさこ・小池栄子)がいるので1番の味方ということになってますが源氏ではないですし、兵力という意味ではかなり下の方です。
なんらかの行動が「抜けがけ」と捉えられても仕方がない立ち位置にあるとも言えますね。
武田はあの武田信玄に連なっていく一族なのでこの段階で滅びはしないもののだんだんと、源頼朝の治世でその地位は変わっていきます。
今回、同格どころか格上の軍団の長だった武田信義。
まさに抜けがけを予定していたのに、想像をはるかに超えた意外なきっかけで数万羽の羽音が夜空に響き渡りました。これには平維盛よりも視聴者が驚きました。
平家軍はその水鳥の羽音に驚いて夜襲と勘違いして潰走。これも完全に「練度の低さ」「寄せ集めの兵士」「烏合の衆」だったことを表していますよね。この夜の時点で、かなり人数が減ってたそうです。7万騎なんてとんでもない。源氏軍の噂を聞きつけて、相当数が逃げたのだと思われます。寝返りも多数だったでしょう。
逃げ出した彼らを追撃し、都に攻めのぼる勢いでゲンジ最高(源氏再興)へ繋げていくのだーッ、となりそうだったんですけどここでは「坂東の論理」が勝ちました。「天下に号令する」的な構想が誰の頭にもスムースに浮かぶような時代ではないわけです。
坂東武者の支配する地域はすべて、農業が支えています。飢饉もあり、常陸の佐竹氏が所領を脅かしかねないという事情もある。「とりあえず今回はこれでいいだろう」と武士団が西上を渋ったとしてもしょうがないところです。源頼朝は臣下に支えられながら貴種として「源氏」のことだけ考えてればいいですが、在郷領主としての武士たちは、フトコロ事情もそれぞれ違う。
「冷酷で残忍な源頼朝」と先ほどは書きましたが、孤独な貴族として存在する彼の、見えない懊悩が見えたような気がしました。絶対的号令が出せる立場では、まだないんですね。
そして源義経(みなもとのよしつね・菅田将暉)の登場。
源頼朝が「今日は(会うのをやめておこう)」と言ったのに無粋に飛び込んできた彼。
無邪気で一本気でありながらこの「空気の読めなさ」が、彼の悲劇を暗示しているようで怖い。
奥州藤原氏の後ろ盾を持っていると推察される源義経。
後方である東北が安全ならば、西方へ攻めるに安心感が得られる、という確信を持って、源頼朝は涙を流して再会を祝した。決して「最愛の兄弟の邂逅」ではありません。それを、抱擁を見つめる北条ヨシトキの表情に、現れていたような気がします。
とにかくこの決戦で、いろんなことが変わり始めたのですね。
今回の「鎌倉殿の13人紀行」は、ここでした。
横割八幡宮
八幡神社