見たもの、思うこと。

ネットのせいで世の中がどうなる、とかって本当にあるのか?

慶応義塾大学経済学部 田中 辰雄
富士通総研経済研究所 浜屋 敏

両名による研究レポート。
2017年の10月、と書いてありますが、
公開されているようなので、紹介しても良いんでしょう。

誰でも読めます。

結びつくことの予期せざる罠
-ネットは世論を分断するのか?-
https://www.fujitsu.com/jp/Images/no448.pdf

「ネットを利用すること」で、意見は分断されるのか?
「ネットあるから」、政治的に意見は過激化し、政治は分断されるのか??

「ネットの広がりによって」という文脈で説明されると、思わず「ああ、時代的に、そうよね。そういう時代になったわよね」と安易に首肯してしまいそうになる話題ですが、本当にそれは「ネットのせい」なのか。新聞しかなかった時代、+ラジオだけ、+テレビの時代には、政治的意見は、分断されたりしていなかったのか。

過激な保守派のこと(?)を「ネトウヨ(ネット右翼)」と呼び、非現実的で反国家的な意見を叫ぶ勢力を「パヨク(パーな左翼?)」と呼ぶ。

確かにSNS上の自分の周りにどちらかの意見を多く集めることは、ずいぶん簡単です。

ツイッターで言えば、フォローをし、タイムラインをどちらかで埋めればいい。
自分の感情は同意見の人たちの強い言葉で補強され、相手をなじる扇情的なワードが、脳の引き出しに丹念にしまわれていく。

 

エコーチェンバー現象。

これを「共鳴機」になぞらえて、『echo chamber現象』と呼ぶんだそうです。
エコーチェンバーとは、エコーが起こるように設計・構築された「残響室」のことで、チェンバーは日本語では「チャンバー」とも発音されているようです。チャンバーって、懐かしい響きなんですけど原チャリ(原動付自転車)のマフラー部分のどこかのことを言ってたなぁ、という記憶が残ってます。検索してみると、チャンバーはマフラーの、サイレンサーの手前にある、排気の効率を上げるための空間、なんだそうです。「膨張室」なんですね。
正確に同じかどうかはわかりませんが、かたや「残響」、かたや「膨張」、どちらにしても「広がって増幅する」みたいな意味においては、同じですね。

政治的な意見に「右寄り」と「左寄り」という二極があるとして、個人的には両極ないと(あるいは両翼がないと」進めない(ちゃんと飛べない)だろう、とも思うのですが戦後、言論空間やメディアは圧倒的に「左寄り」だったことは事実なわけで、安倍政権下において「どんどん右傾化している」という懸念が示されるのも、「いやぁ、それはそもそもものすごく左側に寄ってたんだから、今の状態が“右へまっしぐら”に見えるのは当たり前だ」という意見があります。まず真ん中へ戻ろうとする行為、論旨が「右傾化」に見える。

厳密には左端から右方向へ向かってるのだから「右傾化」は間違っていないわけですが、右傾化=軍国主義化=国民が犠牲になる全面戦争本土決戦!、みたいな短絡が、未だ普通に言われてしまう中では、かなり早い段階で「意見の分断化」は起こってるんじゃないか、という感想は、出てきて当然でしょう。

…と思ったんですけど、この調査では、【世の中の言論は、中庸がなくなり、右寄りか左寄りか、極端になってきている】という設問に対して、「どちらでもない」が46%。そうなの
「はい」は28%。「いいえ」が8%。

うーん、ノーよりイエスが多いからそれは、全体的な傾向としては「やっぱり極端に」という趨勢になってきてる…と言えなくもないのか。

【ネットはどちらかといえば政治を良くしていると思う】という設問に対しても、「どちらでもない」が49%と、全体の約半数を占めています。

こういう質問(ネット、という広範囲な問題設定)の場合、「どちらでもない」を選ぶのは「どちらとも言えるという意味でもある」よなぁ、とは思いますよね。

「極端になってきてると思う?」に「はい」と答えることは、極端になってほしいと願っているようにも思われてしまうし、「ネットで政治が良くなるか?」の設問に「Yes」を投じることは、すなわち「ネット投票に賛成です」と言っていると思われるんじゃないか、みたいな懸念がある。だから「どちらでもない」を選んでおく、みたいな。

 

もちろん、「個人による」んだけども…

年齢別・性別、学歴別・所得別などにおける、計算式に則った評価が出てくるんですが、面白い部分があります。

注目すべきは年齢別の比較で、中高年の方が分極化度合いが高い。これは経験的に見て自明ではない。通常、若い方が未熟なために極端な意見を持ちやすく、年を取るにつれて妥協的になって(“まるくなって”)意見が中庸になる、という予想も十分に可能だからである。実際にはそうなっておらず、年を取るほど左右どちら方向にも政治的意見が過激化している。そして、その度合いも大きい。

というところ。
左翼的・右翼的言辞においては、「まるくなる」という表現は決して当てはまらず、いや、丸みを帯びるのはもっと違う日常的な感覚のみにおいてであって、実は政治的・思想的なことでは「丸くなった石は最下流まで流され、川底に沈殿し、もう、そこから動くことはない」と例えることができるかも。

つまり自分の意見が新しく刷新される機会はもう設けず、より固定した陣営の意見を集めてより先鋭化させていくのみとなる…とも言えるのではないでしょうか。それこそ老害化、とも言われてしまう現象かもしれない。

かつて、理想に燃える若い層がリベラル的であり、すでに世の中の仕組みに適合した高齢者は保守的と言われたが、そのような言説は 今の日本にはあてはまらない。

ようですね。

 

メディア(アプリ・ツール)によるのか??

先ほども書いたように、「ネット」って何を指すの?となると、「意見を見る」「意見を書く」という使い方から考えると、やっぱりSNS中心で考えることになりますよね。そんな中、LINEは意見の分極化にはあまり寄与していない。そりゃそうですよね。新し意見をどんどん見聞する、という使い方を、主にLINEでしてる人って少ないでしょう。LINEニュースとかもアプリには付帯してるけど、やっぱり個人的な、クローズド空間での使用が多い。

元々政治的に関心が低い人は、テレビのワイドショーを見てLINEをすれば満足し、 ことさらSNSで発信しようとは思わないだろう。

というのはそういうことですね。
テレビも、視聴者が自分で意見を選別できないから、熱心にテレビを見ている人は「穏健」という感じになる。この場合の「穏健」、が、そこまで肯定的な意味だとも思えないけれどw

だって、このレポートでは「政治的な分極化」に焦点が当ててあるから「穏健」という言葉で書いてあるけれど、テレビだけ見ている層にとっては、ワイドショーでやっている「反対すべきもの」「糾弾すべき人」「劣情をもよおすべき他人のプライバシー」に対して、他の意見は取り入れる機会を持つことができずに延々と同じレベルに留まることを強いられている状態でしょう?

その結果が延々とつづく「◯◯ダイエットは効果あり!」という番組に一喜一憂する姿、ではないですか。

それはさておき、「新聞でも同じような政治的分極化は起こりやすい」と書いてありました。テレビは受動的であるがゆえに偏りが生じにくいが、新聞は能動的なメディアであるがゆえ、と。

能動的にニュースを読む人は社会問題への関心の高い人であり、強い政治的意見を持つ場合が多いと考えられる。 それゆえ新聞読者では分極化が進んでいると説明できる。

ということなんですが、いやいや、すでにその「読んでいる新聞」が、かなりバイアスのかかった内容しか書いてないからじゃないの…とも、付け加えておきたいところ(後段に調査がありましたよ)。

 

あの有名人は、敵か味方か!?

ネット上でも有名な、論客の政治傾向とそのフォロー傾向、が掲載されていました。

現役政治家を含めて、保守論客?リベラル?そういうレッテル貼りはご当人にとって「甚だ以て迷惑千万」だとは思いますが…。

岩上安身
江川紹子
上杉隆
津田大介
東浩紀
池田信夫
高須克弥
百田尚樹
西村幸祐
きっこ
宮台真司
茂木健一郎
古市憲寿
田原総一朗
やまもといちろうう
石平太郎
福島みずほ
山本太郎
有田芳生
蓮舫
原口一博
小泉進次郎
橋下徹
岸田文雄
山本一太
安倍晋三

確かに日々、何らかの論争やクソリプの嵐に巻き込まれている(起こしている?)方々なので、普通に眺めているだけで相当に疲れます。フォローしてタイムラインに罵詈雑言が並ぶことも多々ある。この方々は攻撃したい目的でもない限り、フォローはせずに「リスト」で時々眺めるくらいが正しい精神衛生管理というものでしょう。もちろん、示唆に富む言葉や有益な情報を発信されていること、多々あります。

接触する論客のうち少なくとも4割程度は政治的に自分と反対側の立場の人である。この数値は思いのほか高いのではないだろうか。一般論として言えば人は自分と似た意見に耳を傾けがちであり、クロス接触比率が5割ということはありえず、それよりは多少は減ってしかるべきである。その比率が4割程度にとどまるということは、自分と反対側の意見が耳に入っていることになる。それだけ反対意見に耳を傾けているのなら、選択的接触で自分と似た意見ばかりに接し、エコーチェンバー現象が起こるとは思えない。選択的接触でエコーチェンバー現象が起こるというのはごく限られた人であり、大半の人はむしろ自分と異なる意見に接し、バランスをとっているように見える。

調査の結果、自分と反対の意見を持つ論客も、4割程度はフォローしている人が多い、と。
反対意見を耳には入れておかなければ…という危機意識が働くのもあるし、町内の近所のババアジジイなら徹底的に排除したいかもだけど、たかがSNS上なんだし、見えるくらいは反論材料集めとして勉強になるぜ…みたいなことなんでしょう。
それは「バランスを取っている」と言うのだろうかw

この10万人規模の調査によると、

・ネットだから政治的意見が強まるのではない
・政治的意見がもともと強いし言いたい欲が強いからネットも強力に使うやつがいる、というだけ

という結論なようです。

これって、そんな規模の調査わざわざしなくてもわかるようなことだろ…という気も、しないではないですよね。

政治的意見が…の部分を、「バカ」に置き換えると分りやすかったりしませんかw

新聞を5紙以上、毎日精読している人ってどれくらいいるんでしょう。
テレビ全局を、くまなく観ている人って、この世にいるんでしょうか。
そもそも、ごく簡単に反対意見に触れられるネットは、大きく見れば、分極化を逆に、抑えているのではないか。

ネットは「インフラ」「道路」なので、やっぱり「どう使うか」が問題であって、「ネットだからじゃないか?」という問いは、人間の営みすべてと同じ理由しか導き出せない気がします。

 

それにしても途中(p.11)にも書いてありましたが、こういう調査のこういうアンケートに「ちゃんと答える」というその時点で、ある程度のバイアス・傾きがそこにはかかっている、というのは忘れないで、いつも考えておかないといけませんよね。

 

いや、でもまず最初に、そもそも「リベラル」「保守」「ネット」の定義が曖昧なままだと、これっていつまでも分りにく話、なんですよねえ…。

富士通総研ではその他、いろんなレポートを、公開されています。

研究員による研究成果のアーカイブ(書庫)です。
「研究レポート」は随時発行しています。
http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/research/

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