なんとなく最近、「歴史ブログ」みたいになってきてるような気がする私です。まぁいいじゃないですか。
サムライって…。
「サムライ」にものすごく憧れをもって、いろんなところで使われてしまってることに少しだけ、違和感をおぼえることがあります。
「現代の武士」を自認してる感じのおっさんもたまにいたりして、剣術の達人だったりしてそれはそれで自由で素晴らしいんですけど、どういう部分を持って「サムライ」と言ってるんだろう…と不思議ではあります。
「武士」や「武士道」がそんなに素晴らしいのであるならばなんで武士階級による明治維新は成ったんでしょう、と言いたくなるからです。
当たり前のように「サムライジャパン」なんて言われると、「それはイメージとしての江戸時代の話であって、海外向けにわかりやすくする意図もあるんだろうけど、いつまでも誤解をキープさせてるだけでもあるよね」と、思わなくもない。
「現代の大名」とか「現代の小姓」とか「現代の武蔵守」とか言う人はいないのに、「現代のサムライ」はわりとたくさんいる。
「闘う男たち」という意味でおそらく、「サムライ」は使われてるんでしょう。
「侍」は、「さぶらう(したがうという意味)」という動詞から派生した言葉なんですね。
「さぶらう」は元々は「さもらふ」という言葉だったそうで、これは「偉い人のそばで命令を待つ」みたいな意味だった。
もともとサムライ(戦国時代くらいまでは「サブライ」と呼んでた)は、偉い人の近くにいることができる人に限った言い方、だったんですね。
武士全般に「サムライ」が適用される感じになったのは、江戸時代くらいです。
これは恐ろしく偏見ですけど、「歴史」「武士」っていう言葉を聞いて、スパッと連想するのが「幕末」「坂本龍馬」「新撰組」っていう人、たくさんいる気がするんです。「刀剣乱舞」でその辺り、柔軟になってるのかもしれませんけど。
義時が願いでた「侍」
1209(承元2)年、北条義時は、将軍・源実朝に対して、「年来(ねんらい)の郎従(ろうじゅう)」の中で、特に功ある者を、侍にしてもらっていいでしょうか、という要請を出しました。
「郎従」というのは北条義時(北条家)に従っている人たちで、幕府に仕えている北条義時は、「御家人(ごけにん)」です。
なのでフランチャイズ店が雇っているアルバイト、みたいな感じでしょうか。
彼らに対する責任は北条義時にこそあって、幕府が認定するものではない、っていう感じ。
その人らを、「本社お抱えの、正社員扱いにしてもらえないだろうか」と、社長に訴えたっていうことですね。
結果的に、幕府はそれを却下したんです。
では、「侍」になるのと「郎従」のままであるのとは、何がどう違うのか…。
幕府の法廷で何らかの裁きがある場合、提出された書類が偽造されたりしたら、もしそれが「侍」身分の者であれば所領は没収。所領がなければ遠流(島流し)。
侍でない場合には、「火印を顔に押す」刑罰が待っていたそうです。
ずいぶん違うな…。
火印というのは烙印、焼印のことですよね。
書類偽造で顔に焼印押される…鎌倉時代に、焼印に「文字」はなかったそうですが、人によってはきれいさっぱり火傷が治ってしまうパターンもあったんでしょうかね。入れ墨と同じで、身分の低い者にはそういう身体刑(肉刑)を与え、侍には面目と経済基盤を失わせる罰を与える、という基準だったんですね。
この、侍でない身分は「凡下(ぼんげ)の輩(ともがら)」と呼ばれていました。
「雑色(ぞうしき)、舎人、牛飼、力者、門柱所・政所の下部、侍所の小舎人以下、道々の工商人ら」と規定されていたようです。
京急線に「雑色駅」という名前がありますが、雑役を務めた人たちが暮らしていたのが地名になってた(雑色村。今はない)んじゃないですかね。
幕府が契約しているのはいわば「御家人だけ」なので、その中で北条義時の家中だけが「店長以下、全員、正社員です!!」と言えれば、それは他の御家人よりもランクが上、ということが示せる、という狙いがあったのかも知れません。
幕府はそれを却下します。
なぜか。
北条義時が推挙して、「侍にしてやってくれ」と言ったのはそもそも武士以外の仕事をする人たち。
その人らが「御家人」になって、幕府に対する「御恩と奉公」を発動してしまうと、そもそも武士以外の仕事をしてるのにそれが疎(おろそ)かになるだろう、と。
その前例を認めて「うちも社員に!うちも!うちも!」となってしまったら御家人がどんどん増えて雑務に励む身分の者どもが減ってしまう、という懸念があったのでしょうか。
後々にまで災いが及ぶ…ということで、わりと厳しめに突っぱねられたようです。
どちらにしても北条義時は、もともとは豪族の連合であった幕府の中核を担う御家人たちの中で、どうにか抜きんでようとする策を打ち出したりしてるんですね。
鎌倉幕府の政治体制はまだ、ぜんぜん盤石じゃない。
みんな、なんとか他の御家人たちを出し抜いて勢力と、権力を高めようと狙っている。
それがもう少し後には、ついに大喧嘩の殺し合いに発展するわけですね。