「およげ!たいやきくん」は、言わずとしれた大ヒット曲。
500万枚以上を売ったと言われる、ポンキッキ発信の子供向けソング。
B面は「いっぽんでもにんじん」です。
そういえばこのLP、子供のころ家にあった気がします。
この「およげ!」というのは、当然、たいやきくんに向かって言ってるんですよね。
歌詞をたどると自然にメロディに乗ってしまいますが、「毎日毎日ぼくらは鉄板の上で焼かれて嫌になっちゃうよ」の時点で「泳げ!!」って言うのはさすがに無茶苦茶なので、店のおじさんと喧嘩した後に「海に逃げ込んだ」段階で、「じゃあ、泳げ!」って言いたくなった、と考えるのが妥当でしょう。
それは、「鉄板の上が嫌だったたいやきくん」の気持ちを知っている、われわれの気持ちです。
励ましの気持ちが存分に入っている。
「およげ!」は「逃げろ!」でもあるし、「焼かれるな!」でもある。
そのあたり、「鉄板の上で焼かれる」は社畜として働くサラリーマンの比喩である…という考察にも繋がっていくんですね。
「輝け!!日本歌謡大賞」というテレビ番組がありました。
この場合、「輝け!」は、視聴者の目線…なんですかね。放送業界・音楽業界の目線、だとしたら「この大舞台に立てるということはすごいことだ!もう、こうなったら」「輝け!!」ってことですね。そうなんですかね。
それにしても、なんで命令口調なんでしょう。
「ゆけ!」というパターンもありますね。
パロディとして、サザンオールスターズの「ゆけ!!力道山」を挙げることができます。
おそらく、おそらくですけど、スポーツ選手に「ゆけ」がつくとなると、「巨人の星」のテーマソングに出てくる「ゆけゆけ飛雄馬 どんとゆけ」というフレーズが想起されます。
この場合の「ゆけ!」は「行ってこい」とか「早くしろ」という意味ではなくて、英語のニュアンスとしての「GO!GO!」とか「やったらんかい!」みたいな、勢いをつける接頭辞に近い使い方、ということなんでしょう。
星飛雄馬に対する「ゆけ」だって、具体的に「親(星一徹)目線」のようにも見えるし、神の視座ですべてを知ってる視聴者の、「がんばれ」という意味だったりする。
「およげ!」
「輝け!」
「ゆけ!」
この音感、「け(げ)」で終わっていますね。
これってたぶん、偶然ではない。「け!」という言い切りが、単なる命令ではなく、本人に「がんばれ!」の意味を込めることができ、しかも歯切れがいいという有用性を、同時に持っているということなのでしょう。
この「◯け!」という音感、を利用したのが
「魁!!男塾」というタイトルなのではないでしょうか。
「魁」は「さきがけ」と読みます。
①かしら。おさ。さきがけ。「魁首」「巨魁」
②大きい。すぐれる。「魁偉」「大魁」類傀(カイ)・瑰(カイ)
③北斗七星のひしゃくの頭部をなす四つの星。また、その第一星。「魁星」「斗魁」
この1字だけでは「頑張れ」や「ゆけ」という意味はないし、たまたま「け」で終わっている言葉なんですが、「輝け!」の勢いで「魁!」と言われると、漢字の意味から(特に②)、「大きくなれ!」「すぐれろ!」という願望や励ましのニュアンスが滲み出してきます。
ちなみにその後に刊行されている「男塾外伝 紅!! 女塾」という作品があり、こちらは「くれない!」ということで「け(げ)!」ルールは無視されております。
確認してみると、先ほど出てきた「日本歌謡大賞」は「輝け!!」なんですけど、「レコード大賞」は「輝く!」なんですよ。「輝け!」ではない。
「輝く!レコード大賞」
https://www.tbs.co.jp/recordaward/
こちらはいったん冷静に、客観的にレコード大賞を見ているぞ…というニュアンスが追加されますね。輝くんです、輝くんですけど、そりゃレコード大賞だから輝いてるんだけど、その様子を知りつつ、しっかりと把握するからね…というような。
輝くのは輝くにしても、その前にレコード大賞じたいがそもそも輝いてるってことなのか。
でも、レコード大賞などの、賞を受賞することを「輝く」とも表現しますよね。
「金メダルに輝く」とか。
ということは、「日本歌謡大賞」の「輝け!」には、「頑張れ!」という意味が含まれているということになります。「受賞せよ!」ってことだから。「奪いに来い!」ってことだから。
さらに、「輝く!」という表現には、いくらがんばろうがなんだろうが、輝かせるのはレコード大賞側であるぞ、という意志が感じられるような気もします。「誰であろうが(私たちのこの賞を受賞すれば)とにかく輝くのだ!」みたいな。
すでにレコード大賞の「レコード」はあまり流通していないので「録音大賞」みたいな意味になって来ている気すらしますが、公式サイトを見ると、ちゃんと古今のアーティストを顕彰・ノミネートしている感じがして、好感が持てます(企画賞とか功労賞とか)。年末の番組じたいは、見たことがないけれど。
ほかに、「輝け!」とか「およげ!」みたいに、命令形に見えるけど結局「頑張れ!」ってことを言ってる用例はないものか…としばらく考えてみたんですが、ありました。
他にもたくさんある気がする。