見たもの、思うこと。

京都で観れた、『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』

投稿日:2018年5月26日 更新日:

相原裕美監督の冷静で精緻な視点が、ステージに立つわけではないけどここまでロックスターたちに世界で賞賛され逆に言うと「スポットライトを浴びる人に注目される人」としての鋤田氏の、静かな魅力と凄みを浮き立たせてくれる。

主役はもちろん鋤田正義氏

なんだけどのっけから 布袋さんが出てきて高橋靖子さん山本寛斎さん、ジム・ジャームッシュ監督糸井重里さん箭内道彦さんなどの日本と世界をまたにかける人たちおよび現役、そして鬼籍に入られたロックスターらが「撮られる側」として見せるリスペクトと賛辞を鋤田さんに、惜しみなく贈る様子がどんどん出てくる。

そしてそれを、半ば「へえ〜ほぉ〜そうなんだ」と、他人事のように感心して聴いている鋤田氏。それはまるで、与えられた「新しい視点」に目を輝かすような、少年のような、好奇心に満ちたお姿。

 

鋤田氏の代表作、と言ってよい

デヴィッド・ボウイの『HEROES』のアルバム写真。

HEROES

東京の原宿のスタジオで「1時間ずつで」という条件下で、イギー・ポップとともに撮影されたそうだ。イギーポップの方は「PARTY」のジャケットに使われている。

Party

 

写真は今はもうデジタルの時代。

大御所やこだわりぶったカメラマンはすぐに「フィルムの味が〜」と言い出して新機種とかを小馬鹿にするんだそうだが、鋤田さんはデジタルで処理した方が思った通りの写真になる、と新しいカメラもすぐに取り入れられるそうである。時代の流れに合わせるというか、きちんとアジャストなさっててすごいと思った。鋤田さんくらいに名作もあり名声もあるカメラマンだと、とっくに勇退してても誰も文句言わないし、逆に文句だけ言ってても誰も逆らえない、みたいな立場になれるはずなのだ、とっくに。でもならない。

まだ「こうやって撮るのも逆に面白い!」みたいな挑戦をされてて、それに撮られる側(MIYAVIさんが登場してた)も触発されたりしている。

そして上掲の「HEROES」を根底の概念から捉え直して2013年、「THE NEXT DAY」のジャケットアートで過去と未来を同時に叩きつけた、ジョナサン・バーンブルックとの対話。

The Next Day

 

単なる偶然だけれど

たまたま京都にいたので、京都で「そうだそう言えば」ということで観に行った。


京都と言えば「ボウイが愛した京都」ということで、彼は確か北白河かどこかに別荘を持ってたんだったっけ。イマン夫人との新婚旅行も京都だったとか。ところでイマンとボウイの間に生まれた娘さん、今んとこイマンとボウイの間に生まれた子供だな〜おい!っていう容貌をしてて驚く。

鋤田さんが撮ったボウイの1枚にもあった錦市場、もはやテレビで見たことのあるイスタンブールとかもっと中東のバザールみたいな、外国人による溢れかえり方をしてて逆に日本人は買い物ちょっと時間帯ズラす、的なことになってる感があった。お店の方も外国人観光客相手に、いろんな工夫をしてる様子が見た。店のおっさんがマジックみたいなことやって笑わせてる。そもそも観光客用に、その国のネイティブな店員を雇っている。

だけどやっぱり京都なので、一本路地へ入れば「あの感じ」なのだ。

普通に「上ル」「下ル」が日常語になっている。洛内は当然、そう。
人通りの多い四条通、雑多な人混み、外国人観光客が放つ「これなんのニオイやねん」な臭気が五月の薫風に乗って運ばれてくる。

そんな中、多くの外国語の中からいわゆるカクテルパーティー効果か聴こえて来たのは「あの歯科衛生士さん、あんまり歯並びよう(良く)なかったで」「せやけどええ人やったわ」という母娘の会話だった。横断歩道でなんの話してんねん。歯並びの悪さと人の良さを「せやけど」で連結させるんじゃねえ。

 

…とりあえず映画館へ向かう前にコーヒーなどを飲んで心落ち着かせ、開演前には涼しくなった四条通をサササッと移動して「京都シネマ」へ。

ずいぶんと前だが、私は京都へよく来ている時期があり、毎週のように遊んだり、遊んだり、遊んだりしていた。確かこの2本向こうの通りにあの人が住んでて…とか、確かここに車を停めてあの店に…とか、かなりおぼろげな記憶が障子の向こうにゆらぐ影のように脳内に去来する。おそらく、いいことなんか一つもなかったんだろう、そんなことはないか。

そもそも巨大な観光地である京都洛内、お金さえあればずーっと毎日観光して過ごせるな…という感じが、久しく来たことのない私にも改めて体感できたような気がした。

昼と夜の顔が違うのも京都の特徴の一つかも知れない。昼のあの感じのわりに、夜はけっこう怖いのが京都だ。まず神社仏閣は夜、基本的に怖いでしょう?それは暗いからお化けが出そうで怖いというのもあるけど、ライトアップをすべての神社やお寺がされてるわけじゃないので、昼間には「荘厳な瓦屋根の立派な本堂」だと思ってた場所が夜には「真っ暗な影」として存在感だけを残す。それがまず怖い。

で、「夜の街」という意味でもなかなかに怖い。

もちろん、東京新宿歌舞伎町とかそういう規模ではないし種類も違うが、学生の街でもある京都は、勢いのある若い奴がぶあっと集まる繁華街だと(木屋町とか)、ああ、なんか嫌なことに巻き込まれそう…またパトカー来てるやん…みたいな、不穏な空気を感じることが多々ある。夜に繰り出してくる外国人観光客というのはそれなりに旅慣れもしてるし喧嘩慣れもしてるかも知れないし、団体でウワァっと集まって騒いだりされると「アイキャンスピークジャパニーズ」とか訳のわからんこと言いながらコソコソしたくなってくる。

いえ、京都ネガキャン大作戦を行なっているわけではない。
良いところ、たくさんあるし、良い思い出は一つもないけど。そんなことはないか。

そんな京都で、この映画を観れたことはとても良かった。
もちろん、東京でも、全国各地で上映されているけれど。

登場順、インタビューならびに思い出、として出演されている人たち。

布袋寅泰…ギタリスト
山本寛斎…デザイナー/プロデューサー
高橋靖子…スタイリスト
ジム・ジャームッシュ…脚本家/映画監督
永瀬正敏…俳優
フィル・アレキサンダー…MOJO編集長
糸井重里…コピーライター
リリー・フランキー…イラストレーター/作家/俳優
クリス・トーマス…プロデューサー
ポール・スミス…ファッションデザイナー
細野晴臣…ミュージシャン
坂本龍一…ミュージシャン
高橋幸宏…ミュージシャン
鋤田哲雄…兄
日暮真三…コピーライター
平田比呂志…プロデューサー/デルタモンド
寺山偏陸…寺山修司義弟/アートディレクター/演出家
デヴィッド・ゴドリス…写真家
アーロン・ジチェ…写真展ディレクター
スージー・ロンソン…ミック・ロンソンの妻
MIYAVI…ミュージシャン
箭内道彦…クリエイティブディレクター
羽良多平吉…アートディレクター
ロス・ハルフィン…写真家
マウリッツオ・グイドーニ…キュレーター
マッテオ・メイリ…美術館館長
ジョナサン・バーンブルック…グラフィックデザイナー
アキマ・ツネオ…ミュージシャン
PANTA…ミュージシャン
鋤田弘子…妻
マーク東野…写真家
内山直之…編集者
是枝裕和…映画監督
北島元朗…写真家
立川直樹…プロデューサー
DRUM TAO…和太鼓グループ
宮原夢画…写真家
ガイ・ホワイト…ギャラリーオーナー
野上眞宏…写真家

公式サイト
http://sukita-movie.com/

 

しかし「SUKITA」で画像検索するとやたら出てくるあのカラダに良さそうなジュースは一体なんなんだ!?







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