鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人 第24回『変わらぬ人』

投稿日:2022年6月20日 更新日:

富士の巻狩りで起こった、

頼朝の暗殺未遂。

その余波が

鎌倉を揺るがしている。

野心を見せた者を

頼朝は許さない。

わしはまだまだ死なん

強い陰謀を感じとり、「蒲殿(かばどの)」こと弟の源範頼(みなもとののりより・迫田孝也)が黒幕だと疑う源頼朝(みなもとのよりとも・大泉洋)。

源範頼は、源頼朝に長男・源頼家(みなもとのよりいえ・万寿・金子大地)と源実朝が生まれているので、後継者の順番としては3番目という立場にいることはいる。この時点で源頼朝が死ぬと、確実に「源頼家派・比企一族」と「源実朝派・北条一族」、そして「源範頼派」のバトルが始まってしまいます。

鎌倉殿の権力がインフレ化する中、もうそういう兆候は出始めていたはずで、それだからこそ、源範頼の謀反疑惑はそれなりの説得力を持ってしまったのでしょうね。

いいやつ・源範頼

「蒲殿の奥方は比企の出…」と北条ヨシトキ(小栗旬)は言ってましたが安達盛長(あだちもりなが・野添義弘)の娘じゃなかったでしたっけ。「比企の出」はその安達盛長の奥方。源頼朝暗殺の陰謀を知っていた比企能員(ひきよしかず・佐藤二朗)が引き込んだことから、蜜月関係っていうことでそういう設定にしたのか。

しっかり無罪と申し開きをすれば、誠意をもって接すれば道は開けると信じて起請文を書いてはみたものの、あんなに面と向かって「謀反ではないと申すのだな?」と問われたら「はい」以外の答えはない。やばい。
でも「死んでほしいと思う気持ちが先に立ったのではないか?」と言われたら、もう反論のしようがなくないですか。その時の気持ちなんてこの場で否定しても否定したことにならないというか、証明のしようがないから。

なにせ、何をしたって許されなかった源義経(みなもとのよしつね・菅田将暉)のことが脳裏をよぎってますからね。とにかく平身低頭、謝罪するしかない。まだ、対面して謝れただけマシです。

起請文に「源範頼」と署名したことが気に障った、という言いがかり。
こんなの、もう説き伏せるのは無理です。
屁理屈係・大江広元(おおえのひろもと・栗原英雄)は「御家人に徹すると言いながら署名で源氏を名乗るとはどういうことか」と詰め寄ります。確か源義経も、臣下の役割(馬を引っ張ってくる)をやらされて不服な態度をとったことがありました。

源氏とは言え嫡流ではない(し母の身分が低い)という立場をもっとわきまえよ、と。お前は弟ではなく家来である、と。

北条政子(ほうじょうまさこ・小池栄子)は彼をかばってましたが、「不在の間に私にあんなこと言ってましたよ」とチクったのは政子だったという説も…。

一応、比企尼(ひきのあま・草笛光子)への遠慮もあって、伊豆・修善寺に流すことにしました。
「血を分けた弟」などという感傷はもう源頼朝には通用しないこと、鎌倉のみーんな知ってるんです。

源頼朝の生存戦略は、比企尼がビンタしようとも、もう揺るがない。
「いったん所払いにして、その居留先で殺す」パターン。
善児(ぜんじ・梶原善)フラグ、立つ。

金剛急成長

金剛(こんごう・のちの北条泰時・坂口健太郎)が、お前も飲めと酒を勧められるシーンが出てきましたね。「まだ早い」と北条ヨシトキはたしなめてましたが、金剛は1183年生まれ。源範頼の追放事件は1193年です。10歳。いくらなんでも早すぎるだろ。

その場を誤魔化して立ち去るために言ったのが「暗くなる前にジョーガンセーヨーを読んでおきたいので」というセリフでした。

貞観政要とは

唐の皇帝・太宗の言葉を集めたとされる本。全10巻。
政要というのは「政治における重要なこと」という意味です。
のちに「御成敗式目(貞永式目)」を制定する彼だけに、もう10歳の頃から政治について考え、帝王学を学び、治世というものについての関心と勤勉さを見せていたということですね!さすが金剛!10歳!!

源頼朝の再上洛

武士による新しい世を作ると言ってもなぜか日本ではすべてをひっくり返して皇帝となる、という道は「絶対に選択肢に入らない」んですね。

中国大陸ならば、前王朝はとりあえず九族皆殺しです。
政治の実権は武士が握り、鎌倉を通さずしては皇位も決められないという体制は出来上がりつつあるものの、体面としては皇室を頂点とする朝廷から、役職と官位をいただく形を取り続ける。

めちゃくちゃ不思議で、おそらく日本人にしかすんなりスルーできない歴史のような気がします。
なんで?ねえなんで?と聞かれたら理由を答えようがない。

つまり鎌倉で何が起こっていようと、日本の歴史の動きは同時に京都を見ないことには始まらないということでもあります。

九条兼実(くじょうかねざね・田中直樹)の前に立ちはだかった土御門通親(つちみかどみちちか・関智一)。

朝廷トップクラスの実権争い・権力闘争は熾烈です。
宋の僧・陳和卿(ちんなけい・テイ龍進)が「(源頼朝は)仏にも見放されておる」と不吉なことを言ってましたね。

これはおそらく、ものすごく政治的な発言です。

この土御門通親が、大姫(おおひめ・南沙良)の、後鳥羽天皇(ごとばてんのう・菊井りひと)への入内を進めたとされています。
その過程で、出家していた丹後局(たんごのつぼね・鈴木京香)を味方に引き入れ、九条兼実の失脚に向けて動いていたんですね。

大姫の入内に執念を燃やす源頼朝は、土御門通親・丹後局に接近すると同時に、九条兼実を露骨に冷遇し、その失脚の補助線を引きます(建久七年の政変へ)。

逆に言えば伏魔殿における百年続く権力争いに、新興勢力・鎌倉は巻き込まれたと言ってもいい。

いえ、最大の犠牲者はやはり大姫、か…。

官位は与えても、しょせんは田舎者たち。
獣に近い武骨もの。

都の貴族からすると、この落差は絶対に埋まらないんですね。
それを埋めるために、源頼朝は「怯えておられる」と言われてしまうほどに、貴族化を急いだ。

自分自身は河内源氏の嫡流ですが、支配者としては、後ろ盾となる権力としてまだ弱い。
武力による権力は手にしたので、あとは権威。

やはり日本では、権威の強さとは「天皇との距離感」で決まります。
娘を入内させ、皇子を産ませ、外祖父となる。

いわば、全武士・全鎌倉・全源頼朝の欲望が詰まったこのプレッシャーとストレスに、大姫は押し潰されてしまった。

死んでしまった大姫を前に、政子は「こんな思いはもうしたくない」と言いましたが、源頼朝はその場で次女・三幡(さんまん・太田結乃)の入内計画が立ち上げます。

源頼朝にとっては娘など道具。
その道具の一つを壊された恨みが、まさか源範頼に向けられるとは…。

スケープゴートというか、敵対し、憎むべき相手を次々作らねば思い通りには進めなくなる、暴力を基盤とした政治体制の残虐さ、というところでしょうか。

巻き添えに一緒に殺された農民がさらにかわいそう。

源範頼には、生き延びた伝説もたくさんあるようです。

今回の「変わらぬ人」とは「いい人」「誠実な人」として、不器用に死んでいった源範頼。
そして、今も大姫が想い続ける、源義高(みなもとのよしたか・市川染五郎)。

この二人のことだったのですね。

源頼朝はそんな中、自分の死が迫り来ることを、悟っていただと…??

 

今回の『鎌倉殿の13人紀行』は、ここでした。

源範頼の墓







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